紙の本
精神医学からみた看護論
2007/02/24 23:56
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反射鏡 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はソーシャルワーカーだが、「看護のための」と看護師向けに書かれたこの本に出会うことができたのは幸運である。
私は、この世界のことが詳しく分かるわけではないが、看護師の世界では、「専門看護師」「認定看護師」のように、専門性を重視した人材の育成に力が注がれているようである。
一定の水準に達した人が特定の資格を得るという制度は歓迎するが、看護師が専門性を得るということは、どのような方向にステップアップしていくということなのだろうか?私の個人的な望みは、看護師としてのステップアップが医学的な知識を多く身に付けていくことにならないことである。
「看護できない患者はいない」。本書は、この看護観を大前提にして書かれている。普段は特定の疾患、特定の世代、特定の病状の時期の患者に接していようとも、必要なときには誰の看護もできる。それが本来の看護師の姿である。
そのためには、看護師自身の自覚とともに、看護師と協働して仕事をするひとたちが看護についての適切な認識をもっていなくてはならない。
本書は精神医学という切り口で書かれた看護論である。それも、抽象的な概念を並べるのではなく、具体性の中に看護のあるべき姿が読み取れるように書かれている。精神科看護のテクニックではなく、看護論を学ぶためにも一読に値する一冊である。
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病気そのものを扱おうとするのではなく、症状を出している患者自身を見つめる視点で書かれているという印象を受けた。
看護の本は初めて読むが全般的な特色なのだろうか。
睡眠のケアの話が深くて詳しい。
統合失調症のケアについてもページをたくさん使っている。症状の現れ方、対処法や患者の考えている(であろう)ことから発症、経過まで、平易で読ませる文章なのに内容は濃い。
統合失調症について、巷に溢れた入門的な本では足らない人には強く勧めたい。看護や医学、心理が専門でなくとも得るものは多いはず。
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これは名著。看護のための、とあるが全然心理の人が読んでもイケる。具体的で、細かく、かつ平易で深い。一冊手元に置いておきたいなーと思う一冊。
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看護するために知っておきたい、精神病の分類と経過。網羅的なので、直接関わる人には有効なのだろうと思います。
・アメリカの精神医学の訓練では、「仕事を終えても、まだある患者のことが気になってしかたないなら、その患者に巻き込まれているのだから主治医を交代するべきである」と教えを受け、筆者は深い感銘を受けた。
「24時間中患者のことを思っているのが看護師の理想だ」という訓話は一見良いようだが、けっしてそうではない。
・自分で悩むかわりに他人を悩ますのは「裏返しの神経症」とも言える。それをもう一度裏替えして「神経症」にして治すということができそうである。
・人格は発達の過程では、環境との相互作用のなかで、多くの経路が同じ一つの結果にたどりつくこともあり、逆に同じ一つの出発点がたいへん異なった結果に達することもある。
・「理解」はついに「信」に及ばない。あなたの配偶者や子どもを「信」抜きで理解しようとすると、必ず関係を損ない、相手を破壊する(人間は人間を理解しつくせるものではない)。
婚約者にロールシャッハ・テストを施行しようとする精神科医はフラれて当然なのである。人格障害といわれる人は「信なき理解」にさらされてきた人であるかもしれない。
・精神療法者のプライドのもとは他で(施療以外で)求めなさい(フリーダ・フロム・ライヒマン)。
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名著です。精神医学書から一冊を選べと言われたら躊躇なくこの本を選びます。
なぜならここに書かれている内容は当事者が読んでも有益な知識だからです。これ以上の本があるでしょうか。
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「医師が治せる患者は少ない。しかし看護できない患者はいない。息を引き取るまで、看護だけはできるのだ」はさすがの名分。精神科医こそが読むべき本。いつまでも謙虚さを忘れないためにも繰り返し読みましょう。
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実践的
“仕事を終えても、まだある患者のことが気になってしかたがないなら、その患者に心理的に巻き込まれているのだから、主治医を交替すべきである。
008
“脳の能力水準を下げる病気はなんでも、それまで耐えられた「心因」を耐えられなく、また、「心因」への反応を幼稚なものにする。18
○役に立つかもしれない13の助言
