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年代がかなり行き来するので、新書と考えると読み辛いが、物語または伝記と考えると良い演出になっている。
フランス革命について全く新しい視点を与えられた。
カエルの子はカエルな旧体制的な身分制度に疑問を感じながらも、国王への敬意と敬虔な信仰をもったサンソンの苦悩が伺える。疑問を感じながらも任務を遂行するサンソンのプロフェッショナルさに驚くと共に、逆らうことのできない革命時の社会の大きな動きに巻き込まれていく状況は悲しいものだと感じた。
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ルイ16世の首をハネたある処刑人の話。当時の死刑執行人は「すぐそれとわかるように家全体が真っ赤に塗られていた」とか「娘がいる場合は、普通の男が間違って恋をしないように門前にその旨掲げなければならない」とか、差別されまくりの非人扱いだったらしい。それがフランス革命で一時は英雄扱いになったりとか、敬愛していた王様や昔の恋人の首を自らハネなければならなかったりとか、ドラマがあってすごいおもしろかった。「ギロチンが人道的な目的のためにつくられた道具だった」とか、処刑史に関する情報も盛り込まれていて非常に興味深いです。
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これは面白い!常に時代の暗部におり、血塗られた一族とも言われる、死刑執行人一族の4代目当主、シャルル=アンリ・サンソンの数奇な生涯を描いた本。事実は小説よりも奇なりとはまさにこのこと。
人一倍敬愛していた国王ルイ16世を、苦悶しながらも自らの手で処刑する場面などはとても悲劇的である。その後、恐怖政治の時代を生きたサンソンは、この時期だけで二千七百数十人の首を落としている。
誰よりも人の処刑を間近に見、実際に行ってきたサンソンは、誰よりも強い死刑廃止論者であった。その思想は息子にも受け継がれるが、フランスで実際に廃止されるのは、その死から百七十五年後である。
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単純に勉強になった
帯のジャイロに釣られて勢いで買ったものの知的好奇心をくすぐられた
死刑執行人という職業、フランス革命前後の人々。知らないことだらけでした…無知を思い知らされた
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ムッシュー・ド・パリ、サンソン家4代目シャルル−アンリ・サンソンの生涯。筆者が文学者のせいか、はたまた彼自身の人生があまりにも劇的なせいか、ぐいぐい引き込まれて一気読み。本人のエピソードもさることながら、初代のロマンチックとも言える処刑人就任のいきさつやロベスピエールと死刑廃止論、ギロチンの採用とルイ16世など、周囲のそれもまるで物語のよう。さらに最後の部分には、まるで著者にサンソンの心がやどったかのような問題提起。深く考えさせられる。
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欧米の死刑制度廃止に至る思想の変化が、サンソンの波乱万丈の人生譚と共に読み取れる。
サンソンは平民と政治家の中間のような位置なので、フランス革命の箇所も両方の視点が含まれていて面白い。
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2018/12/20再読。坂本慎一「イノサン」を読んだので読み直し。サンソン家の物語を通して、革命時のフランス史が理解できた。
2013/03/05読了。博物館でギロチンの模型を見た直後にこの本に出会うとは、なんたる奇遇。
敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬しながらもルイ16世の首を刎ねることになった、死刑執行人シャルルーアンリ・サンソンの物語。
「死刑制度は間違っている!」と心で訴えながらも、人道的な配慮を尽くし、差別と戦いながら、誇りを持って、粛々と処刑を行うサンソンの生き様に打たれた。
帯の荒木飛呂彦氏のイラストにつられて手に取りましたが、すごくおもしろかった。「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくる人物のモデルだそうですよ。こちらはまだ未読。気になる。
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「ムッシュー・ド・パリ」
