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紙の本
どこか、ハリウッドに匂い
2006/01/09 17:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「終戦のローレライ」や、「亡国のイージス」でお馴染みの福井さんの初短編集です。 福井作品なんかでは、もう既に登場している、殆どが、自衛隊OBで組織される、通称、市ヶ谷の、防衛庁情報局を扱った連作短編集となっています。連載は、講談社の雑誌だけでなく、各社色々、またがっていたみたいです。
書けば、書くほど、どんどん長くなっていく
傾向にある、福井さんは、宣伝などでは、「おれ的、最短小説」
などと、自身で書いていました。
所謂、防諜もので、日本国内で、スパイを捕まえる、
欧米なんかでは、スパイキャッチャー
(朝日新聞社から同名のノンフィクションあり)
なんかと、呼ばれています。
本書も相変わらずの福井節というか、
福井さん作品には、いつも、渋い中年男性が、浪花節で
愚痴りながら、活躍するのですが、
特に、今回は、国益のためとか、自国で完結した防衛力
を保持できない国の悲しさとか、正に、組織のしがらみとかに、
縛られた人物がいっぱい出てくるので、今まで、同様というか、
さらに際立っています。
ところが、福井さんは、「ローレライ」の監督の樋口さんなんか
との、対談でも、「映画のラストは爆発でしょう」とか、
映画「スピード」については、
犯人に身代金を支払ったほうが、どう見ても安くついたとか、
発言しているぐらいの大のハリウッド娯楽作品好きなので、
本書を読んでいても、どこか、ハリウッドの娯楽大作の匂いが、します。
なんか、ヘッケラー&コッホをもった、黒ずくめの特殊部隊が、
突入してくるイメージですね。
個人的によかったのは、ラストの作品「920を待ちながら」です。
息をつく間を与えず、二転三転する展開がたまりません。
又、今作は、一番、ハリウッドの匂いがすると言ってもいいでしょう。
「交渉人」あたりを、なんとなく、連想しました。
後、この「920を待ちながら」は、「亡国のイージス」に出てきた
あの人が、出てきますよ、、キャー、、。
それは、読んでのお楽しみ、、です。
紙の本
「染み」を踏み台にした日常とは?
2005/01/05 17:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KOMSA - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者初の短編集であるが、
内容は長編に負けじとハードだ。
全てのシュチュエーションに防衛庁情報局(通称・ダイス)が絡まる。
しかし主人公たちが何の為に戦うかは様々だ。
福井作品の主人公は無辜なる者への眼差しが優しい。
それは守るに値する市井の人々をおのれの任務に巻き込んだ時に発揮される。
果たして日本は守るに値する国家なのかを糾弾した
壮大な舞台を用意した「亡国のイージス」とは違い、
特殊な任務を一般人の仮面を被り日常を生きる情報局員を描く事で、
福井は名もなき人々の暗闘を読者の眼前に突きつける。
表題になっている「6ステイン」の“ステイン”とは【染み】である。
それも痕跡さえ残す事が許されない悲しく儚い染みの数々なのだ。
その染みを踏み台として国家として成り立っている我々の世界が、
どんなに虚弱で脆い物なのかを福井はこの短編集で語りたかったに違いない。