紙の本
女性向けの「恋愛論」でなく、日本人「男性論」として読む。
2004/08/06 19:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:綾瀬良太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上龍は、ふがいない日本人、特に男性に嫌悪感を抱いているようだ。乾いた土地に雨が染み込むように、龍のいらだちが読み手にも浸透してきた。正しいか否かは別にして、龍の言い分はすんなりと理解できる。
たとえば龍は、本書で不意に息を吐くようにこんなことをつぶやく。
「中央線のホームに佇むおとうさんたちはどうだろうか。ホームレスはどうだろうか。何かやりたいことや、やるべきことがあるのに、自殺を考えたり、ホームレスになってしまう人がいるだろうか」
自分のやりたいことの優先順位が明確になっており、あるべき姿が見えている男性で、依存せずに生きていれば、誰も自殺を考えたり、ホームレスになったりはしない。明白だ。しかし、現実はそうなっていない。日本の閉塞感は、いわばサラリーマンの閉塞感なのである。これは私見だが、フリーランスは誰にも頼れないから、すべて自身で決定しなければいけない。明日から仕事がなくなる。一方、サラリーマンはリストラされない限り給料は得られる。自分の稼ぎを自分の才能や特別なスキルで稼ぎ出しているサラリーマンは、いったいどれくらいるのだろうか。日雇い肉体労働者の私は、実態をよく知らない。
しかし、会社に食わしてもらっている男性とそうじゃない男性との間に、格差が生まれるのは当然である。それは生き方の格差だ。
いまだに「勝ち組・負け組」などを意識しているサラリーマン、そんな言葉を使っている役員にも、あるいは恋愛はできないような気がする。
会社が利益をあげているだけの「勝ち組」より、自分のスキルを研ぎ澄ました「価値組」が台頭すれば、この国の恋愛事情は変わるのだろう。「恋愛の格差」は、若い女性に向けた「恋愛論」の形をとっているが、じつは日本人「男性論」なのではないだろうか。
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普段どうしても敬遠しがちな恋愛ものを読んで、ほんわかした気分になってみようじゃないかプロジェクトその2。
_| ̄|○人選を間違えたような気がする。
_| ̄|○この方言ってることもまぁまぁ筋通ってるし、フィクションだとそこそこなのに、何故こうなの。
_| ̄|○けなすのは好きじゃなぃんだが。やべ、amazonのレビュー好評価だな(藁
さて、どうしましょう。
格差を伴った多様性、がテーマということで。そしてその中の恋愛。
_| ̄|○どうでもいいよう(泣
とってもどうでもいい。だってどうでもいい。
いや、至極もっともなんですよ。格差についても、多様性についても。他諸々についても。
しかしそれは言われるまでもないし、言われてどうなることでもないしなぁ。
ホウ、してそれで?というのが感想。ソーリー。
まだ言いたいよ。ソーリー。
多様性を訴える文章なのに、ターゲットが明らかに限られている感触があります。
…簡潔に言ってしまうと「商用」って感じの文。
このようなターゲットを狙って、こういう反応がかえってくるという狙いがありありと。
「泣かせ映画」みたいな感じですね。
そうだそうだ、結婚したからって幸せじゃないよね?と言ってほしいのかな?
そうだそうだ、会社勤めの人間って没個性だよね?と言ってほしいのかな?
読者層に「私ってちょっとみんなとは違うのよ」自称不思議ちゃんが集まりそうで怖い。
普通を笑っちゃいけない。
毎日毎日繰り返し会社に勤め、それぞれの家庭を守り、それぞれの人生を生きてきたおじさん達を、話がつまらないでまとめてほしくない。
さて。あたしは旅行の際に飛行機がエコノミーでも何ら問題ないし、むしろ飛行機でなく、新幹線でなく、鈍行でゴトゴトでも構わない。
ホームレスが不幸とは思わないし、失業したら必ず不幸になるわけでもなし。
結婚が損か得か以前に、結婚にそもそも付加価値求めちゃいないのですし。
そういった人種には困りモノなこの本。
何をそんなに小難しく考えるのかね。
失業するときはするし、ホームレスになったらなったで、地球が滅びるとしてそれを誰が止められる?
