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日本の国際情報発信 みんなのレビュー
- 東京経済大学大学院コミュニケーション学研究科 (編)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:芙蓉書房出版
- 発行年月:2004.5
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紙の本
国際化を考える人に
2004/06/18 14:05
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投稿者:レノン - この投稿者のレビュー一覧を見る
同書の第一部は2003年に開催されたシンポジウム「日本の国際情報発信」でのパネリストの発言を忠実に再現し、まとめている。通信社や外交官など国際情報発信の現場にいる人々からの問題提起がなされていて、興味深い内容だ。
第2部は、「歴史・理論・文化」の視点から5本の論文が掲載されている。1部、2部ともに非常に分かりやすく、すらすらと読むことができた。
同書が問題とするのは、「グローバルなレベルにおける情報の流れの不均衡」の存在だ。たとえば、執筆者の一人、長谷川は、発展途上国が大手通信社から配信されるニュースの中で、ほとんど無視されている点を挙げ、「欧米の大手通信社の独占状態にあり、(中略)その内容も、商品としてのニュースの消費者である西欧諸国の受け手のニーズに呼応した物語へと、欧米諸国の文化や価値観にそったニュース情報の選別がおこなわれるために、第三世界の文化や価値観を反映したり、少数者の声を代弁したりするものは登場しない。どの国のメディアも、発展途上国を扱ったニュースが少ないだけではなく、たとえ扱われたとしても、災害やテロのような突発的な大事件に限られるか、欧米諸国のステレオタイプ的見方を反映したものとなる」と論じる。
つまり、私たちが日頃、新聞やテレビで知る、世界の出来事は、欧米諸国のジャーナリストの主観に左右されていることになる。果たして、私たちは中立的な位置で報じられたニュースというものをこれまで、見聞きしていたのだろうか。個人的な経験から言わせてもらうならば、ジャーナリズムの現場では、客観的な中立報道が叫ばれ、盲目的に信じられている。しかし、著者の有山は同書の中で「特定の意図はもたず『客観的』なニュースを発信していると自称している場合もある。だが、ニュース発信は、実際には意識的にしろ無意識的にしろ、何らかの意図をもっておこなう活動である」とし、「『宣伝』と『中立』的報道は、基本的に程度あるいは濃度の差にすぎない」と指摘する。
そうであるならば、「日本の国際情報発信」とは、たんに日本の出来事を世界に届けることではなく、日本の文化や考え方などを諸外国の人々に「宣伝」することであり、その視点が何よりも重要な要素となるはずだ。
日本が国際情報発信する上で、文化の違いや言葉の壁など、さまざまな障壁がある。何よりも情報の受け手となる消費者の関心を引かなくてはならない。その意味では、不況とはいえ、国際的経済力のある日本は世界の関心を引く要素を持ち合わせており、先が明るいようにも見える。しかし、本当に問題なのは、日本が欧米に追いつき追い越したところで、情報の格差、差別、いわゆる「メディア帝国主義」は解消されないということだ。
「日本」の枠組みの中でグローバリゼーションを考えるのならば、日本の国際情報発信は、メディア帝国主義に加わることでしかない。各国がある程度の情報発信力を持たない限り、この問題は決して解消されないだろう。いや、何を持って問題が解消したと言えるのかは、それほど単純ではないかもしれない。ナショナリズムとグローバリゼーションの問題は、実は表裏一体なのではなかろうか。
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