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先日読んだ『蜩ノ記』の中で特に印象深かったのは少年たちだった。
主人公の息子の友人、農民の源吉は、武士からお咎めを受け連れて行かれるとき、泣きだした妹に向かって、面白い顔をしてなだめていた。
このあたりのストーリーは、斎藤隆介さんの『ベロ出しチョンマ』そっくりだと思い、さっくこの本を読み返した。
江戸時代、天候不順で農作物の出来が悪いのに、重い年貢で農民たちは困っていた。千葉のある村でも村人たちが困りはて、名主が将軍へ年貢の引き下げを直訴に行くことになる。名主一家は直訴の罰としてつかまり磔の刑に。泣き叫ぶ妹に向かって、名主の息子長松は「俺の顔を見ろ」と言って、ベロをだし眉毛をハチの字にさげた面白い顔をして、妹を笑わせて死んでいった。
江戸時代の農民の子とはこんなにも兄妹思いなのか。
下の子の面倒をみながら労働に明け暮れてる過酷な毎日の中で、
小さくてか弱い者を年上の者がかばうのが当たり前、
そんな習わしが自然と身についていたのかもしれない。
昔のように、祖父や祖母が同居し、
大家族であればあるほど、兄妹の仲も良かったのかもしれない。
死の恐怖は誰もがあるものなのに、
妹を怖がらせないように、おどけた顔をする心優しい兄。
いいなあ。
自分の境遇を顧みれば、私には弟がいる。(もういい年のおじさんだが)
やはり、それはそれでかわいい(?)ものだが、
お兄さんっていいものだなと羨ましく思った。