日本が崩壊?結構なことです。
崩壊したなら一から作り直す。結構じゃない。
と、笑い飛ばしてはダメですかね。
それになにより、こんなカチカチに考えて恋愛したら、つまんないんじゃないかしら?
恋は落ちるもの!(乙女イエー
早速、amazonにてハードカバーのレビュー最後尾ただ1人全力で否定していた方に惚れたところです。
むしろアタシはこの方の恋愛エッセイを読みたいのですが。
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初めての村上龍作品。「恋愛」というテーマから女性誌を読むような軽い気持ちで読んだら経済のお話が中心で、一瞬、期待外れ?と思ったけれど、読み進めるうちに、ハッとさせられるような話が多く時事経済が苦手な自分でも楽しめた。これからばりばり働きたいと考えている女性はどうぞ。そういう人向きの本だと思う。
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この人の恋愛に関するエッセイは共感できるところが多くでおもしろいなぁ。前出の『誰にでも出来る恋愛』と同じで、話題が経済にも肥大しているからおもしろく感じるのかも。タイトルにもある通り、経済の格差が拡大すると、一億層中流の時代とはちがって恋愛のあり方も多様になってくるというような事が書いてある。今の自分にすごくマッチした内容でした。
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恋愛を村上龍の幅広い視野から描かれている。それは現代社会の変化であったり、経済、日本の現状と結びつけている。
章を読み終えるごとに、自分ならどう考えるかというように考えさせられることが多かった。
僕は「恋愛の条件を満たせない男」、「依存かそれとも愛情か」という章に凄く興味を持った。現代では依存と呼ばれていることが、昔では愛情と呼ばれていたということが書かれた章だ。自分自身、とても思い当たる節があり面白かった。
その他にも生きていればなんとなく感じていた「違和感」というものが問題提起され、それに対しての考え方が頷けるものが多くて面白かった。
時事的な話も多いが、時事が苦手な僕でも分かりやすく、自分の中での「なんとなく」が少しでも解消できる本でもあるんじゃないかと思った。
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近所の図書館にて。
タイトルから想像される内容ではなかった。男女の恋愛を取り巻く環境(時代、習慣、経済など)の移り変わりについて書かれていた感じ。
それから、読んでいくとどうも女性向けだったらしい。まぁ、男でも共感できるし、楽しめる内容。
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2009年1月9日読了。村上龍の主に女性向け?恋愛エッセイ。村上龍の文章はいつも簡潔で小気味よく、それだけにメッセージがダイレクトに伝わる。反論したくなることも多いが・・・。恋愛・結婚について考えるとき、過去の文脈に当てはめて現代を理解しようとするのは意味がない・使用するモデル・物差しが古いままだと現代を理解することはできないということか。恋愛を含む対人関係を成功させようとするとき一番重要となるのは「信頼」だということ。問題意識・危機感というのは「想像力」であるに尽きるということ、今の日本人は「想像力」が欠如しているために現状を正しく認識していないのではないか?など。考えさせられた。
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mixiで「自分が恋愛が下手な理由」を書いてる友達がいた。知り合いだらけのmixiでそんなこと書くのが、いかに自分の値打ちを下げてるのかに気づくころに、彼のレベルは上がるんだろうと思った。が、人のことは言ってられない。・・・・なので書かずして考えることにします^^
まぁ恋愛の闇、闇について、そしてそこから見える問題点について、こういう発言力のある人が書いてくれたことは良いことだと思う。恋愛の問題、恋愛の正体ってタブー化されてるような気もするし、それを考えることが未熟すぎる日本人の個人主義観を補完するのではないかと思う。日本には偽個人主義者が多い。大方「自分は個人主義者だ」と言いふらすことで、個人主義者になろうとするタイプ、それはただ周りの人間に依存しているだけにすぎない。そのくせ周りの人間の不幸に無関心で、自己責任だとか言ったりする。そして自分が不幸になった時に、自己責任につぶされる。つまり自立してない。
自立しないことへの言及がここまで激しいのは、おそらく筆者自身が昔そうだったからなのではないかなと、ちらちら感じる。その「いいようもないくらい堕落した期間」が、おそらく彼の人生の中で最も重要な時間だったに違いない。だから切り口は面白いけど、少々感情的ではないかと思うこともある。そしてマスメディア的な情報を批判しながら、結局マスメディア的な情報に頼って社会問題を認識していると点も引っかかるところ。
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「頑張って」という言葉が英語にもフランス語にもスペイン語にも翻訳できないとは知らなかった。
ここのところ、「普通」「頑張る」といった言葉に疑問を持っていたけれど、
本書を読んで、自分が疑問を抱いた理由、
そして言葉の曖昧さ、難しさを再認識することができた。
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本当に恋愛をしている人間はいるのだろうか?
