紙の本
「戦争は悲惨だ」という言葉を使わずに戦争の悲惨さを説く書
2004/11/27 10:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界中の紛争を長年にわたって報道してきたピューリッツァ賞受賞記者クリス・ヘッジズによる「What Every Person Should Know About WAR」の日本語版。437のQ&Aで戦争の真の姿を炙り出そうという著作です。
最初の問いは「戦争とはなんですか?」という至ってシンプルなものです。正解を読む前に私なりに答について考えを巡らせてみましたが、“国家と国家が兵器を用いて云々…”というところで詰まってしまいました。しかし本書の答は、問い同様にシンプルなものです。
「1000人以上の命が奪われる激しい紛争と定義されている。」
本書はことほど左様に各問いに対して上記のような百科事典風定義をはじめとして極めて冷静な説明文が続きます。
たとえば、調査統計資料風の文章:
「体のどの部位を負傷する可能性が高いか」
→「すべての負傷の40%が爪先から太腿までの怪我」
もしくは訓練マニュアル形式の文章:
「劣化ウラン汚染の回避方法は?」
→「破壊された戦車の清掃や砲弾の撤去を命じられたら化学防護服を着ること」
はてはテレビ・ゲームのルール教則本のような文章:
「攻撃目標にしてはいけない建物は?」
→「教会や学校、病院や歴史的建造物」
本書には拳を振り上げながら声高に戦争反対を叫ぶ文章も、軍事力増強の重要性を説く文章もありません。ひたすら淡々とした筆致で戦争というものを437の多面体として捉える作業が続くのです。
しかし不思議なことに、戦争を「説明する」文章を通読していると私はあたかも苛烈な戦場の渦中にいるかのようなうすら寒さをおぼえたのです。耳をかすめる弾丸。すぐそばで負傷のうめき声をあげる仲間。敵側の砲弾が着地した辺りから立ち上る硝煙。泥と汗と血の臭い。
いかに淡々と説明しようとも戦争というものが人間性を瞬く間に破壊してしまう狂気に満ちた行為であることは覆い隠しようもないのです。そのことに改めて気づかされる実に巧妙な構成をもった書物だといえます。
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「戦争を知ることは、われわれの暴力性、残虐性と向き合うことである。私たちは戦争にまつわるロマンティックなイメージを信じ込むのではなく、そこで起きていることの真実を知る必要がある。それは自分たちが戦場に送り込む者たちに強いている犠牲を、はっきりと意識することでもある。民主主義の世界では、有権者は戦争の正確な代価を把握していなければならない。」
(本書前書きより)
結局上の文章に尽きる一冊である。事実を淡々と述べていく文体は冷徹ですらある。昨今、9条を中心とする憲法改正の気運が高まる中で、「世界平和」とか「国際貢献」などの美辞麗句に覆い隠された戦争の実態を改憲以前に国民は認識しなければならないだろう。「戦争」を「有事」などという言葉で誤魔化しているこの国にあって、過去の戦争体験を無視して「世界の一流国になる」あるいは「世界から尊敬される国になる」というだけの理由で改憲を議論するのは危険な兆候である。
以下、気になった「事柄」をいくつか挙げる。
17.2003年度のアメリカの労働人口に軍及び国防産業従事者が占める割合は3.5パーセント。
35.軍隊に入る理由として多いものは「教育費を得るため(三割)」や「職業訓練を受けるため(三割)」。
73.多くの黒人は軍隊を専門職を身につけるところだと考えている。黒人が管理支援業務につく割合は白人の2.5倍。
75.WW?中、アメリカには「愛国的義務」として軍人とセックスをする「ヴィクトリーガールズ」がいた。
119.アメリカ軍兵士が売春の斡旋をしていることが多くの国で事実として認められている。
140.大規模な戦争で歩兵として戦う場合、負傷または死ぬ可能性は25パーセント。
174.負傷の大部分(65パーセント@WW?)は砲撃による。
305。ヴェトナム戦争では600人以上の士官が部下によって殺され、さらに1400人の士官が不可解な死を遂げた。二つを足すとヴェトナムで死んだ士官の25パーセントが部下によって殺されたことになる。
