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紙の本
「あいまいな脳」だからこそ想像力と考える力が育つという話が最高だ
2005/06/05 10:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本、楽しくて、わかりやすい!脳の説明をちゃんとしているのに、難しいというイメージがない。中高生8人を対象にした講義だから、著者のわかりやすく興味を持ってもらうための工夫が成功しているようだ。
脳の仕組みはまだまだ解明されていないが、その中でも解明されている点をクローズアップ。ちゃんと脳と心の問題にも踏み込んでいる。興味をもってもらうための講義でありながら奥行きもある。
「進化しすぎた脳」とは、脳の機能は進化してきたけど、人間(人間だけではないが)はそれを使い切ってはいないことを表している。こういうことを、やさしい言葉で説明するから肩もこらない。
「あいまいな脳」という説明がまたいい。人間の脳は、写真やコンピューターのようなキッチリした記憶ができない。著者はこれがいいのだと強調する。あいまいだからこそ、想像力が育ち考える力が育つ。すべてを記憶できる脳であれば、コンピューターのように意思を持たないようになるかも、などなど。
本書は『進化しすぎた脳』だけど、『あいまいな脳』のほうが良かったのではないかと思うほど、「あいまいな脳」の話は良かった。
また、著者は、部分を知っただけではいけない、全体もみて部分との関連を見ることの重要性を強調する。これは、科学だけでなくすべての分野にあてはまる考えである。それをわかりやすく説明しながら複雑系の話にも応用している。
哲学と科学の関係も示しながら、幅広い視野で説明しようとする。感心する点が随所にある。
しかし、重大な欠点がある。たとえば、「目ができたから、世界ができた」という項がある。
「進化の過程で人間のこの目ができあがって・・・はじめて世界が生まれた」また「カエルにとって『ニュートンの法則』なんか成り立たない。カエルの目だったら『質量保存の法則』なんてまちがっている」
これは完全に間違っている。カエルの目と脳だったら発見できなかった、というならまだしも、カエルの世界には成り立たないなんて、あきれてしまう。受講者が疑問をぶつけているのに、著者の回答は明確になされていない。受講者のほうがまともな場面がある。
良く出来た講義なのに、根本的な欠点を持っているのが、とても残念である。しかし、そんな間違いを見極めながら読めば収穫のある一冊である。
紙の本
難しい脳科学をここまで...こういう科学者は「いいね!」
2012/02/10 08:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカで脳科学の研究を続ける科学者が高校生を相手に「脳のメカニズム」を講義した内容。
理系とはいえ高校生。知識をインプット中である彼らに対して、質疑応答しながら「脳」を分かりやすく説明した講義「そのもの」なので、その分野にまったくインプットされた知識のない自分でも、(途中までは)分かりやすく読めた。講義内容にどんどん引き込まれていくのがわかる。
しかし、高校生とはいえ理系。「シナプス」のあたりで挫折しかけた自分は、残念ながら、「脳」の退化が始まっているのか...
全部で4つの講義が収録されているが、前半はハマりました。脳が大きければ、或いは脳のシワが多ければ、進化した生物なのか?脳がその「進化度合い」を決定しているのか?いやいや人間よりもイルカの方がシワが多かったりするらしいです。完全に目からウロコなのですが、人間は手足(特に「手」)を有し、咽頭によって言葉を持つ。これが脳の発達に影響を及ぼしている、という逆の考え方。身体という容れものが脳を規定する?面白いですねー。そして運動をつかさどる小脳の大きさ。動物という視点に立てばけして運動能力がすぐれていない人間は、小脳が小さい。逆にネズミのそれは大きさの比率が高い。ほー!
コンピュータと脳の比較、脳の優れているところは、「あいまいさ」を有していることであり、それゆえに「ソウゾウ」=想像&創造というアウトプットが可能になる、という点。収納した情報をあらゆる角度から、組み合わせることのできる機能。一見関係のないものが組み合わされて、別のものが生まれる妙。コンピュータと人間(生物)の違いは、「あいまいさ」なのかー。なるほど!