格差と言ってはいるものの、格差があるとかそういうことじゃなくて、むしろ種類が出てきたとか、今までの既成概念だけではとらえることが不可能になってきたとかそういうことがいいたのではないか?
個人的に、キーワードだと思ったのは、自分自身の自立だと思う。先日読んだ著書の本を読んでもそうだが、それこそが今後の社会を生きていくためのキーワードではなかろうか?ただ、安易にその言葉に飛びついてはいけない、ということも重要である。
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恋愛の格差が書かれているというより、日本の世情や時事問題を含めながら恋愛についてを語っている本という気がした。
確かに、恋愛をする条件は昔より厳しくなっているのに、マスメディアは恋人がいないことが寂しいことのように駆り立てていることも有り得る。
個人的に印象に残ったのは「頑張って」という言葉が英語にもフランス語にもスペイン語にも翻訳出来ないということ。よく人に使ってしまいがちだと思う。理由としては、当たり障りのない励ましの言葉だから。同じ状況でも相手の立場に立って「頑張って」ではない言葉が言える人は素敵かもしれない。
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【はじめに 抜粋】
今の「人並みの暮らし」とは具体的にどんな暮らしなのだろうか。この本は、格差について書かれているが、格差を言い立てて、不安を煽るのが目的では無い。現代日本の「格差を伴った多様性」の中で、恋愛の可能性について書かれたものだ。
確かに、恋愛について書かれたエッセイ集ではありますが、こちらに読後植え付けられるのは様々な意味での危機感です。特に男性陣はこの本から与えられる危機感は大きいんじゃないかなぁ。
主に女性に向けて書かれているであろう文章は、時に男性の僕も共感できました。
結婚していない30代の女性に、結婚していない理由を尋ねると結婚した友人が幸せそうに見えないからだという答えが多い。とか。
しかし、現代に根付いてしまったこの格差という言葉は嫌ですね。でも、実感としても非常に強い言葉でもありますが・・・。
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恋愛・結婚を日本経済の今から考察した本。経済と両者が密接に関係しているからであり、実際そう思う。昔と今は恋愛と結婚の形が違う。特に恋愛、結婚をしなくても、と自由な選択が許される時代になったが、それは個人の自由度があがったというより、恋愛・結婚が不合理になったからだという。昔と違い結婚=幸せではなくなった。
恋愛も、選ぶべき人=高収入高身長高学歴ではなくなった。つまり何が幸せか分かりにくい時代になったということ。ただそれが本来あるべき姿なのかと自分は思う。そして最後に、家族は自立した人間達で構成されるのが良いのではないかと氏は書いていた。お互いが依存の関係にあるのは不健康である。今の不安定な時勢に何かに依存するのはリスクが大きい。親であっても、恋人であっても、彼らが明日どうなるかは分からないからだ。だから自立しているほうが、関係はいいし、よりサバイバルできる関係でいられるのだろう。お互いに助け合う関係が合理的関係。そして今は合理的な関係でなければ関係性は続けられない。
恋愛や結婚といったエモーショナルな事柄に客観的かつ合理的な側面で考察できた良い本だった。
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恋愛というより経済格差の方にテーマが向かっているが、内容は変わらず素晴らしい。
日本語の難しさ、過去と比較した現在の恋愛・生き方の在り方、引きこもりやフリーター・親と同居する人々の危険性など刊行されてから随分立つのについ最近書かれた様な新鮮さと瑞々しさがある。
村上龍が『普通』の恋愛のエッセイを書くわけがない。
彼が言うように、普通なんて言葉は様々な意味が含まれ、立場に寄って意味はまったく変わるからだ。
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さすが村上龍のエッセイだと思った。単なるハウツー本でもなく、社会情勢などもからめながら、しかし専門書っぽくなりすぎないところにらしさが感じられる。