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熊谷達也さんの邂逅の森
今回熊谷さんの作品は初めてでした。
マタギの話なんですが、マタギって・・・・?ってなりますよね。私は最初の章で寒マタギという題なのを寒タマネギと読み間違えて読んでいて、何の話なのか1章目からチンプンカンプンでした。
なんて話はさておき、内容は秋田に住むマタギと言う獣を狩って生活している人の話。
これだけ聞いたら面白いのか・・・?って思うでしょ?それがまた・・・!
主人公は恋多き男。物語で何人かと恋に落ちるんだけど、そのラブストーリーにも目が離せません。獣を狩る男の恋だったり結婚だから独特なんだけど、何だか最後の奥さんに対する気持ちがすごい素敵で感動しました。
そして、マタギという未知の世界を覗いたのでとても不思議な気持ちです。獣を狩る人がいるだろう事は何となく知ってたけど、マタギって名前の職業で色んな規則がある事を学びました。そして、主人公の転職する鉱山での仕事も初めてどんな仕事なのかを知りました。
今まで読んだことのない世界観や職業のお話だったんですが、知らぬ間に引き込まれて読み始めたら止まらなくなります。久々にあぁ~面白かった!と読み終えたときに声を出してしまいました。最後のシーンは痛々しくてちょっと気持ち悪いシーンもありますが・・・・そのおかげでかなりこの作品に対してはかなり濃厚な印象が胸に残りました。
日本人なのに日本の風土に対して無知だったなぁ。と実感。でも、今からでも色々学べてよかったと思います。
直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した作品のよう。
友達の話によるとマタギシリーズでまだ他の作品もあるよう。でも、この作品が一番面白いよ。と教えてもらってしまったのでこの作品でもう満足かも。マタギはもう十分・・・。かも。
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友人に勧められて読みました。
彼女が「イチ押し」と言うだけあって、なかなかすごい作品でした。
日露戦争後の東北、山間の里に暮らすマタギの物語。
マタギ、とは、多くの場合、春から秋は小作農として農業に携わり、農閑期の秋から冬、初春までの間、山に分け入り狩猟をして暮らす人々のこと。
主人公の富治はマタギとしてこれから、というときに、ある事件をきっかけにマタギの仕事から離れざるをえなくなる。
そのことで見えてくる、マタギとは何か、山とは何か。
近代化の波が山奥の里にまで影響を及ぼし始めた時代に、悩み、迷いながら生きる一人の男の半生を描いています。
時代的にも地域的にも「おしん」のマタギ版、という感じ。
でも、波乱万丈の人生にわざとらしさを感じないのは、ストイックなマタギと自然の対峙が物語の主軸となっているから。
人間そのもの、自然そのもの、を感じさせる表現が非常に生々しいです。(いろんな意味で。)
そのへんがダメな人はダメかもしれない。
私はこういう、飾り気のないむき出しの文章や表現、結構好きですけどね。
人間なんてそんな洒落た生き物じゃないですよ。うん。
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富治はマタギとして青年期を迎えていたが、地主の娘を胎ましたことで炭鉱夫に追いやられた。炭鉱場で知り合った男(小太郎)の村に狩猟を教えるということと娼妓であったその男の姉と所帯を持つことを条件に村に住むことが許された。頭領(スカリ)として狩猟組みを作り活動した。ぬし(熊)と一騎打ちし、片足を食われたが妻のため生きて村に戻ろうと自分を奮い立たせた。
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途中、異常なまでの眠気が襲ってくる本でした。
内容はまー面白かったです。
昔の話&東北訛りがすごいけど、男の世界って大変だなって
感じる本。男の人にお勧めかも。
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この本は長らく未読で積まれていた。
傑作であることは直木賞と山本周五郎賞のW受賞という快挙。
数々の書評で知っていたが
その厚さとマタギの話であるということで
読み始めるのを躊躇していた。
しかし。
読み始めたら厚さをものともせず
読み通してしまった。
この本はマタギの青年、松橋富治の物語である。
秋田の小作農の次男である富治は
マタギを生業としていた。
そして、地主の娘の文枝を好きになり、
村を追われることになる。
