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この景気回復は本物か? これから何が起こるのか? 10年以上の低迷期を経て日本経済は大きく変わろうとしている。その「変化の胎動」と「復活の前兆」を6つのシーンの切断図で捉え、日本経済の完全復活への足取りを記す。(Amazon.co.jpより)
近年の日本経済の流れを再確認するために図書館で借りてみる。発行年が2004年なので、リーマンショックから始まった金融危機のことは記述されてないが、1990年代のバブル景気崩壊から日本経済復活への前兆として、6つのテーマを断面的に捉えて解説している。これがなかなか興味深かった。概念的・統計的な解説書ではなく、「エピソードで語る日本経済の復活物語」になっていたので、納得のいく企業・市場心理が良かったのだと感じる。
6つのテーマを紹介すると、①景気回復 ②デフレ ③グローバリーゼーション ④IT革命 ⑤名古屋経済 ⑥フリーターとなっている。中でも③グローバリーゼーションと⑤名古屋経済と⑥フリーター問題は2009年の現在でも日本経済低迷の根幹を成すテーマであり、変化していない立ち遅れ感を明確に感じることができた。逆説的に捉えると、この問題をウマく処理できなかったために、金融危機から始まったデフレ経済に飲み込まれてしまったと言ってもいいかもしれない。一都集中経済・輸出依存経済から脱却できなかった結果ということなのだろうか。
また、この6つのテーマが相互に深い関連性を持っているので、ひとつひとつの問題を処理していくという単純な解決方法は見当たらない。テーマのリンク部分に対しては、互いにプラス要因を見出さなければならない、何とも難しい問題をはらんでいるのだと改めて認識してしまう。読んでもテンションは一向に上がらなかったが、近年の日本経済史の蓄積としてはとても教科書的であり、俯瞰的な捉え方をすることができた。経済に興味のある方は、オススメかな。