紙の本
凡百、ご都合主義というのがこれほどに当て嵌る作品もないのではないでしょうか。私は、この作品ともう一作で乱歩賞に決別しました。時代はメフィストでしょ・・・
2006/05/04 20:40
9人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《25歳のとき、誤って人を殺してしまった三上純一は、刑期を終えて出所し、両親と暮らし始めた。その刑務所の首席矯正処遇官の南郷から、十年前の殺人事件を調べる協力の要請が》江戸川乱歩賞受賞作。当サイトでの評価のあまりの高さに、正直、ボーゼン、っていう状態です。
あれって、あんまりだよな、と言うのが友人の第一行でした。あれってのは、これのことで、メールだから第一声じゃあなくて「第一行」、まあ受けを狙う文章の書き出しは、あざとくなっていけないね。実は、この本を読んだ時、仙台の友人に感想メールを入れたら、偶然、彼女もこの本を読んでいて、その返信メールが、冒頭のことばにつながって、これで文章はウロボロスですねえ。
それは、奇しくも純一が十年前に彼女と家出をした千葉県中湊で起きた殺人事件でした。犯人とされる樹原亮は既に死刑の判決を受けていますが、肝心の事件当時の記憶を失っているせいで、反省をすることができません。そのせいで「改悛の情が無い」と判断され、情状酌量の対象にもならず、度重なる抗告も退けられ、刑執行の日が近付いている、そういう設定です。
その亮が、最後の瞬間になって思い出したのが「階段」のイメージでした。無論、何処にあったものか、いつ見たものかは全く分らないのです。今まで、数多くの死刑の執行に立ち会ってきた南郷は、樹原のその一言を信じます。そして自分の家庭の崩壊を前に職を辞し、刑務所で知り合った純一と共に、樹原の事件真相の解明に乗り出すのです。
純一が起こしてしまった傷害致死事件のもたらした波紋、高校を中退せざるを得なくなり、今は家を出ている弟。損害賠償のために家を売り払い、それでも返済に追われる両親。彼を許そうとしない被害者の父親。罪とは何か、罰はどのようにあるべきか、死刑の持つ意味は。根の深い問題を推理小説の形で問い掛けます。
純一がなぜ、見知らぬ事件の容疑者の救済に立ち上がったのか、最後に明かされる真実は、これぞご都合主義の見本、話の運びもわざとらしさが目立って、それが私の友人のメールになったのです。それは私の感想でもあります。少なくともこれで、ご都合主義の二重唱です、この声よ、天まで、乱歩賞審査員まで届け!ま、それにしても何でこの小説に★五つつけるかな?
乃南アサ『晩鐘』の深さと読み比べてみなさい。犯罪のその後を描くというのは、ここまで来なければならないというお手本でしょう。それに比べれば、高野の受賞作、取り上げる問題の割に、技巧の荒さが目立って全体に深みに欠けます。一気に読むことができますけれど、それはこの本に関してはマイナスです。第47回江戸川乱歩賞受賞作ということと、最近、やたら犯罪者に甘い小説が多いので評判はいいようですが、期待し過ぎは禁物でしょう。
読者という13階段の前にいるのは、著者と乱歩賞審査員ではないでしょうか。
紙の本
H26.10.22読了
2014/11/01 08:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:竹匠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
すでに読んでた。二度目の購入。でも、引き込まれて読破。ストーリーの展開には、若干、強引なところがあるが、エンターテイメント小説としては、読み手の心をつかむ。
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犯行時刻の記憶を失った死刑因。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。第47回江戸川乱歩賞受賞作。
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出版社/著者からの内容紹介
宮部みゆき氏絶賛!!! 手強い商売仇を送り出してしまったものです。(本書解説より) 犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
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第47回江戸川乱歩賞に満場一致で選出されたというだけあって、ひさびさに読み応えのある作品でした。
死刑執行が迫る死刑囚は冤罪なのか?
「ある人物」からの依頼で事件を再調査することになる刑務官が選んだパートナーは仮釈放中の青年。
殺人とは、死刑とは、罪とは、贖罪とは、更正とは、裁きとは?
事件の謎以上に難しい謎を痛感する作品です。
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事件当時の記憶のない死刑判決を受けた未決囚を救うため、刑務官と前科者のペアが過去の事件を謎に挑む、非常に丁寧に作られた作品。
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宮部みゆき氏絶賛!!!
手強い商売仇を送り出してしまったものです。(本書解説より)
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200408120000/
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知らなかった世界です
死刑制度・・・凶悪犯は死んで当然と思っていました
しかしその裏に刑を執行する人がいるって考えたことはありませんでした
人一人の命について考えさせられます
あまりにも描写がリアルなので気持ち悪くなる場面もありましたが・・・一読の価値はあります
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江戸川乱歩賞の受賞作ってのはやっぱり楽しめるというか、時間がちゃんと潰せます。
死刑執行の場面は結構気分悪くなった。もっと「深い」と良いのだけど。
楽しめるけど味わいは無い。死刑とか恨みとか作品を作るマテリアルや要素が、あくまで「設定」としてしか伝わって来ない。
そんな感じ。
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テーマは重いです。罪と罰。人が人を裁くこと。日本の刑罰の制度と思想。ちょっとだけ勉強できます。
それでも、一気に読破できてしまう、映画並のストーリーです。
(あ、映画になったんだっけね)
それにしても、宮部みゆきさん。解説おもしろすぎです(笑)
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日本の刑法、刑務所、犯罪者のその後の生活など、かなり詳細な取材によること細かな描出によって、物語にかなりのリアリティーを感じる。社会派であり、尚且つエンターテイメントに仕上がったこの作品が満場一致で乱歩賞を取ったというのには全く頷ける。映像ではこのリアリティーを出すのは難しいだろう。
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「死刑」ちょっと重いテーマだけど、謎解きという部分ですごく読みやすかった。
謎解きが全然分からなかった。最後の方はハラハラでしたよぉ〜。
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冤罪かもしれない死刑囚の方を2人の男性が救い出そうとするお話しなのですが、やたらと面白かったですよ!
死刑制度や、それに対する可か否や、いろいろな矛盾や葛藤が平らかに書かれてるのはすごいです。
しかーも、最後まで犯人とかわからないはずです。うつとりした1冊なのねぇ。オススメ。
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借りて読みました。いつもとはちょい、違うジャンル。
最後に暗くて重い気分にならないよな、とビクビクしつつ読み進めていました(笑)
テーマは非常に重く、いろいろと考えさせられるし、
みんな幸せな大団円で終わるわけでもないのですが。
じゃあ、誰かがやりきれないほど不幸になっているかというと、そうでもなく。
うん、キライじゃないですね。こういうの。
罪とか罰とか、善と悪とか、生と死とか。
人によっては、その辺の価値観が変わってしまうほどの影響を受ける本だと思います。