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紙の本
ふやけた想像力で世界を見る
2004/06/01 16:59
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投稿者:かもめの嘆き - この投稿者のレビュー一覧を見る
この世にはびこるトンデモ本を切って、切って、切りまくるだけの本だろうと思っていたのが間違いだった。
たとえば、冒頭の『アポロは月に行かなかった』。
アポロは月に行かなかったと主張する一群の人々に対して、丁寧に根拠を示して切って捨てる。こういう一群に対して反駁を加えること自体、大いなる労力の無駄だと思えるのだが、「と学会」の方々はあくまで優しい。
問題はその先である。「アポロは月に行かなかった」となぜ信じる人々が存在するのか、というからくりにまで立ち至るのである。ここで、いかに情報を操作し、ある「こと」を人々に信じ込ませることは容易か、ということを教えてくれるのである。これは確かに怖い。
しかし、そうした操作された情報を信じるのは、われわれの想像力がふやけてしまって、少しまともに考えればおかしいということを感じなくなってしまっているからではないか。少し調べればおかしいとわかることも自分では動かずに、与えられた情報に身を寄せているからだけではないか。
第四章のエッセイ・評論系で「トンデモ本」の仲間入りさせられた車谷長吉の『銭金について』。自分が創作の道に入ったきっかけであった三島由紀夫の死を、才能が涸れつくしたことを自覚したための死であると記したあとに、「哀れな天才の末路である。先頃、若くして芥川賞をもらった平野啓一郎氏の末期が見えるようである」と書く。そして、「と学会」の方は、普通は(思っても)書かない、と書く。さらに、直木賞受賞後の日記。著者の直木賞の受賞を機に新潮社が自社の著書を増刷したことを、「新潮社は普段は“俺たちは文壇の王座だ”と豪語し、あれほど文藝春秋に対抗心を剥き出しにしているのに、いざ私が直木賞を受賞してみれば、自尊心も誇りもかなぐり捨て、文藝春秋の尻馬に乗って、金儲けに走ろうとする」と書く。
「と学会」の方は「どうしてこの凄まじい精神の病者の、病んでいるが故の、偏見と独善と自己嫌悪と誤謬がないまぜになった視点が、こうも読んでいて心地いいのだろう」と疑問を呈する。「と学会」の方の解答はさておき、それは、精神が破綻した人間こそ世界を正視しているに違いないからではないかと思う。そのあり方は、ふやけた想像力と対極にある。多くの人間には、自分にとって耐えられないことを正視することを無意識的に回避するメカニズムがあり、精神を病んでいる人には、そのメカニズムがない、ということなのだから。
この本は、あいた少しの時間で、ひとつの項目を読んで、大笑いすることができる。天に向かって唾するようなものだということも知らずに。
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