紙の本
知ることは諦めることですか?
2004/09/02 08:34
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投稿者:植田那美 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は2004年4月に開始され同年9月現在なお続いているファルージャの虐殺をめぐる事実の記録である。日本の主要メディアが行っていることがファルージャを米国の民間人4名の遺体が蹂躙された土地、すなわち住民に対する米軍の報復も正当化されるテロリストの巣窟としてのみ私たちの記憶に留めようとすることなら、本書に関わるすべての人々が証言しようとしているものは「テロとの戦い」という名のもとで突然に、あるいは緩慢に殺されていくイラクのごく普通の人たちの肉声だ。
ブッシュの戦争を支える米国の大メディアに対する弾劾でもあるドキュメンタリー映画「華氏911」には、イラクで息子を亡くしたライラという名の米国人の母親が出演し、その反戦運動とともに全米で話題を呼んでいるという。が、作中においては、私の最も聞きたかった言葉が彼女の口から発せられることは最後までなかった。米国の「敵」であるイラクの人々もまた、誰かの息子であり娘であるという当たり前の事実、つまり彼らに対する共感、が。
「アメリカ人は死者たちをこぎれいな棺に入れ国旗で覆う。対して私たちは、死者たちの断片を床からかき集めなければならないのだ。そしてアメリカの銃弾が、愛する人の遺体を誰だかわからないほどめちゃめちゃにしていませんようにと願うのだ…。」
私たちの想像力が国境によって断ち切られてしまう限り、イラクで、パレスチナで、アフガニスタンで、チェチェンで殺されていく人々は「テロリスト」と呼ばれ、彼らの主張は「プロパガンダ」と言われ続けることだろう。まるで、アメリカの経済制裁によって62万人ものイラクの幼児が死んでしまったこともまた、サダムの「プロパガンダ」だった、とでもいうように。
本書が「ファルージャ 2004年4月」なら、読者に問われているのはここに描かれていない「2004年4月以前」と「2004年5月以降」を正視できるか否かであると思う。そうした意味では、ファルージャはごくありふれた、しかし私たちの目からは巧妙に隠されている無数のゾーンの一例にすぎない。いつか、イラクで起こっていることが独立戦争であったと歴史に記されるときが必ず来るだろう。知ることはつらいかもしれない。だが、「イラクで不足していないわずかなものの一つ、それが尊厳なのである」と言い切る本書には、真実から目を逸らし続けていては決して得られない本当の希望がある。
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4月のファルージャに入った英米の人たちのレポート。私は共訳者のひとり。※この書籍についての私のアカウントのamazon.co.jpアソシエイトのキックバックは、全額、イラクの医療援助活動に寄付しています。
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amazonの古本で1円で購入した。
(したら、なんと高遠菜穂子さんの「命に国境はない イラク人に代わって 菜穂子」というサイン入りだった! ほんまもんかな・・・? 高遠菜穂子さんとは、ファルージャで虐殺が行われているとき、サラヤ・ムジャヒディーンと名乗るグループに拉致された日本人三人のうちの一人の方)
この本には、米軍が行った虐殺の実態が有り体に書かれている。まさに自分の命を投げ打って活動をした四人の活動家の記録だ。
胸に大きな穴が空いている人、喉をナイフでかき切られている人、クラスター爆弾で全身大火傷を覆っている人、腕がちぎれて溢れるように血が流れている人、そして電気が止められていて、薬品もないそんな地獄のような街を、襲撃を受けながら車で奔走し、負傷者や遺体を収容するのだ。
弾が飛んでくる方向に向かって、拡声器で「怪我人を運ぶんだ、撃たないでくれ。」と言いながら、両手を挙げながら前に向かっていく。そんなこと、誰ができるというんだろう。
以前読んだ本に書かれていたことを思い出した。彼らには、きっとそんな使命を持って生まれてきた人で、特別な人たちなんだと思う。そしてそれが活字になった限り、それは伝えられていくべきものになったのだ。だから、それを眼にした人は、周りに伝えていかなかればならないと思う。
この書物のP199より引用する。
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・・・とりあえず日本に暮らして最低限の収入を得ているならば、何ごとも起きていないかのように「日常」生活を送って、ひっそりと下を向いて、できるだけ世界を見ないようし、「都合の悪い」ことに耳を傾けないようにし、自分が生きているうちに自分の番にならないように心の中で祈るだけにしていたくなる。
けれども、こんな時だからこそ、キング牧師の次のような言葉を、改めて思い起こそう。「後世に残るこの世界最大の悲劇は、悪しき人の暴言や暴力ではなく、善意の人の沈黙と無関心だ」
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東日本大震災後、救援の為に「トモダチ作戦」に従事したアメリカ
軍兵士の中に、健康を害した人たちがいる。小泉純一郎元首相は、
彼らを思い涙を流し「トモダチ基金」を設立した。
首相在任中、原発の安全神話を信じて推進して来たことを反省
するのであれば、アメリカのイラク戦争をどの国よりも早く、無条件で
支持したことも反省すべきなのではないか。
サダム・フセインを権力の座から引きずりおろしたイラクは、イラク国民
の手に委ねられたのではなかった。亡命イラク人を政府のトップに据え
て、アメリカの思い通りになるような国に作り替えようとした。
イラクの人々は新たな独裁者を求めたのではない。自分たちの政府を
求めたのだ。だから、アメリカ軍の占領への不満が高まった。
その不満のひとつの表れが2004年4月にファルージャで起きた。アメリカ
の民間軍事会社の傭兵4人が何者かに殺害された。多分、日本国内で
は「民間人」と報道されたと記憶する。
正規の兵士と傭兵と。きっと見分けはつかなかたのだろう。しかし、この
殺害事件はアメリカ軍の復讐心に火をつけた。その復讐心はかなり
間違った方向へ向かったのだが。
ファルージャを包囲し、クラスター爆弾で空爆し、人権を無視した家宅捜
索を行う。武器も持たぬ女性や子供、老人に暴力を振るうのみならず、
狙撃手は容赦なく銃撃する。それも背後から。
怪我をして道に倒れている人の喉を掻き切り、病院を爆撃し、モスクに
土足で踏み込み、ファルージャの人々を「ウジ虫野郎」とさえ呼ぶ。
本書はファルージャで何が起きていたかを目撃した海外ジャーナリストや
イラクの人たちへの人道支援の為にファルージャ入りした活動家の証言
で構成されている。
これは「テロとの戦い」などではない。アメリカ軍によるイラク民間人の
虐殺である。
「自分たちの酷的達成の為にまったく関係のない市民、国民を虐殺して
平然としている」のがテロリストだと小泉元首相は言う。そうであるならば、
アメリカ軍がファルージャで行ったことは正にテロ行為ではなかったか。
小泉純一郎さん、あなたはこの現実を知っていましたか?何百人もの罪
なきファルージャの人々が殺害された現実に、流す涙は持ち合わせて
いませんか?
いや、元首相ひとりだけではないんだよね。イラクに派遣されたアメリカ
海兵隊の多くは沖縄の基地から飛んでいるんだ。直接イラクの人たちに
銃口を向けたのではないけれど、日本はアメリカの戦争に協力している
時点で加害者なんだよね。
日本政府は当てにならないけれど、アメリカの正義を懐疑的に考える
ことをしなくてはいけないと思うわ。失われた命は戻らないけれどね。