紙の本
本でなければ表現できず、かつ発想豊かな作品です
2006/01/15 16:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は、英国で世界幻想文学大賞を受賞した作品です。
昔、シドニー・シェルダンの翻訳で有名に成った、翻訳家が訳した文章を作家が言葉使い等を、直す、”超訳”(そう、その当時は呼んでいた)
です。
最終の直し、仕上げ、の部分は山尾悠子さんが行っています。
(ところが、この超訳を本の雑誌の特命座談会で翻訳エンターの編集者たちは 翻訳分野を確実に荒らしたと、語っていました。)
他人の夢を聞いているような作品で、
全く荒唐無稽で、とり止めもない作品ですが、
そのセンスの良さと、言語感覚で、きっちり成立して纏まってます。
独裁者の頭の中に存在するといわれる、理想形態市(well buit cityと呼ばれています)
のお話しで、
その独裁者に頭痛が起こると、その理想形態市内各所で、爆発
が起きたりします。(ここは、思わず失笑)
主人公は、顔(体も見ますが)をみただけ、全てがわかる
”観相官”です。
美薬という薬(幻覚作用かなりあり)の依存症になっています。
面白くするためのエンターティメントとしての、要素もきっちり含んでいて、
第一部は、白い果実を盗んだ犯人探し
第二部は、監獄、獄中物 若しくは、高倉健さん等の、鉱山物、
第三部は、政権転覆の、革命物です。(ちょっとちがうか!?)
ラストは、恋愛物!?、になっています。
本作「白い果実」は、三部作の第一作目にあたるそうで、
英語圏では、もう三冊とも出版に成っているとか。
どんなことでも、妄想のまま書けて表現出来てしまう
小説と言う表現分野に、乾杯ですな。
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なかなかの傑作だと思います。さすがは世界幻想文学賞受賞作品。
http://www.denen.com/blog/mt-search.cgi?IncludeBlogs=1&search=%E7%99%BD%E3%81%84%E6%9E%9C%E5%AE%9F
続きが楽しみです。
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なんだろうこの想像力。予想外の出来事と独特の世界観、駄目すぎる人達に心躍ります。ヤク中の(登場人物の)考えることはさっぱりわからんけど続きがたのしみ。話の筋は忘れても革手袋は覚えてると思う
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ふと内容を思い出すとワクワク冒険ファンタジーですが、山尾悠子の圧倒的な力によってそれ以上のものに仕上がっています。「世界は言葉で作られる」とはよく言ったものです。
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白い果実を求める人々、空想とも現実ともいえるような世界で「観相学」を操り、それを高貴な術として人々の上に立つ者。導入部分から少しずつ理解するたびにまるで麻薬を吸っているような感覚で引き込まれていく。主人公の嗜好品のように。胸が締め付けられるような緊張感と、希にあるはずれた笑いとが絶妙なバランスで介在している。幻想文学の傑作である。
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朝日新聞の広告で見かけて購入した本。
白い果実を求める人々と、空想とも現実ともいえるような世界で「観相学」(顔の長さや骨格などで人を分析する学問)を操り、それを高貴な術として人々の上に立つ自己中な主人公の物語。
導入部分から少しずつ理解するたびに、本の世界に引き込まれていく。緊張感と、希にあるはずれた笑いとが絶妙なバランスで面白い。幻想文学の傑作だと思う。
『白』い物を求め続ける人間の醜さなどが描かれている所は、『白鯨』と似たところがあると思った。
3部作らしいので、時間のあるときにまた読んでみようかな。
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すごく面白かったです。読んで本当によかった。
評判良いのもうなずける感じでした。
ジェフリー・フォード注目していきたい。
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悪夢のような理想形態都市を支配する独裁者の命令を受け、観相官クレイは盗まれた奇跡の白い果実を捜すため属領アナマソビアへと赴く。待ち受けるものは青い鉱石と化す鉱夫たち、奇怪な神を祀る聖教会、そして僻地の町でただひとり観相学を学ぶ美しい娘…世界幻想文学大賞受賞の話題作を山尾悠子の翻訳でおくる。
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世界観が素晴らしいですね。山尾さん文体の魅力と上手く融合して酩酊するように物語に引き込まれてしまいます。暴力的でグロテスクなシーンもあるものの、それすらどこか鉱石のように生々しさとは一線を引かれており、後を引く不快さはなかったです。3部作の1作目ということで、金原氏いわくの「最終巻の見事な仕掛け」がとても気になります。