それはパリの死刑執行人の別名。
本書は、その4代目当主、シャルル-アンリ・サンソンの半生を紹介したもの。
本来、死刑執行人は注目される事はないのだが、ある出来事が彼の名を後世に残すことになる。
それは「フランス革命」
フランス革命で処刑された人のほとんどすべてに関わったのだ。
シャルル-アンリ・サンソンが職務を実行した記録は、そのままフランス革命の歴史。
本来ならば記録にも残らないはずの死刑執行人の目から見たフランス革命の裏面史、と言える。
シャルル-アンリ・サンソンは信心深く、自らを厳しく律する人物だったと言われている。
当時、死刑執行は一般公開(というよりお祭り騒ぎ)されていたため、死刑執行の場で問題が起きた時、自分が真っ先に批判を浴びてしまう。
場合によっては興奮した群集に囲まれるなど、身の危険さえある。
が、そんな事情以上に、彼自身、パリ市民から理不尽な差別を受けていたからだろう。
彼ほど、自分の行動が、自らの意に反することになってしまった人物も珍しいかもしれない。
死刑執行人でありながら、死刑廃止論者。
これは、皮膚感覚として染み込んだ死刑制度に対する矛盾の発露だろう。
また、国王から死刑執行を任された身でありながら、その国王の処刑で手をくださなければならなかったことには、特に葛藤があったようだ。
さらに残虐な刑罰に対して反対であったが、ギロチンの発明に携わったこと。
ギロチンの方が死刑囚に苦しみを与えることなく、処刑できる、という事でギロチンが導入されるが、逆にそのギロチンで、一族の中で最も多くの人間を処刑しなければならなくなってしまった。
本書の最後は「死刑制度廃止」の(著者の)主張になっている。
それについて、賛成・反対は、軽々しく言えないが、死刑制度がある限り、手を下さなければならない人も必ず存在する、という事も忘れてはならないだろう。
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週刊ヤングジャンプに連載されている漫画の原作。
革命時代のフランスは結構 おどろおどろしい世界だったようです。
マンガのサンソンが どうしても栗原類に見えるのは私だけ?
けど 本を読む時、主人公をイメージできて、とても読み易いです。
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読了@図書館。
読んでから知ったのですが、マンガの原作(と言っていいのかな?)だったようです。
書かれている死刑執行人サンソンに対する偏見はすごかったようですが。マンガではどう表現されるのかが興味あります。
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フランス革命期の裏歴史。敬虔なカトリックでありながら、死刑執行人の家に生まれた『ムッシュー・ド・パリ』シャルルーアンリ・サンソンの物語。
身分差別が激しい時代に死刑執行人の家に生まれ、最低限の身分の身ながら死刑執行という自分にまかされた任をまじめにこなす…敬虔なカトリックであり絶対王政の世の中で王であるルイ16世を崇拝し、そのルイ16世を処刑した男。
昔は、八つ裂き、車裂きの時代で、1日に処刑できる人間はせいぜい数人…でも“処刑にも平等を”という平和主義の革命が起きてギロチンが誕生し、結果的にサンソンは40日間で1300人以上の首をはねることになる。
ルイ16世なんか確かに時勢は読み違えたけど、世間で言われるよりアホな王ではなく、それまでの王政を強権に奮う王よりもよっぽど平等主義者で革新的で平和主義だったみたい。(だからこそ革命も容認されて、フランス革命も起きる)
時代が違えば主義も正義も法律も変わる、っていうのがよくわかる話。
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ジャイロ・ツェペリのモデル、ということで一度読んでみようと手に取ったのがきっかけでしたが、とても面白かったです。
世界史の知識にいまいち自信がない私でも、語り口が柔かく、読みやすい文体だったので、すらっと読むことが出来ました。
そもそも、フィクションの世界において『死刑執行人』というのは往々にして端役に過ぎない存在であり、(大抵、処刑される人間にスポットが当たっている)彼らがどういう人間なのか、ということなんて考えたことがありませんでした。
『死刑執行人』という、なじみのない人々の『事情』をざっくり知ることが出来る、というのは大変興味深かったです。
サンソンがとても『いい人』で、それ故にところどころ読んでいてつらかったです……
