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ひっさびさにミステリーを読んだので面白かった。多分、トリックとかそういうのは凝ってないように思われたけれど、謎があって歴史があって解決がある。それだけで、じゅうぶん楽しめたのでよかった。あと、御手洗シリーズを久々に読んだので(もはやなにを読んでなにを読んでいないのやら)、知っている人が出てくることに安堵を覚えた。
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ミステリーを期待して読んだのですが、その意味では期待外れ。しかし、違った部分での面白さが補って余りある。
ミステリー部分は、荒唐無稽。シリーズを通して、そうなのだが、今回はロジカルに問題を解くことができない。御手洗さんがいつも以上に神懸かっている。
個人的に面白いのは、事件解決後のエピローグから。切なくなる物語。
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タイトルからはロシア船の密輸の話かな?とか勝手に思っていたんだけど、ふたを開けてみたら、軍艦が芦ノ湖に突然発生して、その船を巡る謎につながり、その謎がロシアの帝政の話につながるとか。
まぁ、壮大すぎる話で非常に楽しめた。世の中には自分が知らない物語がたくさんあるという事実に改めて気づかされた。
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「ロシア皇女アナスタシアの数奇な運命」
箱根富士屋ホテルに残された一枚の古い写真。そこには雷雨に煙る芦ノ湖に浮かぶロシアの軍艦が写っていた。アナ・アンダーソン・マナハンという老婦人に纏わる一通の手紙に導かれて、御手洗潔がこの軍艦の謎に挑む。
本書は一枚の写真に秘められた謎に挑む、歴史ミステリです。大正時代の芦ノ湖に忽然と現れたロシア軍艦、自分はロシア皇女アナスタシアだと名乗る偏屈な老婦人、彼女に謝りたいとの意思を残して亡くなった倉持老人、これらの謎がやがてロシア革命で「暗殺された」皇女アナスタシアの数奇な運命に繋がり、一本の糸となってゆきます。
ロシアに関する歴史から脳医学に至るまで、謎解きに挑む御手洗潔の知識が冴え渡っています。ミステリといえば殺人が絡んでいたり、難解な謎解きを想像していましたが、本書はむしろフィクションと史実の境界にたゆたいながら、ロシア最後の王朝ロマノフの血を受け継いだ一人の女性の数奇な運命を辿る歴史ドラマとなっています。
「表では吹雪がふきあれていた。それは雪崩のように地を震わせ、爆風のようにテントを揺すりたてる。」
御手洗の推理が鮮やかな平成の世から、舞台は一転革命下のロシアへ。アナスタシアの運命を象徴するかのようなこの書き出しに始まる「エピローグ」が秀逸です。
ニコライ二世の四女として生まれたアナスタシアが、ロシア革命の後、その高貴な血を受け継いだゆえに家族とともにその名誉と誇りを辱められ、17歳の少女にはあまりにも苛酷な旅の果てにたどり着いた先とは―芦ノ湖の軍艦を始めとするすべての謎が明かされアナスタシアの告白としてここに結実しています。ここだけでも一つのドラマとして読み応えのある一章です。フィクションとはわかっていても、歴史に翻弄された彼女の身上を思うとき、言葉にし難いやりきれなさと哀しさがこみあげてきました。
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確か冬の話だったはずと読み始めたら真夏の話だったという…(エピローグは冬でしたが)。店内とはいえ真夏にボルシチはつらくないかい石岡君。英語のヒヤリングはできるのか出来ないのかどっちなんだい石岡君。
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ロマノフ王朝最後の皇帝、ニコライ2世の娘「アナスタシア」と芦ノ湖に突如出現した「幽霊軍艦」を巡る「歴史ミステリー」です。
歴史上の謎をストーリーの中心に据えて、御手洗に対峙させるという構図は読み応えがありました。
ただ、「幽霊軍艦」は早い段階で解決しますし、全体的に「研究論文」を読んでいるかのようだったので、ミステリー的にはやや物足りなかったです。
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歴史の教科書には載らない部分に、本当の歴史の面白さが、あるいは人間の闇深さや美しさがあるのではないでしょうか。
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御手洗シリーズ。
箱根のホテルに飾られていた一枚の写真には
芦ノ湖に浮かぶロシア軍艦が写っていた。
嵐の夜に現れ忽然と消えた軍艦の不可解な謎、そして
ロマノフの皇女アナスタシアの真実に迫る歴史ミステリ。
ロシアの歴史を振り返る形で、深ーく考察された話は
どこまでが史実なのか判らないほど
説得力があり読み応えがあった。
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史実をなぞらえつつ、物語が展開されており常にワクワクしながら読めました。
世界史の知識が浅いので色々調べながら読み進め、少しロシアの歴史に詳しくなりました。
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御手洗シリーズ。文庫版で再読。
