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NTTを殺したのは誰だ! 能なし「IT立国」の無惨な敗戦 みんなのレビュー
- 藤井 耕一郎 (著)
- 税込価格:1,047円(9pt)
- 出版社:光文社
- 発行年月:2003.12
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紙の本
日本の技術を破壊したのは誰だ!
2004/11/12 14:24
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投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわば「拒否できない日本」のハイテク版とでも言えようか。
「インターネットのコストが日本は高すぎる」というアメリカの圧力や、低価格戦略を売り物に果敢に?責めまくるYahoo BB等によりユーザーのインターネットコストは低下した。総務庁にいどむ新電電・ソフトバンク! 進め! 素晴らしいことだ、と本書を読むまで単純に喜んでいた。著者はこうした内紛をアフガンのタリバン、北部同盟の闘いの操作に例える。日本の力さえ衰えれば、光ファイバー設置が遅れれば良い。NTTリストラは日本企業リストラのモデルだ。IT立国、e-Japanなど、アメリカの筋書き通りにポチ政府が描く茶番劇にすぎない。読み始めると恐ろしいが止まらない。
太平洋戦争敗北以来の属国で、悪の帝国ソ連崩壊という戦略に追随してきたのがこの国だ。ところが、そのご主人がソ連を崩壊させると同時に、巧みにしかけた経済戦争に日本は完敗した。第二の敗戦だ。帝国の基本戦略、第二位の経済的、技術的勢力は潰しておけということだ。内弁慶の金融機関や大蔵省が駄目でドル収奪されてもしかたない。日本にはハイテク技術が残っている。額に汗して頑張ればいつかまた豊かになれると思っていた。それも夢だ。本書によればアメリカは日本経済の核であるハイテクの中心を瓦解させた。日本の技術力、世界30位程度という。不況から脱出できない理由の一つに技術力優位性の消滅がある。
有力メーカー数社を従え仲間同志の互助というのでは、NTTに存在意義はない。今思えば、NTT「暴利を貪るだけ」の官僚的組織ではなかったようだ。かつてアメリカにNTTの原型とも言うべきAT&Tという企業があった。関連組織に数々の画期的な技術を生み出したベル研究所があった。強大すぎるとAT&Tは分割され、Bell研究所はルーセントへと変わったが、今や見る影もない。余裕ある機関であるがゆえに画期的新技術研究も可能だった。規制緩和後、通信を担うはずの大企業Worldcomはどうなったろう? 破壊、規制緩和の結果どうなるかは、自国、中南米、アジアで実験済みだ。
教育用パソコンにTRON規格が採用されかけた時のアメリカの圧力は大変だったという坂村教授談話を読んだことがある。それもNTT壊滅作戦と軌を一にするものだろう。世の中はIP電話へと動いている。かつてNTTがインフラ投資をすると関連企業は局用交換機等を受注して潤った。IP電話ではインフラはパソコンと同じ、皆アメリカ製ハード、ソフトだ。交換システムの相互接続規格は国際機関ITUによる公的なde jureスタンダードで、規格さえ守ればどの国の企業でもハード、ソフトが製造できた。IP電話はほとんど全ての規格がインターネットに基づく。de jureスタンダードばかりではなく、シスコや、マイクロソフトによるアメリカのde factoスタンダードが牛耳る世界。日本メーカは、アメリカ製ハード、ソフトの単なる横流し企業に転落するしかない。パソコンと同じことが通信機器に起きる。
産業の米ともいうべき日本経済の土台が崩壊している以上、経済再生は不可能。長く不況が続く。それなりの経済を誇っていたアルゼンチンも、アメリカ戦略によって貧国に転落した。アメリカのAT&T同様ハイテク中枢を破壊され、経済原動力を失ったこの国、第二位の経済大国から第30位?だかの経済小貧国としてしか存在できまい。産業なくして仕事なし。ムーアの華氏911の場面が思い出される。失業率が高い地域の青年が望める就職口は軍隊という光景だ。産業が破壊した今、総仕上げとして戦争状態が通常である国家に変えられようとしている。ハイテク機器ならぬ武器と兵士の供給国に。思うにプロジェクトXは20世紀日本産業の挽歌だろう。本書の分析、誤解であると願いたい気分だ。
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