ただ、例えば自分がその時代の人間だとして『死刑執行人』に偏見なく接することが出来たのかと言えば、恐らくはNOだろうな、ということを思うと複雑な気持ちになります。
『死刑執行人』としてのジャイロ・ツェペリに少し触れることが出来たような、そんな気持ちにもさせてくれる一冊。
彼のことが好きなら読んで損は無いと思います。
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本書を手に取ったのは、週刊ヤングジャンプに連載中の「イノサン」をふと立ち読みしたことがきっかけ。
17世紀末のフランス。パリの死刑執行人(ムッシュ・ド・パリ)、サンソン家の四代目当主であるシャルル-アンリ・サンソンの姿を通じて描く、革命前後のフランスの側面史。
処刑人の家系、社会から受ける蔑みと畏怖、そして革命の嵐……過酷な宿命を受け入れつつも常に"人間として"誠実であろうとし、自らの死を覚悟の上で亡き国王を弔うミサに参列し、死刑制度の廃止そのものを願ったシャルル-アンリ・サンソンの姿は―描写がやや情緒的に流れがちではあるものの―胸を衝くものがある。
詳細はこちらに。
http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12
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不謹慎を承知で言わせてもらえれば、物語のようだと思いました。
フランス革命といえば、実際には前向きに?歴史的事件として理解している人が多いと思うのですが、実際にはその前から、革命に至るまでサンソンのような、絶対に必要とされながら、人々から理解されない理不尽な状況にある人々が多くいたんだろうと思うと切なくなりました。
彼は、父や祖先たちの行いに誇り?を持ちながらも、葛藤し、悩み、苦悩しています。王政を廃止するために最初は平和的に動いたはずの人々の心の変わりように対しての彼の怒りの叫び、尊敬していたはずの王を自分の手をくださなくてはいけないことへの悲しみがとつとつと、わかりやすく書かれています。。
何というか、ひたすら哀しくなりますが、これも「革命」の現実として教科書に載せるべきではないでしょうか。。。
もちろん革命があったおかげで今があることは事実なのだけれども、一人一人を扱っていたのではとても時間がないのかもしれないけれど、こういう人達がいたことをもっと知るべきかなと思います。
悪とか善とかはものすごく曖昧なものであることを知るきっかになります。。その上で、自分はどう生きていきたいと考えるのか? そのヒントにもなるかも。
名著だと思います。
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18世紀、フランスで代々死刑執行人を務めたサンソン家。その四代目シャルル・アンリ・サンソンの半生を通して、忌み嫌われる存在であった死刑執行人について、また、フランス革命前後の当時の様子、価値観の転換などが描かれる。
「『国王の子は国王に、処刑人の子は処刑人になる』__王家においても、処刑人の家でも、世襲制が厳格に守られてきた。違いは、国王は社会の頂点に位置し、処刑人は社会の最底辺に位置するということだった。この上下関係は覆ることは絶対にあり得ない・・・はずだった。その国王が処刑人に、ついに、一介の死刑囚として身柄をゆだねることになってしまった。」
本書から引用したこの一文が本書をよく表していると思う。
当時は斬首刑の他にも多くの残酷な死刑が存在し、しかも公開処刑であった。当時においては日本を含めどの国も同じような状況だったらしい。現代人にとっては信じられないように感じるだろうが、価値観の変化とは恐ろしいものだと思う。
例えば、今までギロチンと言えば残酷な死刑道具の象徴のように捉えていたが、むしろ残酷な刑罰に代わる人道の処刑道具として開発されたというのには驚きだった。それが遙かにマシだと思えるほど残酷な刑罰があったということだ。
現代では、死刑制度は世界的には廃止される傾向にある中、日本は死刑制度を容認する国である。私もそうだが死刑制度容認の意見が多いからだ。
しかし、死刑制度がある国には、必ずそれを実行する者がいることを忘れてはならない。誰だってそれを実行する者にはなりたくないだろう。それに、死刑には様々な問題を孕んでいることも事実だ。裁判員制度と死刑についても問題が提起され始めていることもある。本書を読みながら、改めてそんなことも考えてしまった。
入り口としては、マンガSBRのジャイロ・ツェペリのモデルとなった、サンソンについて書かれた本を読んでみたいと思っただけだったのだが。
想像以上に深いことを考えさせられた一冊。