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紙の本

ブコウスキーをしびれさせた小説『塵に訊け!』を残した父ジョン・ファンテを仰ぎ、確かにそれを乗り越えていくと感じさせられる力作。しみるブルースのような味わい。

2004/11/02 10:57

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 作家が小説を書くに当たり、自分が属する社会をどう捉えるか、そこにうごめく人間たちをどう書けるものかといった問いかけは、それらがテーマ自体ではないにしても避けては通れない意識だと思う。歴史に舞台を取るにしても、寓話やファンタジーでここにはない虚構世界を構築していくにしても、現実世界をどう把握するか社会観あってこその創作というものだろう(それがないとまずくはないか)。
 数は読んでいないが、米国の現代作家たちの本の情報を見ていると、彼らはとりわけ「米国」という巨体を独自の視点で捉えることに腐心しているように感じられる。とりわけ東西の壁が消失した90年代以降は、政府の帝国主義的な拡大志向のあり方、その先に待ち構えていたテロリズムという敵をめぐっての姿勢が射程に入れられている。そのようなマクロ的視点とともに、自分を投影した人物を使って、家族や民族のアイデンティティを確認するようなミクロ的視野に重きを置く作家も多数いる。いかにも人種や移民をめぐってトラブルの絶えない国にふさわしく……。

 ダン・ファンテのこの作品は、どん底から這い上がった自分のことを書いておこう、這い上がるきっかけにもなった作家であった父親ジョン・ファンテのことも書いておこうという自伝的小説である。
 ブルーノ・ダンテなる人物が「俺は」と一人称で語り始めていく。アルコール依存症、それゆえ精神異常とも取れる事件を起こしてしまったから専門病院に入院させられ、そこから出てきたばかりなのだ。しかし、治療期間のせっかくの断酒もむなしく、愛の消えた自身の結婚生活や、魂を売って成功を得たとしか思えない映画人の父親の危篤という現実を前に、度を超えた飲酒の習慣がまた繰り返される。
 家族の訴追を避けるため、弟の車と妻のクレジットカードを持ち出し、父親の飼っていた老犬を連れ出し、居を定めずに行き当たりばったりの暮らしに入る。廃人同様の男性の私小説ではあるのだが、自分と回りにうごめく人物たちの挿話を書いていくことで、帝国主義という米国の表立った大きな病理とは異なる、別の大きな病理を浮き彫りにして見せてくれる。

 それは、社会の体制や風潮と微妙に呼び合うものなのか、個人レベルの鬱屈した生活というものがあり、閉塞感をまぎらわすためにアルコールやドラッグに救いを求める人びとが多いという事実だ。本が始まって数ページで、ダンテと同じ病院に収容されていた男性の過激な挿話が書かれている。正体を失うほど酔って帰宅し、妻のベッドと間違えて娘のベッドにもぐり込んだ彼がどのような悲劇に見舞われたのか。また本の後半には、所謂「勝ち組」として成功を収めている男性が登場するのだが、彼が何に頼って日々をやり過ごしているのか。
 いずれも作者が実社会で見聞きしたことを多少加工して描いた暗部とはいえ、そこにいる人びとが銃器や刃物を手にしたとき、犯罪がいかに容易に起こり得るものであるかがよく伝わってくる。だから、この小説はごく私的な心の彷徨を書き留めたものでありながら、米国という厚い面の皮の、まさにその生皮をべろりと剥いでしまったようにも読める。
 では、薄気味悪い内容、胸糞(失礼)が悪くなる話なのかといえば、決してそうではない。主人公が重きを感じて選び取る選択肢には、確かなブライドが宿っている。彼が読む本、老犬に誇りをもたせる世話の仕方、そして自分が成すべき仕事——どれにも胸すくものがあるのだ。
 

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2004/11/04 16:33

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2012/07/05 21:47

投稿元:ブクログ

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2014/10/13 13:32

投稿元:ブクログ

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