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紙の本
この滅茶苦茶さを見よ!
2004/10/02 10:51
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投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
山田風太郎の凄さというのはどうも超時空的な普遍性を備えているものらしく、この作品集もそうですが、他の諸作にしても装幀を変え版元を変えて何年かごとに出版されて延々印税を稼ぎ続けているわけで、このしぶとさ、不死身さ加減はゴキ……もとへ、『甲賀忍法帖』に出てくる忍者・薬師寺天膳並といっても過言ではないでしょう。
この本の収録されている諸作なんかも、スプラスティックあり、シリアスあり、パロディありで、内容的にはバラエティに富んでいるわけですが、風俗的には戦後日本の状況や世相を反映したものが多い。もちろん、そこには、『戦中派不戦日記』にみられる風太郎の真摯さでシニカルで冷徹なまなざしが、後の「忍法帳」の諸作が「時代・歴史物」という体裁を採用することによってワンクッション緩和された印象を与えるのに比べ、本書収録の諸作は、かなりストレートに反映している。
特に『満員島』、『自動射精機』、『ハカリン』の素広博士が登場する三作は、筒井康隆の初期作品群のような(いや、時代的にみるとこっちのが先なんだけど)セクシャルな事物を茶化した感じのどーしようもない脱力系のドタバタで、でもそのどたばたがあまり拙い印象を与えないのは、どーしようもない素広博士の発明が社会全体に与える影響を、どーしようもないドタバタなりに、当時の世相を忠実に反映させつつそれなりに真面目にシミュレートしているからでしょう。
タイトルがそのものズバリ内容を表している『陰茎人』も一種の脱力系ドタバタだが、まあ、芥川の某作品のパロディとしてみれないこともないし(初出時のタイトルは、ずばり『鼻』だそうだ)、同じパロディなら何度読んでも傑作! ホームズと留学先の漱石が競演する『黄色い下宿人』の完成度、隙のなさ、などは幾ら褒めても足りない。『蝋人』の幻想とエロティシズムも捨てがたい。
真面目でシリアス好きな方にはあまりオススメしませんが、一冊でこれだけいろいろな楽しみ方ができるこの本は、なんだかんだいってお買い得なのではないでしょうか。
酩酊亭亭主
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