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後半「AKIRA」みたいな展開に、
驚く。第2部「記憶の書」は、
丸くなった主人公と、アクションシーン
の増加で、駄作に。
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翻訳をさらに、山尾悠子が書き直しているという理由で購入。
高慢なクレイが艱難辛苦を乗り越えて、穏やかな人に変わるあたりは童話的。
ビロウはまだ生きているよう・・・。
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3部作の1作目。最低な主人公が話が進むにつれてどんどん良い人になっていきます。
ウッド(犬)との愛に涙。
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1997年世界幻想文学大賞受賞作。
20世紀の最後を飾る奇書とは訳者の弁。2004年8月発行。
翻訳は山尾悠子・金原端人・谷垣暁美の3人がかり。
古典を読むような文章にやや戸惑ったが、もとの味わいを出そうと苦心したらしい。
理想形態市(ウェルビルトシティ)は、独裁者ドラクトン・ビロウが築いたクリスタルとピンクの珊瑚で出来た街。
主人公のクレイは一級観相官。四輪馬車の迎えに乗り、北方の属領にある鉱山の町・アナマソビアへ出立する。
アナマソビアはブルースパイアの発掘が行われ、青い粉を吸い込んだ鉱夫はいずれ青く染まってブルースパイアと化す。
観相が異常に発達している時代で、幼女が人狼であることを見抜いた功績もあるクレイ。
「白い果実」の盗難をめぐって、アナマソビアへ派遣されたのは左遷に近い。美しい娘アーラに出会って助手とするが滞在中に一時知識を失い、美薬という麻薬中毒も相まってとんでもない事態を引き起こし、流刑へ。
旅人と呼ばれる人間ではないミイラの真実は?楽園とは?
カフカの城とか…いろいろ思い出します。
独裁と暴力と血と苦難と革命と…感情移入は出来ないが、架空世界を作りげたパワーは買います。
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幻想的であり、そしてなにより寓話的である。カフカの小説を彷彿とさせないではいられない小説だと思う。例えば「流刑地にて」のような作品。本全体を、罪、という基調が覆っているように感じてしまう。
一方で、物語は後半に向けて勢いを増し、トールキンの「指輪物語」のような様相を呈してくる。と思ったら、ナントこれは三部作の第一部だという。なるほど、そういうエンターテイメントの香りがするなあと思っていたのは当然だったのだ。
しかし、やはりなんと言ってもカフカである。この寓話の箴言は何なのだろう、と考えずにはいられないのだ。自然を思いのままに作り変える(ことができていると信じる)人類への警鐘か。あるいはマネーという実態のないものに振り回されることへの意趣の表れか。単なるエンターテイメントを越えた何かが魔物のように言葉の裏に潜んでいるように思うのである。
人は何かを読み取られずにはいられない。村上春樹の新作を読んだ直後であったことも影響してか、そんなことを考えずにはいられないのである。例えば、タイトルにある「白い果実」。少なくともこの第一部ではそれは明らかにシンボルではあるけれども、何か象徴的な意味を明確に示すようではない。単純に言えば、それがよきものであるのか、あしきものであるのかすら、判然とはしない。あるいは、それは「指輪」のような存在なのかも知れない。もちろん、何かが隠されている気配は濃厚である。その寓意は第二部、三部を読まなければ見えてこないものなのだろうと思う。
この気配から感じ取ることのできる仕掛けのようなものは、トールキンを持ちだすまでもなく、例えば「スターウォーズ」にも共通するような王道であるように思う。つまり、この物語には語られていない過去がある。その予感はたっぷりとする。だとすると、それを読まずにはいられないと思い始めるのだけれど、この一部の読者に偏愛を生むような物語の完結編は、はたしてこの翻訳陣で再び翻訳されているのだろうか、それが気になる(と思ったら、やっぱり)。
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幻想文学というのはこうでなくっちゃ。というほど語られる世界観が素晴らしく悪に満ちていて美しい。独自の神を崇めるさびれた鉱山の村、ピアノを弾く猿のいる厳しい流刑の島、神の奇跡を起こす独裁者の治める都市、と次々に舞台を変えつつも、常に痛みと虚無感とを湛え、タイムパラドックスや楽園願望やメタのエッセンスも織り交ぜた贅沢さ。細部に至るまでがっちりと構築され、ページの間にどっぷりと遊べる濃密な時間。流麗な訳文、装丁も含めて大ヒット。何よりあと2冊続刊という「物語の途中」をまだまだ楽しめるのが嬉しい。心の本棚の、特別な場所に置くことが決まった本。