情報伝達のメカニズムあたりは、正直ギブアップでしたが、最終講義の「アルツハイマーの研究」も興味深い。解明がされていない分野であるが、現代に現れた病気である、というのは、昔はそれまで寿命が長くなかったから発覚しなかったのかもしれない。長生きしすぎなのかもしれない、という大局観での見方。これも「科学的」ではないけれども、視点が広い著者の「容量の大きさ」を感じさせます。
薬と脳科学の関係にも触れているが、脳科学が今ほど進化していない時代から「生命」を維持させるための医学は発達してきたわけで、実は薬の効能から脳の機能がわかる場面も多いという。
著者の優れた点は、このような「科学」を、知らない人にも伝える技術、けして一方的ではなくて、学生に「考えさせる」講義、他の分野、医学や哲学などへの敬意、これらを内包しているところ。かなり偏見なのだけれど、科学者=専門分野のみ深堀り、というイメージが(勝手に)ある中で、こういう科学者=講師の話を聞けることは貴重な時間ではないかなあ、と心から思う。自分が高校生の時に聴いていたらもしかしたら理系に...なってないか。
「脳トレ」が流行ったり、脳科学者がメディアに登場したり、「脳科学」が近い存在に感じられるようになってきたけど、こういう「まじめな」講義が、一番「面白い」かもしれないね。
【ことば】...この意味では人間はもはや進化を止めたと言ってよい。その代わり...自分自身の体ではなくて「環境」を進化させているんだ。
環境が変わるたびに、淘汰を繰り返し「最適」な機能を残してきた生物である人間だが、医学、科学の発達で、むしろ環境の方を人間に合わせる、という<逆進化>をしている段階に入っているのではないか。自然の摂理からすると 、「逆」なのかもしれないけれど、科学の進歩はけして悪ではない。ただ、こういう考え方ができる科学者の柔軟性、視野の広さは尊敬に値します。
紙の本
テスト本番になると暗記した英単語が思い出せなくなる人のために
2004/11/11 22:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鳥居くろーん - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビを見る。私たちはそれを目で見ていると思ってる。
そう、もちろん目を向けなければテレビを見ることはできないんだけど……でも、目はカメラのレンズにすぎないんだ。せっかく受け取った光や色の情報も、ひとまとめにしてコンピュータ(=脳)で処理しないとそれは、ただの信号の寄せ集めにしかならないんだから。
じゃあ、ものを見ることができるのは目じゃなくて脳なんだろうか? 今、私の目に映っていると感じているものは、実は脳みそに映っている映像なんだろうか。不思議だ。よく考えるととっても不思議だ。
『まず世界がそこにあって、それを見るために目を発達させた、というふうに世の中の多くの人は思っているけど。ほんとはまったく逆で、生物に目という臓器ができて、進化の過程で人間のこの目ができあがって、(脳がそこからの情報を解釈できるようになって)はじめて世界が生まれたんじゃないか。』
『世界を脳が見ているというよりは、脳が世界をつくりあげている』
ものを見て、それに触ったり、あるいは音やにおいを感じたりするとき、これほどまで確かな世界の存在を感じられるのに、それが実は人間にしか通用しない世界なんだと聞いて、私は少しクラッとした。この世界自体がそんなに頼りないものなのに、まして自分の気持ちとか意志とかっていうものは一体どうなっちゃうんだろう。
私たちは自分の体の一部であるはずのこの脳というブラックボックスについて、知らないことがあまりにも多い。もっとも、知ったから役に立つってわけでもないんだけど。でも、自分の頭ん中どうなってんだろって、純粋にそう思ったこと、ありません?
この本は中高生への少人数制講義をもとにしてつくられている。もともとこの講義自体、わかりやすいような工夫が凝らされているうえ、教師が生徒へ語りかけるというシチュエーションをうまく再現している文章は親しみがあり、読みやすい。話題も広く、脳の仕組みばかりでなく哲学や倫理、複雑系やクオリアといった小難しい話にも、軽くではあるがうまく触れている。
「進化しすぎた」はずの自分の脳みそで、ちっともわからない脳のことを考える……まるで自分をしっぽからかじっていくかのような難業に、あなたの神経細胞もきっとチカチカ「発火」するに違いない。きっと頭も良くなるぞ(希望的観測)。
こんな講義が私の学生時代にあったのなら、ぜひとも受けたかったねぇ。