306.誤射の犠牲者は20世紀のアメリカ軍死傷者の15パーセントに上るとも言われている。
318.湾岸戦争中、空軍パイロットの57パーセントが一度は興奮剤を使用した。
414.01年の調査によれば、59歳〜89歳のWW?及び朝鮮戦争の復員軍人の19パーセントが戦争経験と関係のある顕著な精神的苦痛を抱えている。
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戦争に対する、数値的な現実を知るのにとても役立った。
アメリカ人が書いているので、アメリカ軍を参考にしたデータが多い。
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一般人の戦争に対する疑問点に対して、淡々と(アメリカ軍の視点より)答えている。
軍隊内の階級が同じ男女同士では合意に基づくセックスが認められている、拷問で得た情報は当てにならないなどのマニアックな情報から、戦闘における人間の心理状況、性行為に対する意識の変化など多彩な描写がある。
読んでいて、知らなかったことばかりで面白い。
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戦争に関するFAQとして網羅的で解答も容赦が無いが、目線が完全にアメリカのものなので真実といいながら一面しか見えない。
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イメージでは伝わりづらい戦争の現実を
データと実例で解説してある本。
テレビや映画では見えてこない
本当の戦争の現状をしることができる
貴重な一冊ではないでしょうか。
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戦争とは1,000人以上の命が奪われる激しい紛争と定義。
アメリカ軍でホモで除隊されたのが3,000人くらいいるそうだ。
戦争ではレイプは頻繁に行われ、戦争犯罪とみなされているが、ほかの犯罪ほど重大視されていない。
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戦争に関するいろんなデータが出されるんだが、統計基準も引用方法もとりあえずこの日本語版にはまともに例示されてないし、一応唾付けながら読むしかない
やや疑問に思えるデータもいくつか出てくる
一応従軍記者だが兵隊の経験もないわりには、まるで自身の戦争の経験から語るような踏み込みすぎた発言もある
それでも、おそらく真面目に取材を繰り返して資料を読み込んだのだろうと仮定して、それなりに評価します
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徴兵制ではないし言論の自由、人権尊重(訴訟社会、司法市民参加、市民の武装権の確保)あるから待遇は恐らく (サウジアラビアなど産油国は別にして) 世界一良い(一人当たりGDPも高いから武器装備も高級)アメリカ合衆国軍であっても平時でもブラック企業より下、海外戦場に派遣されると恐怖にかられる最前線以外は闇雲にセックスを娯楽にしなければならないほど悲惨であるらしい、ただ90年代の湾岸戦争からはドラッグ使用は改善されたという。歩兵で従軍する場合、死亡か快復不能になる率はざっと20%それ以外の10倍。歩兵は消耗品…
(10年前)中国の兵力は世界一で240万、アメリカが140万、インド130万、北朝鮮100万、ロシア90万(日本の自衛隊20万)…全世界で2億1300万の将兵がいる。独裁軍事権力の中国がもっとも恐ろしいが、国民党との内戦は70年以上の昔、《社会主義の大義》も色褪せた今世紀、大規模な正規軍同士の衝突は無いと思いたい。
戦闘中の給料(月150ドル割増)、捕虜になった場合の給料(払われる)、部下による上官殺害(ベトナムで死んだ士官の20〜25%が下士官に殺された)、外国籍の米兵(140万人中3.7万人)、味方の誤射(20世紀の米軍死者の15%、湾岸戦争で失われた全戦闘車両の77%)とか。「自分が違法だと判断するような命令を上官から受けたら?」に対する回答は「実行を拒否しなければならない」。著者は戦場経験豊富なニューヨーク・タイムズ記者。