3 患者を突別扱いしない。患者だけの時間をとったり、喫茶店で面接したりしない。患者が「特別な人」ではなく「おおぜいのなかの格別変わり映えのしない1人」であることを体験するのは、治療的であり、患者もじつはそう悪い気はしない。
4 患者のことばの端々にこだわらない。患者の語ることばは成人の通常言語よりも、思わぬ深い意味や広がった意味をもっている。
210
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■まとめ
●「医師が治せる患者は少ない。しかし看護できない患者はいない。息を引き取るまで、看護だけはできるのだ」。「傷ついた人、おなかをかかえて苦しんでいる人を見過ごせないところに看護が始まる」。
●治療や看護は息の長い仕事。だからこそ患者の感情に引き込まれすぎず、他人事と思うようにして自身の精神健康に気をつける。働きすぎたら翌日は上手に休息、2日で収支を合わせれば無理なく仕事をつづけられる。
●精神療法の座標軸: ①支持/切開、②変化/安定、③患者を強くするかどうか、④言語/非言語、⑤個人/集団
■感想
「看護できない患者はいない」ことを医師が説いているのが謙虚ですごい。著者は治療者・研究者として優秀であったばかりでなく、人格もすぐれた人だったのだろう。でなければ「ともに病みうる人間」なんて言葉は出てこない。
本書そのものは刊行が古く、DSM-5にも準拠していないので、いわゆる教科書としては他書をあたったほうがよさそう。でもたんなる操作的な診断基準では推し量れない「病の奥深さ」みたいなものをめぐって、長年の診療観察にもとづく疾患例の報告とその考察が惜しみなく開陳されていて、読み物としてとても面白かった。
■ノーツ
・特異症状よりも非特異症状に注意
・よい治療では、治療者は「自由にただよう注意」(フロイト)を患者に向けている
・精神病水準(自分をコントロールできていない)> 神経症水準(自分をコントロールできている)
・発達神経症と退行神経症
・アルコールは向精神薬として不適格
・科学の4つの柱: ①モデルづくり、②実験、③統計、④事例研究(個別観察)
・医学は倫理+科学
■目次
第2版刊行にあたって
1 はじめに考えておくこと
この本をつらぬくもの
精神科の病い
精神科看護に求められること
2 精神医療とはなんだろうか
「こころ」と「からだ」
「病気」と「原因」
3 症状をどうみるか──特異症状と一般症状(非特異症状)
非特異症状の意味
各種の非特異症状
感情のあり方
4 睡眠と覚醒
睡眠のリズムと夢作業
睡眠障害
睡眠の質
睡眠を看護に生かす
5 精神療法
各療法の説明をする前に
精神分析
精神分析の限界と新しい精神療法
治療の間隔について
わが国独自の精神療法
看護における転移
6 薬物療法その他
精神科と薬物療法
抗精神病薬
抗不安薬
睡眠導入薬
電気ショック療法
7 統合失調症圏の病気
統合失調症という病名について
統合失調症とはなにか
統合失調症のおもな症状
患者が訴えない症状
幻覚・妄想について
患者の疲労感について
統合失調症患者の自己感覚を推しはかる
統合失調症患者にはおこらないこと
統合失調症の分類
8 統合失調症の経過・Ⅰ
統合失調症の予防と家族
子ども時代の危機要因
学齢期から思春期の危機要因
成人以降
9 統合失調症の経過・Ⅱ
統合失調症の経過をどうみるか
発症前の状態
発病(急性精神病状態)
急性状態の後期
回復期前期
回復期後期
慢性統合失調症
10 躁うつ病圏の病気
「躁状態」と「うつ状態」
病前性格と発病状況
躁うつ病の治療と看護
11 神経症圏の病気
神経症とはなにか
a 発達神経症
小児神経症の代表としてのチックとジル症候群
単純恐怖症
強迫症
対人恐怖症とひきこもり
離人神経症
妄想症(パラノイア、偏執症)
発達神経症とは
b 退行神経症
退行神経症とは
不安神経症とパニック障害
ヒステリー
心気症
心身症
神経症性うつ病
境界例(境界性人格障害)
解離性障害
多重人格(解離性同一性障害)
現実神経症
外傷神経症
12 人格障害
人格障害とはなにか
人格障害の人への接し方
13 外因性精神病
外因性精神病とはなにか
意識の変化
痴呆と器質性人格障害
記憶の障害
a てんかん
てんかんの発作
てんかん者の性格変化
診断のための観察ポイント
てんかんの治療と看護
b 老人性変化による精神障害(アルツハイマー病)
c 精神遅滞
d 症状精神病
内分泌精神症候群
e 薬物(物質)使用による精神障害
アルコールによる精神障害
覚醒剤による精神障害
有機溶剤による精神障害
14 精神科と他科との境界にある問題
コンサルテーション-リエゾン精神医学
心身症
摂食障害
15 現代精神医学を位置づける
〈科学〉と〈技術〉からみた医学・看護学
〈歴史〉からみた医学・看護学
精神医学小史
付録
1 精神科病院についての覚え書
2 症例検討に提出するノートの書き方について
3 仕事のみならず、一般に生活再開にあたっての助言
4 ストレスとつきあうには
索引
あとがき
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メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1743051989905547406?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw