紙の本
「石の話」の展開にはドキリとさせられる
2024/02/01 10:55
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
黒井氏の作品を読むのは2017年の「群棲」以来だ、隣の芝生は決して青くないということがわかる面白い連作でまた黒井氏の作品は読みたいと思っていたのだが前作を読んでから結構時間がかかってしまった、面白いのに古本屋でしかお目にかかれないのだ。この作品集は「黒井千次自選短篇集」で氏の20代の終わりの作品(ビル・ビリリは歌う)から60代の作品(散歩道)まで収録されている、いずれも文庫本として30ページ程度のもので、氏は「短編というのはこれくらいが座りがいい」と文庫内の「著者から読書へ(これがあるから講談社文芸文庫が好き)」で語っている、私も同感。作品の中では主人公の年齢と私との年齢が近い「おたかの道」「石の話」「散歩道」が好き、とくに「石の話」の展開にはドキリとさせられる、ひょっとすると妻もそう思っているかもと
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自選短編集。著者の20代の頃の作品に始まり60代の作品まで収録されている。
「ビル・ビリリは歌う」
ある意味みんな病んでるw 特段驚きはないものの、会社勤めしている人間なら何か親近感をもって読めるかも。★★★
「首に巻く布」
上司に嫌われたが最後、ってヤツ。会社ではごますりが大事ですよねー。★★
「声の山」
含みをもった終わり方。父親は何を探しに行ったのかなあ。★★★
「石の話」
気付かぬうちに夫婦の向いている向きが静かに、決定的にズレていた。これはいいね、怖い怖い。★★★★
「袋の男」
まさかのゴミ袋ストーカー。★★★
「おたかの道」
もはや何も覚えてない。すまぬ。
「夜と光」
これは深夜ラジオのライブ感が出てて良かった。深夜ラジオ聞いたことないけど。★★★
「庭の男」
これ実際あったら結構嫌かもなあ。定年してやることなくなったら、細かいことが気になりつつも、そういうものがないと張合いもないのかも。★★★★
「散歩道」
日常から非日常へ、こーゆー入口がその辺にぽっかり口をあけているって考えると少しわくわくするよね。★★★
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「ビル・ビリリは歌う」
ビルに突如響く泣き声はやがて歌にかわる。
「首にまく布」
ネクタイごときで部長と確執。
「声の山」
父親は何を探しにいったんだろう。
「石の話」
妻に育児も介護も押し付けておいて今更…。
「袋の男」
いまならストーカー、と呼ばれる行為。
「おたかの道」
おタカさんの道ではなくて、鷹狩りに使われた道。
「夜と光」
ラジオを聴いて一斉に…ロマンだなあ。
「庭の男」
プレハブの子供部屋って、非行を助長しそう。
「散歩道」
いつ心霊系怖い話になるのかと思った。
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自選短編集ということで、初期作から現在に至るまでの優れた或いは作者的に上手く書けたのだろう作品が、名を連ねている。いずれもある程度同じ枚数の作品を、意識的に年代別に選んだとあとがきにあり、作品の背景についてあまり多くは語られていなかったが、とにかく、初期は社会人時代と重なっていたこともあり、会社と個人や仕事と社会の距離感や内面がテーマに描かれ、作者が退社してからの中期からは家族や近所や場所という人間関係や繋がりを意識した作風に転化している。そのため物語の幅は広いが、共通した所は”内向の世代”の作家と呼ばれるだけあって、人間の内面もしくは行動が多く記されており、突き詰めた故の人間の心理の怖さが大抵の作品に滲み出ている。特に「石の話」「袋の男」が個人的には注意を引いた。