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代々続く死刑執行人の中でも、特にルイ16世の首をはねたアンリ・サンソンを中心に書かれている。最初はなぜ死刑執行人になったかから始まり、周りの人間から受ける差別的な対応なども踏まえている。そして、常に他社の命を奪う仕事をしているからこそ、無慈悲に踏みにじられれ、奪われる命を見て怒りを感じる場面などは、執行人だからこその感情かなと。ギロチンの生まれる過程から、失敗が無く、平等である分、簡易に直ぐ済ませれる結果、1日で何百の頭を切り落としてしまう皮肉に加え、革命による空気で軽々しく人々を殺す一般大衆を見ると、その中で常に冷静な目で見続けるアンリの視線がより際立つと思う。
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ギロチンの発明が人道的な論理からきていたとは驚き。が、ギロチンのおかげで一日に何人も処刑できちゃうようになっただなんて悲しすぎる。
斬首刑からギロチンへのシフトは、アナログからデジタル化になってかえってどうでもよい仕事が増えて何やってんだか分かんなくなってきたのとよく似ている。
残虐な処刑の様子もさることながら、真に怖いのは革命を望む民衆の集団心理。なんと自分勝手で恐ろしいことよ。
激動のフランスに生きる代々世襲の死刑執行人シャルル‐アンリ・サンソン。彼の脳裏で渦巻くのは、差別の劣等感、王家への忠誠、仕事の誇り。人間味あふれるプロフェッショナルの物語である。
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私の大好きなジャイロ・ツェペリ(荒木飛呂彦著「スティール・ボール・ラン」の主人公の一人)のモデルだったということで購入しました。モデルとなっただけあってジャイロとの共通点が散見されます。テーマとしては「死刑制度は正しいものなのか?」というものなのですが、一般的に暗愚の王とされがちなルイ16世の印象がいい意味で変わりました。これを読むと死刑制度について考えさせられます。
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おもしろかった。ベルばらとは また 違った側面から フランス革命を見ている。ノンフェクションなのだが、小説のような雰囲気。
死刑執行人としての苦悩が、痛いほど伝わってくる。
死刑廃止を訴え続けたのがよくわかる。
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ムシュード・パリ。死刑執行人の筆頭である。パリの執行人はそうばれた。サンソン家は代々、パリの死刑執行人として世襲されてきた。これは貴族と同じである。初代よりサンソン家には日誌が残されていたようだ。処刑後の死体の解剖を行ったり、人間の急所を心得ており、医術として役立てられ、代々受け継がれた。また、高等教育が世継には行われた。法律の知識、精神的な教育は必要であった。
公開処刑では、見世物としての一面も持っていた。極刑の八つ裂きの刑、車引きの刑など、見物人も多かった。剣による斬首は難しいことがしめされている。人道的な方法として、ギロチンが誕生する。ルイ16世は名君であったと語られる。フランス革命が起こり、王政は倒れる。国王は裁判で有罪となり、ギロチンにより、処刑される。3代目のシャルル・アンリ・サンソンが執行人である。心身ともに衰弱したサンソンは、贖罪のミサを行ってもらう。サンソンの回想録(6代目の著作)。
人間を処刑する、精神力の強さは、すごいと感じる。アンリ・サンソンにその源となる、使命感、職務を与えたのは、国王ルイ16世である。革命により前国王を処刑したことで、人間の尊厳をなくしてしまったのではないか?国王は罪を犯していないのだから。また、ギロチンにより、多くの人が死んでいくことになる。狂気か?