「核保有国からの脅迫に、核武装以外で対抗できるか?」「七十年以上前の恨みを訴える国は、侵略の前段階ではないか。現に総連ビルは差し押さえ、公開入札ののちも明け渡されていない」「大韓民国には平和憲法があるのか?北朝鮮になすがままにされて。その余波が日本にも」などが日本の問題と言えましょうか。
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レビュー書いたのに消えてる。今更書く気しないけど…
戦場における生々しさが書かれた本というのも多くあると思うけれど、この本が初めてだったかもしれない。興味深く読んだ半面、割と興味ないことも多く書かれていて飛ばし読みした。
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借りたもの。
アメリカが関わった“戦争”について、Q&A形式で解説してゆく。
数字、データという形で淡々と解説される。
書き手の政治思考や、ドラマチックな要素は極力そがれた文体は、他に見ないものだと思う。
軍隊の維持に必要な費用(国防費はGDPの3~6%!)、戦争にかかるお金の話まで。アメリカの軍需産業にどういったものがあるのかも言及されていて、断片的であるが、どの情報も興味深い。
報道で見る戦争の映像、戦争映画で感じ取るもの、帰還者・生存者や巻き込まれた民間人たちの体験談とは異なる、“客観的”なデータとして受け止められる。感情論にならないこと――冷酷とも受け止められるような――が、日本の戦後教育――反戦教育?――には見られない、語られない部分を映す。
軍隊という組織内部の疑問。
アメリカ志願兵の動機の内訳、人生設計、軍内部での人種差別問題の比率…さらには女性兵士(陸上戦闘兵科に加わることはできないらしい)や従軍する女性“ヴィクトリー・ガールズ”の存在なども記されていた。
戦場で兵士が置かれる状態。
戦闘中だと給与が割増しになったり、無税になるとか。
食糧事情や衛生面、お手洗い事情も。……有事である以上、前線で任務をこなしているときは劣悪になるとは思うが。
やはり著者がジャーナリスト故か。メディアの戦争報道についての問題は「必ずしも信用はできない」とぼかす。取り上げたものには、敵勢力への情報戦の一端を担うことにもなりうるという、自負を感じさせた。
負傷するという事と死の恐怖。
現代兵器とまた感覚が変わるものもあると思うが…スペイン内乱で狙撃を受けた兵士の体験記の引用は生々しい。衝撃を受けた後の虚無感。陸の被弾による失血死、海空の密閉された空間での火傷の恐怖。
また、近現代兵器の爆弾の威力とそれで想定される死について。手榴弾、地雷について等。
大量破壊兵器について。
野上武志『まりんこゆみ(6)』( https://booklog.jp/item/1/4063695573 ) でABCって言われていたものはNBC( 核・生物・化学兵器 )となっていた……
現在、核兵器は“戦略兵器”であって“戦術兵器”として「使われる可能性はまずない」(p.106)との事……
それとは別に、汚い爆弾(通常爆弾を放射性物質でくるんだもの)という存在……こちらは意外と日本では認知されていないのでは?
戦闘中に体験すること。
S&TOUTCOMES『民間人のための戦場行動マニュアル』( https://booklog.jp/item/1/4416519354 )にあったような状況の話や、具体的な行動の話は乏しい……どちらかと言うと、PTSDに関する疑問や、道徳的なもの、罪悪感についての質問が多かった。
その次の捕虜について。
No.328 捕虜になった場合の心得について、‘姓名、階級、生年月日、社会保障番号以外の情報を明かしてはならない(p.158)'は、OVA『マクロス ゼロ』( https://booklog.jp/item/1/B0017T3PX2 )でもあった描写……
レイプに関しては……もう読んでいて辛い。しかし、現実として起こり、長い歴史の中で黙認され続けた犯罪行為。
兵士の死と死後の保証について。
アメリカの制度に関してが��心だが、「戦死者への敬意」を感じる……
戦闘の興奮状態故か、性衝動の事、帰還後のコンプレックスの話も紹介されていた。
C・ダグラス・ラミス『要石:沖縄と憲法9条』( https://booklog.jp/item/1/4794967543 )にて紹介されていた本。