ここから富治の人生は動き始める。
鉱山で働きながらも
山と狩猟への思い捨てがたく
自ら首領となりマタギを再開する。
そして、出会ったイクという女と結婚する。
しかし、文枝への思いは富治の胸の中に
あり続けていた。
数々の狩猟の場面が緊迫感で読む者の心を掻き立てる。
クライマックスでは以前出会っていた
山の主と思しき大ヒグマと邂逅し
そこで最後の壮絶なまでの戦いが繰り広げられる。
自らの右足をも失いながらも
いくつもの葛藤を繰り返しお互いに分かりあった
イクが待つ村へ向かうシーンで物語は終わる。
まるで伝承の語りを聞くかのような
勇壮な人間味のあるマタギ富治の物語。
日本が今失おうとしている生き様がここにある。
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時は大正時代、東北の山深い村に住むマタギの青年・松橋富治は
身分の違う娘との恋に落ち故郷を追われてしまう。
その後採鉱夫として働くこととなりさまざまな経験、さまざまな人との出会いをしていく中で
富治はマタギへの情熱を再燃させてゆく。
とても壮大な自然が目前に見えてくるような小説だった。
序盤はマタギの「山言葉」に慣れずになんどもページを戻ったりして読みにくかったけども
富治の波乱に富んだ人生にぐいぐい惹き込まれた。
獲物を得るというよりも「山の恵みを授かる」という自然への畏敬の念にあふれたマタギの掟のあまりの厳しさに驚くけれど、こういう想いはとても大切なことだなと思わされる。
今のような世の中だと余計に自然に対して心が傷んだ。
そして富治をとりまく二人の女性の心持ちがとても印象的。
控えめな中に芯の強さと忍耐強さがあって大正時代の女性のしたたかさを感じる。
ラストはとても緊迫感があってまさに雄大な自然との対決が繰り広げられる。
ついつい目を背けたくなるような描写もあるのだけど富治のひたむきなマタギとしての想いが伝わってきた。
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職場の上司に勧められて読んでみた。
最初あんまり乗り気じゃなかったのに、ガッツリはまってしまいました。
山形から秋田にかけて獣の狩猟を生業とするマタギの話・・・かと思いきや、主人公である富治の運命は二転三転します。
テンプレ通りの展開も結構ありますが、伏線の回収はとても上手いなぁと思うし、目の前に情景が広がる文章にも心を奪われました。
明治後期~昭和初期の山村を描いた小説としても素晴らしいし、エンターテイメント作品としてもかなり面白い。
良い意味で、期待を大きく裏切られました。
超オススメ!文句なしで星5つ!!
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骨太というか重厚というか、読後にいろんなこと考えさせる書物です。
時代は20世紀初頭、今から100年ほど前の東北地方。自然に翻弄されながらも自然に寄り添って生きるマタギの若者が主人公です。
失われた日本の風土の中で、因習に囚われ、過酷な運命に抗いながらもマタギであり続けようとした主人公富治の生き様は、現代の男性には稀少となってしまった獣性を感じさせながらも、一本芯の通った男気を見せてくれました。人としてどう生きていくのか?富治は絶えず問いかけながらも、獣を狩るマタギ仕事に己の答えを見出そうとしていたようでした。
序盤はマタギの狩猟について細かい描写がされており、冬山の寒さに凍えながら一緒にアオシシ(かもしか)やクマを狩る興奮に身体を熱くさせるほどでした。
中盤では運命に翻弄される富治の苦悩と、己の居場所を再びマタギに求め復帰するまでの道のりが描かれてます。一人の女に心奪われたことによって心ならずもマタギ仕事を絶たれ、村さえ追われ炭鉱夫として働き始める富治ですが、そこでの出会いがマタギとしての再スタートにつながっており、終盤に向けて富治が悟る(?)己の存在理由についても様々な伏線が張られているようでした。
全編を通して日本の山村の風習、因習、マタギの掟、狩猟などなど語られており、近代日本が帝国主義を突き進んでいった時代を、東北の山村視点で描かれていて、歴史視点でも楽しめる内容です。さらに主人公富治をめぐって二人の女性が登場しますが、性についての描写も多々あるものの、そこにはエロスを匂わせるものでなく人間の営みとしての性、生きる本能というか、男も女も理性でなく本能で感じたら交わる、というような、『おおらか』というか?個人的に感じました。ちょっと言葉にしずらいです。