ギロチンと切腹が比較されている。切腹は武士に行うため、罪人の精神面、介錯人の技術、首が前に出る姿勢など、容易に出来るようになっている。現在のフランスでは死刑は廃止されている。
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漫画「イノサン」を読んでいるので、サンソンの話をもっと知りたくて読んでみた。死刑執行人として、人を殺めるプロフェッショナルとして恐れられ、革命の際には国王をはじめとして反逆者に直接手を下す一種の英雄のような扱いをされつつも、実際には法の正義のもと己の仕事を確実に遂行せざるをえなかった人物の苦悩の人生をまとめたもの。人を殺める専門家であるが故に人体構造に精通し医療を副業にしていた事、ギロチンは人道的な処刑装置として考案された事等、意外な事実が多く非常に勉強になった。
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面白かったぁ。一気に2時間くらいで読了。
元はと言えば「イノサン」の元ネタ読んでおこうっと、くらいの思いで手を着けたんだけど、筆者の語り口の面白さ、死刑執行人の置かれてるあまりに特殊な社会的境遇に引き込まれる。
大体において愚鈍に描かれるルイ16世についてはその明晰さに目からウロコ。まさかギロチンの発明に一役買っているとは。そして断頭台の露に自分が消えようとは。フランス革命は様々なものを産み出し、近代の礎となり、その評価は様々だけれど、少なくともその渦中に居た人たちには大変な時代だったろうなぁ、と。後の時代の人は何とでも言えるけど、自分が生きてたとしたら、後世の人からみて賢明な人物になれたとは、到底思えないなあ。。。でも自分が正しいと思える道を生きたいよね、って思えた一冊。
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「はじめに恋があった」
こんなロマンチックな書き出しで始まる物語が、すべて史実の死刑執行人の家系の話だという。
この数奇な人生はどの小説よりも魅力的に感じた。
そして私はサンソンやフリードリヒⅡ世みたいに、自分の本質と職務の間で苦悩しながらも国のために職務をやり遂げる人物の話が好きなんだなぁ。と自覚
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スティーブ・ボール・ランのジャイロの設定は実在の人物をモデルにしていたことが一番の驚きでした。とても非現実的な設定だなぁと思っていたので。
誰よりも国王を敬愛していたサンソンが国王の処刑執行人になるとは、運命って残酷なものですねぇ。処刑場に向かい途中「きっと誰かが国王を救い出してくれる、そのときは自分も協力する」と祈っていたところが泣かせます。ルイ十六世は意外にも国民思いだった、というのも驚きでした。
しかし、処刑者を苦しませないために作ったギロチン(何とルイ十六世も制作に携わっていたとは!)が逆に死刑執行を増やしてしまう原因になってしまったとは。簡単に人を「処刑」出来ると思わぬ弊害が出るようですね。ギロチン操作にもコツがあるようですが。
サンソンの敬虔っぷり(処刑後も個人的にミサをして毎日毎年祈りを捧げている)といい、死刑執行人の人権を訴える傍ら、革命への疑問を抱き悩むところといい、サンソンの等身大の人間像が分かる一冊です。具体的な処刑の説明もあるので若干エグイところもありますが、とても読みやすかったです。
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・代々死刑執行を担当する家系のサンソン家。その中でもルイ16世の処刑をすることになったシャルル=アンリがメイン。革命の動き、ルイ16世の人物像、当時の民衆の処刑人に対する意識の変遷等もわかる。
・裁判の場で「軍人と死刑執行人、どちらも他人の死をもって平和をもたらしている。それなのに後者だけ蔑まれる」という旨を訴えるように、仕事をしているだけなのに一般民衆からは差別の対象となる役職。
・本人は王を敬愛し、死刑がなくなればいいと考えていた。
・ギロチンの開発に王が関わり、なおかつ改良のアドバイスをしていたのは初めて知った。
・ギロチン開発前の斬首を日本式と比較しているのも興味深い。
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興奮のうち、一気に読み終えてしまった。
「ムッシュー・ド・パリ」たるサンソン家四代目当主、シャルル-アンリ・サンソン。フランス革命という激動の時代、彼ほど、一部始終の当事者たり得た人物はいないのではないか。なぜなら、他の人は皆死んでしまったのだから。彼ほど特異な立場に置かれた者はいない。
ルイ16世処刑にいたる描写は、臨場感たっぷりで目頭が熱くなった。
悲痛の極みであったサンソンが、その日のうちに秘密裏にミサを行ったくだりも興味深い。バルザックの『贖罪のミサ』は覚えておこう。