写楽読んだときも思ったけど、島田先生の史実を織り交ぜた歴史ファンタジーみたいな話は、興味のない歴史の話でも物語として面白く読ませてくれるし、本当にこうだったら面白いなぁというロマンを感じさせてくれるから好きです。クラチュアとアナのラブストーリーもよかった。思わずほろりと来た。
なぜあえてレオナに頼んだのか、というのはいまいち納得できなかったけど。
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御手洗潔シリーズ。
これまでのシリーズ作品においても、史実に基づく挿話で大半を占めるモノがいくつかあったが、今作は完全に歴史ミステリーの謎解きに終始している。まぁ、それが嫌なわけではなく、むしろ好物な性質なので、新しい歴史的解釈にワクワクしながら読めた。しかし、どこまでが史実でどこまでが作者のフィクションなのか、絡め方が上手すぎて、逆に混乱しかねないのが困ったところ。にしても、読みごたえがあって、面白かったデス。
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面白かった。
非常に歴史の勉強になったし、興味を持てた。
ミステリー感は強くないが、レストランで彼を紹介したのはビックリした。
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この頃は御手洗もだいぶエリート思考になってきてる、それでも割りと好きな話、第二次大戦とロシア史のミステリが好きなら是非、知らなくても面白いけど
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この作品は、御手洗シリーズだけどいつもとは毛色が違う。いわゆるミステリとしての殺人事件は起こらない。とは言うものの、歴史の謎というミステリにフィクションを織り交ぜながら踏み込んでいる。どちらかと言うと、同著者の「三浦和義事件」のフィクション版のようなイメージか? ロマノフ王朝の王女アナスタシアの謎を追うストーリー。勉強不足でアナスタシアと言う言葉はどこかで聞いたことがあったけど、それがロマノフ王朝の王女だったとは知らなかった。ロシア革命のときに処刑(というのか、虐殺というのかわからないけど)されたはずだが、その痕跡が残っていないと言うことは当然知らず。あとがきで著者が、どの部分がフィクションだということを明記しているので、歴史の勉強になった。 物語は松崎レオナから御手洗
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『暗闇坂の人喰いの木』から『アトポス』まで続いた長厚壮大な御手洗シリーズとは打って変わって、初期の御手洗作品を思わせるような文庫本にして340ページ弱のコンパクトな作品。しかも今回は今まで冒頭で延々と語られていた事件に纏わるエピソードを作品の後半に持ってきたスタイルで、御手洗シリーズの源流であるドイルのホームズシリーズの構成を想起させた。
今回の謎は見え見えであると云ってもいい。
ロマノフ王朝の皇女の1人アナスタシアとアナ・アンダーソンが同一人物である事は色んな反証を挙げているもののレッドへリングもないシンプルな物語の構成上、容易に解るし、冒頭に出てくる倉持氏がどのようにこの事件に関わってきたのかも183ページで登場するクラチュワの名前が出た時点で全て解ってしまった。また幽霊軍艦の謎も物語の2/3の部分に当たる224ページで早くも明かされてしまう。
つまり今回の主題はこのロシア幽霊軍艦の謎を解き明かすことよりも島田氏が21世紀本格として提唱している脳の秘密と本格の融合についての実践にあると感じた。
『眩暈』では悪夢のような実際にありえそうもない手記の内容について論理的にそれら一つ一つを合理的に解決していったが、今回アナという女性が繰り広げる奇行―髪の毛をむしり取る、衝動的な暴力的行為、糞公害やゴミ屋敷―について大脳生理学上の見地から説明を行っている。過去の実例を挙げて非常に理路整然としていて読みやすく、興味深く読んだのだが、今後の本格の行く末について危惧したのも確か。知識ではなく知恵で解き明かす知的ゲームとしての本格が専門的な知識も動員しないと解けなくなるのは寂しい感じがした。
また御手洗の特徴として常人には理解できない奇行があるが、今回もレオナの知人でロマノフ王朝について調べていた在野の研究家ジェレミー・クラヴェルが御手洗の許を訪れて一緒に食事に行く際に馬の毛で作ったブラシを突然買い、頭の薄いクラヴェルに勧めるシーンがある。非常に面白いエピソードだが、これが実に後半有機的に働くのだ。
今までならば御手洗の人物描写として味付けがなされていた奇行さえも本作の真相解明に一役買っていることからも今回の作品が実に贅肉をそぎ落とした作品かが解る。
そして島田氏のロマンティストぶりも健在。
アナスタシアと倉持氏のやり取りなどは結末を知っているだけに胸が痛む恋物語である。ロシアの皇女と日本の一兵卒の身分を越えた恋。少女マンガが好む題材である。
メインのテーマである幽霊軍艦の謎が解れば物語は終わりだからか、別れのシーンが描かれなかった。長大化を嫌って自重したのか。一読者として私はそこまで読みたかった。
しかし、このまま行けば本格がますます解けないパズルゲームになってしまいそうだ。これが島田氏の本懐なのだろうか。
知的ゲームとしての本格か、それとも本格の意匠を纏った物語か、うーん、悩ましい。