終盤、マタギとして大成し壮年期の富治にも、自然の脅威とは別の脅威、戦争の道を進む社会、乱獲による獣の減少、そして過去から現れる女と、己の存在理由を揺るがす事由に直面していきます。マタギとして生きてきた彼はその答えを『山の神様』に求めようとし、クライマックスの『ヌシ』と呼ばれる巨大なクマとの一騎打ちへなだれ込みます。
ラストはとてもキツく感じました…しかしながら感じたことは、人間は生かされている!という自然や社会の厳しくも慈悲深い真理であると自分ながらの理解に至りました。
山本周五郎章、直木賞ダブル受賞の栄誉は納得の感動巨編でした。
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「この本にめぐりあえてよかった!」という帯に惹かれて購入~しかも、史上初の、直木賞と山本周五郎賞をとった作品だとか。そのことがどれくらい凄いかよくわからないがw
けっこう分厚い本なので、堅くてつまらなかったらどうしよう?と不安になりながら読み始めたら・・・もうとまらない。寸暇を惜しんであっという間に読破してしまった。
時代は第1次世界大戦前、大正の時代の日本。場所は東北の秋田地方。主人公は、地元では「マタギ」と呼ばれる猟師を職業とするが、地主の娘と恋をして、村を追い出され・・・。
大自然の中の猟の描写もリアル。そして、夜這いの描写もリアル。全ての場面がまるで自分の前で展開されているような錯覚に陥ったくらい。そして、主人公にふりかかる難題も自分のことのように悩んでしまった。最後は、感動で、しばらく放心状態。
宣伝どおり、自分も「この本にめぐりあえてよかった!」と素直に感じた一冊でした^^
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厚い。
が、波乱万丈な主人公の人生なので、章ごとに「それからどうなっちゃうの?」と読み進めることができる。
マタギということばでしかイメージできなかった存在が、血肉を持って浮かび上がってくる。知ることの快感があった。
残念なのは・・・女性が男性目線の「夢」的な描き方だった点。
正直と言えば正直な書きっぷりなのだろうけど、がっくりしてしまうのですよ、あんまり薄っぺらいと。
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読み終えてみると色んな要素がぎっしり詰まっててこれぞエンタメ!と思える1冊。とはいえ芯になっているのはマタギの物語。最終章はやはりこうでなくては。息を詰めて読みました。
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「マタギ」がテーマのネイチャー系小説を予想していたが、完全に裏切られた。いい意味で。もちろん期待していた「自然との共生」もテーマの一つではあったのだが、それ以上に物語としてとても面白かった!昼ドラ的ドロドロの愛憎劇あり、官能的な濡れ場あり、ホラー映画のごとくグロい熊との対決シーンあり…かなりの長編だがまったく飽きさせず、一章一章が短篇としても読めそうなほど。登場人物もそれぞれ個性的で愛おしい。でも、東北弁がリアルすぎて映画化は難しいかな(^^;;。W受賞も納得の秀作!
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直木賞受賞作ということで何の予備知識もないまま読んだ1冊。
著者のことさえこの本を読むまで知らなかったのだけど本当にこの本に逢えて良かったと思わされた。
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こういう書き方をされると、他の小説家が書きにくい。
どういう書き方かというと、綿密に調べ上げた膨大な資料の元に書いているからだ。
今回は日露戦争から満州事変にかけての、東北における「またぎ」の世界を詳しく描いている。
ついでに銅山で働く「炭鉱夫」の実態も微にいり細にいり描写されている。
インスピレーションに頼って、恋愛小説を書くようなお気楽(?)な小説家は、思わず居住いを正さなきゃっていう気になるだろう。
やはり直木賞は努力賞なのだろうか?
著者は東京電機大学卒のバリバリの理科系。
さもありなんと思わされる。
・・・・・・
ところが心理描写も巧みで、ストーリーテラーとしての能力も高いことに驚かされる。
456ページの大作(?)だが、飽きさせない。
途中何度もホロリとさせられた。
知らない世界を勉強する意味でも、読んで損のない本である。
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シャトウーンと比較されていたが、この本は比較すべきではない、全くジャンルの違う本だと思う。一人のマタギの半生を丁寧に描いた作品。