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24 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

スピノザの方へ

2004/04/18 18:53

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 朝日新聞で、天外伺朗がカイエ・ソバージュ全巻の書評を書いていた。量子力学と深層心理学から借用した二つの概念、ボームの「明在系・暗在系」とユングの「集合的無意識」に(たしか)積分論を加味して、好き放題の想像力をふくらませた『ここまで来た「あの世」の科学』は、結構好きな「サイエンス・フィクション」だった。「欲をいえば、本書の内容を頭だけで理解しても十分ではなく、土や森と親しむ自然体験や、瞑想などによる内面の体験を通して身体的に把握できることが望ましい」というカイエ・ソバージュに対する評言も、きわめて真っ当なものだったと思う。(真っ当だとは思うが、「自然体験」や「内面の体験」や「身体的把握」もまた言葉でしかない。だから、ほんとうは言ってもしかたがない。)

 それはそうなのだが、それにしても天外伺朗が中沢新一を論じるというのは、それも、一神教型資本主義(グローバリズム)にたいするオルタナティブを提案できるのは旧石器時代に芽生えた仏教の思想だけだとか、性的体験と宗教的体験は無限集合の構造をもつ流動性無意識が自由に対称性の運動を楽しんでいるときの幸福感=悦楽のあらわれだとか、超準経済学としての普遍経済学というものは絶対に存在するはずだとか、新しい「神即自然」というスピノザ的概念のよみがえりを通じた未知の形而上学革命といった議論が出てくる本書を評するのは、あまりにできすぎた話ではないかとちょっと心配になってくる。

 ──読み終えて一月以上経つので、細部はほとんど覚えていない。ここでは、いまだ鮮烈に残っている読後の印象を二つ、書いておきます。その一。中沢新一が語っていることは、たとえばプラトンやハイデガーがついに語らなかった事柄(語り得なかった事柄ではない)であり、たとえばニーチェやバタイユが身をもって生きようとした(より精確には、言語=表現をもって上演しようとした)究極の「哲学」(サイエンス・フィクション)だったのではないかと思ったこと。

 その二。レーニンの『国家と革命』と柳田国男の『石神問答』を「発展させ完成に近づけていくことこそ、自分にあたえられた重大な人生の課題ではないか」(『精霊の王』あとがき)と考えた中沢新一が、『フィロソフィア・ヤポニカ』(2001)と『精霊の王』(2003)で『石神問答』を、『緑の資本論』(2002)と『カイエ・ソバージュ』(2002〜2004)で『国家と革命』をそれぞれ発展させたこと。(さらに言えば、それぞれを完成させるためにはあと二冊、一つはちゃんとした数学書、いま一つは本格的な仏教論が書かれなければならないと思ったこと。)

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紙の本

野生の思考としての仏教再生

2004/08/22 17:22

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yuyuoyaji - この投稿者のレビュー一覧を見る

『カイエ・ソバージュ』1巻で神話の誕生と伝承における環太平洋という枠組みと現生人類という壮大な装置に評者は惹かれ、5巻にたどりついた。「第三次の形而上学革命」をめざして、レヴィ=ストロースを下敷きに、精神科医ブランコ、南方熊楠、数学者ロビンソン、バタイユ、ハイデッガー、フロイト、とさまざまな領域の思考に焦点があてられる。その思考の向かう先はとうぜん4巻までであきらかにされたように、分析的・アリストテレス的論理ではなく対称性の論理につらぬかれていなければならない。第二次形而上学である「一神教型」資本主義がもたらしているグローバリズムに立ち向かうことのできるのは仏教の思想である。ここでいう仏教とは「無意識=流動的知性の本質をなす対称性の論理に磨きをかけて、その可能性を極限まで追求した思想にほかならない」。それは宗教としての仏教ではなく、「これから生み出そうとしている新しい対称性の知性のもっともすぐれた先行者」としての仏教である。

著者は無意識に言及するにさいして、フロイトにくらべて「普遍的無意識」を説くユングについて触れることが少ない。仏性と無意識の共通性に注目するのであれば、自我を脅かす存在としての無意識をとりあげたフロイトよりも、人格の発生源として無意識を提示するユングをとりあげるほうが適切ではないだろうか。さらに、「無意識をとおして人間の『心』は自然に、そして宇宙につながっている」のだから、ユングの普遍的無意識にこそ親和力がはたらいてよいと考えられる。

ユングといえば、ユング派精神分析の第一人者河合隼雄の『ユング心理学と仏教』もまた、個人的・全人類的な問題の解決方法として仏教を提示していたことを想起させる。創作ファンタジーや昔話の分析に豊富な実績をもつ河合と地球規模の神話に焦点をあてる中沢というちがいはあっても、仏教への迫り方は似ている。もちろんアリストテレス的な論理にたいする見方も中沢が対称性論理を優位に置くのにたいして、河合が分析的論理への批判を限定的におこなっているというちがいはある。また一神教型の資本主義の原理を鋭く強烈に批判する中沢にくらべて、河合のばあいは経済についての考察は対象外であるといえる。中沢においては「人間の営む現象」だけでなく「科学的思考も、無意識の領域で直観的につかみだされたアイディアを、非対称の論理に『翻訳』することによって、飛躍を重ねてきた」。ハイゼンベルクが量子力学を発見したのも、ガロアが群論において「異質なレベルのあいだで、対称性をもったまま、ひとつの全体運動がおこなわれている様子」を見出したのもそのような位置付けのなかで展開される。

華麗な文体でラディカルな思考をくりひろげる中沢と中庸を行く河合との相違点はいわば、これまでの各々の「縁起」によってもたらされるちがいであるが、いずれも仏教の論理・智恵に個人と人類のかかえる問題解決の指針をもとめるという重要な接点をもつ。かつて『雪片曲線論』で密教による心の解放を追求した著者が大乗仏教に向かうのはある意味必然であろうが、初期の体験と思考に磨きをかけ、東西の華麗な宝石をちりばめて壮大な思考の輝きをわれわれにしめしてくれた。多神教の伝統をたもってきた日本の宗教的社会に希望を見出すべきだという主張とともに、思想としての仏教に惹かれる者にとっては、あたらしい視点から仏教への関心が鼓舞される書である。仏教についてのさらに深化した書が待たれる。

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