トランダル将軍との縁など、事実は小説よりも奇なりを地でいくエピソードが多数あったが、特に印象深いのは、サンソンとルイ16世の3度の邂逅。1度目は王とその臣下として。2度目は、王ではなくなったルイ・カペーとギロチン製作話し合いの場で。3度目は言うまでもなく、処刑の瞬間である。
残念な点もある。
サンソンが刑を執行した中には、マリー・アントワネットやロベスピエールなど、大物が何人もいたはずだが大して触れられず。また、恐怖政治の道具となったギロチンの存在の変貌ぶりについては、駆け足感が否めない。さらに、死刑反対派だったロベスピエールがなぜ恐怖政治の代名詞となるに至ったか、そこを語らないとはなんとも片手落ちじゃないかなぁ。そこまでのページ数がなかったのはやむを得ないことだし、調べればいくらでも出てくるだろうけど、処刑人の立場から見た記述は稀だろうから、是非ともこの本の延長で読みたかった。
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坂本眞一「イノサン」のネタ本(の一つ)。内容も文章も面白く、小説のようにグイグイ読ませる。フランス革命は色んな角度、視点から見ると大変面白い。これを読む限り「イノサン」第二部も非常にドラマチックな展開となりそうだ。
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久し振りに読み応えのある新書だった。
見せしめ・拷問要素を多分に含む死刑制度、そしてそれを遂行するために必要となる執行人。そして、「死」を扱う者は、恐れられると同時に差別を受けることとなる。その差別により、結果としてその職業は世襲されざるを得なくなる。もちろんその世襲制から離れることは可能だ。だがそれは、先祖を否定し、先祖を恥じる事になる。
1693年12月11日にシャルル・サンソンは子孫たちに対する弁明の書として手記を書き始める。
当時のクリスチャンは、上からの命令は神から与えられた命令と同じであった。社会秩序を守るための上からの命令を忠実に守る事は、神への忠誠である。
4代目のシャルル・アンリは、高等教育を受け、時代の移変わりもあり、死刑制度自体に疑問を持つこととなる。そしてそのアンリ自身が、フランス国王ルイ16世の処刑にたずさわらざるを得なくなる。
フランス革命から恐怖政治下において、下される司法判断について、死刑制度の是非について思い悩み苦しみながらも、職務を遂行して2700を超える執行を行ったアンリ・サンソン。
ギロチンは本来受刑者の苦しみを軽減するものとして用いられるようになったものだか、皮肉な事に、あまりにも効率的に処刑が行われる事になってしまったために、かえって多くの者に対して死刑が執行されてしまう結果となってしまった。
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死刑執行人という仕事を代々受け継いできたサンソン家。その役割を担うに至った宿命と使命、数奇な運命について綴った歴史裏話。
世襲制であり、その当時必須の職業だったにも関わらず、周囲からは分かりやすく忌み嫌われていたこと。特別な手当を受け比較的裕福だったこと。差別を受けつつも、自ら志を高く保ち役割を全うしてきたこと。「死刑」という制度の裏には手を下す人もいる、という当たり前のことに気付かされました。
死刑の様子や、死刑器具の紹介については生々しい描写もあります。「ギロチン」誕生の背景にはそれまでの死刑執行人の苦労があり、むしろ彼らにとっても受刑者にとっても救世主とも言えるような器具だったとは驚きです。
時代とともにその地位も方法も変化を見せ始め、「死刑」という制度自体が見直され始めます。そんな矢先の、4代目サンソンに舞い込んできた「国王死刑」の仕事。心と行動が相反する時の苦しさは想像しきれません。
歴史、社会、文化、人間模様、そしてサンソンの人間性。読みやすいのに血の通った、色々と考えさせられる一冊でした。
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初代サンソンは不可触賎民に生まれたのではなく選択した。それは処刑人の娘と結婚するためではあれ自我を重んじて決意した。この本はサムソンが自分が決意したために、自分の子孫の人生を処刑人に導いた「過ちと悔い」を手記に記した文献を基に彼らの行き方を描いた歴史書である。
日本では山田朝右衛門が有名で、こちらは「斬」で詳しく描かれている。2冊併せて読むと日本と西洋の思想の違いや処刑人の行き方の違いがよく分かる。
この書で一番心に打たれたのがサムソンの叫びだ。
「死刑制度は間違っている、とシャルルーアンリは声を大にして叫びたかった。人の命は何よりも尊重されねばならない。人の命を奪うというのは大変なことだ。死刑制度には、人の命を奪うという、この重大事に見合うようなメリットが何もない。犯罪人を社会から除去したところで、ただ一時的な気休めになるだけで、犯罪を生み出した社会のゆがみが正されるわけではない。それに、人の命はもとから神から与えられたものであり、人の命について裁量できるのは、神だけなはずだ。」