紙の本
取材過程も大変興味深く読ませるルポ
2005/01/17 08:13
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
再放送がされないテレビ番組、単行本に収録されない連載マンガ、ビデオソフト化がされない映画。
一度は世に発表されたことがありながら、二度と日の目を見ることがないこうした製作物は二つに分類できます。当局の力によって存在を否定された製作物、つまり「発禁」物と、製作側自身の何らかの自主規制によって存在を掻き消された「封印」作品です。本書は後者にあたる作品たちがどういう過程を経て「封印」されるに至ったかについて追跡取材したルポルタージュです。
最初に取り上げられるのは「ウルトラセブン」の第12話「遊星より愛をこめて」。被爆者を怪獣になぞらえたかのような描き方が問題となって封印されたと私もかねてから耳にしていた作品です。マニアの間で出回っていた粗悪なコピー映像を10年ほど前に知人から見せられたことがあります。また映像作品そのものは封印されているとはいえ、「故郷は地球—佐々木守 子ども番組シナリオ集」(三一書房)という書物でこのシナリオを読むことが可能です。
映像やシナリオに目を通した当時、これが封印されるのはいたしかたないのかもしれないなという漠然とした感慨を持った覚えがあります。作品の精神は明らかに「反核」ですが、被爆者に十全の配慮がされた描き方かというと、疑問の余地はやはりあると感じたものです。
本書は、原爆の被害がいかに無残なものかということを強調すればするほど、被爆者に対する差別が増幅される可能性があることを指摘しています。製作者の高い志も手法を慎重に選ばないと180度逆の効果を生んでしまうという、被爆問題の難しさを鋭く衝いています。
第3章は「怪奇大作戦」第24話「狂気人間」を取り上げます。これは心神喪失者の行為が罰せられることはない(刑法39条)状況を利用して犯罪を重ねる女の物語です。犯罪者が裁きを免れることに対して大いなる疑問の気持ちを抱いている昨今の犯罪被害者の声を先取りしたかのような作品ですが、これも今は封印の対象となっています。
本書の取材に対して精神障害者の家族会は、この映像作品そのものには誤解を招く可能性があるとしながらも、そもそも刑法39条自体が精神障害者を人間扱いしていないという見解を示します。精神障害者も治療を施された上できちんと裁判を受けられるような状況を整えるべきであり、そうすることではじめて差別と偏見をなくすことが出来る、というこの会の主張には、家族会は刑法39条の存在を擁護するはずだと思い込んでいた著者ともども新鮮な驚きを感じました。
封印作品を追うことによって、このように差別や偏見に関して興味深い視点が提示され、問題を安易にタブー視して遠ざけるだけであってはならないと改めて考えさせられます。
差別と偏見の問題以外にも封印作品の取材を通して見えてくる興味深い事柄はまだあります。
この問題をタブー視する業界関係者たちの、著者に対する度を越したかのように過敏な視線。そして封印されることによって生まれる莫大な付加価値に群がる怪しげなブローカー的存在。ヘタなスリラー以上に緊迫感あふれる取材過程を読む間、背中の毛が逆立つ思いを幾度か味わいました。
紙の本
封印作品の謎
2004/11/12 11:11
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M1号 - この投稿者のレビュー一覧を見る
安藤健二氏に、聞きたい事があります。『怪奇大作戦』第24話「狂鬼人間」のキ○○イ発言問題の件でありますが、ウルトラQでもキ○○イと言う台詞があります、狂鬼人間ほど発言は少ないですが、DVDウルトラQに収録されています「バルンガ」では奈良丸博士の一言「2020年の挑戦」では一平の二?三?言(各シーンで)あります、まだ探せばあるかな? 狂鬼人間では連呼が一つの欠番理由かも?しれない。
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これはかなりよかった!!
友達の友達が書いた本でサイン本を読ませてもらいましたが、かなりいい!
ちゃんと論理的に話を進めていて、しっかりと裏付けも取っており、途中で止められない感じ。
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【あの一話は『何故』封印されたのか】
複刊、復刻版が幅をきかせ、ケーブルテレビなどの普及である意味では昔以上に昔の作品が楽しめるようになっている現在。過去の作品の再評価も積極的に行われている中で、何故か光が当たらずその存在そのものが『なかったこと』にされる作品がある。
例えばそれはウルトラマンの第12話であり、ブラックジャックの知られざるオペだ。ファンの間で語り草になりつつも、公の場では取り上げられない作品は意外に多く、逆に真正面からタブーを扱った本は少ない。本書はその貴重な一冊だ。
タブーとして封印され、今でさえ取り上げられることが許されないそれらの作品は、何がどのようにして問題になり、どのように封印が決定されたのか。筆者は特撮と漫画を中心に、封印を決定したプロダクション、出版社、そして抗議を行った側の事情をを丹念に調査していく。糾弾しようと言うのではなく、あくまでもその根を突き止めるために。
製作側の差別問題への意識が当時は低かったから、と何かのせいにした結論を出すのは簡単だが、現在も様々な理由で
『封印される作品』は出続けている。封印という処理の良し悪しについて筆者は論じない。是非は読者にゆだねられているのだ。(M)
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200501 最後のエピソードは思い入れはあるのかもしれないけど、他には劣る。でも全体としては面白い。
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「ウルトラセブン」や「ブラックジャック」など、なんらかの事情により、作者(もしくは権利者)が自ら封印してしまった作品達のその理由に迫るという内容の本です。
正直に言えば、必ずしも真実にたどり着けるものでは無かったようですが、当時の混沌とした文化観の中、生み出され、そして封印されてしまった作品達に、こうしてスポットをあてる事でなんらかの問題を提起する大きなきっかけとなる事を期待できる作品だと思います。
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漫画、アニメ、特撮などの見られなくなった作品・番組自体をとりあげ、その理由とともに、作品に関わった関係者のコメントなどから
当時と現在日本の抱えている問題などもわかります。
あとおなじみの会社の謎もとけたりしました。
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マスコミは、自分の責任を人になすりつけるのが得意ですね。
自分はさも中立なふりをして、親切顔で、火種をまく。
つくづくそう思った。
まあそれは、この本の作者も一緒。
はっきり言って、どこかで誰かがわたしの悪口を言っていたからといって、それをわざわざ御注進するのは、親切でもなんでもない。
なんか、ケンカでもおこんないかなぁと楽しみにしてるだけ。
まあ、中身についていえば、自分がかかわっただけあって、パソゲーの話が1番おもしろいし、力が入っている。
でも、上記の理由で、あんまり好きではないなぁ。
封印作品についていうなら、例えどんなに不快な作品であっても、作品そのものは、抹殺されるべきではなく、議論されていくべき者ではないのか?
そして、それを議論していくのは、つくった者ではなく、それを受け取る側の人間の義務であるような気がする。
しかし、そう言いながら、その刃が自分に向いたとき、やっぱり、同じようにそう言えるかどうかは、あんまり自信がないけれど。
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ウルトラセブンやブラックジャック等でこの世から封印された作品を紹介。読むと何だかこの世が不安かつ人間不信になる。
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図書館で借りて、ただいま読了。
この手の裏本に有りがちな、大袈裟な表現が無く、作品ごとにきちんと当事者や関係者に取材をしている所が良い。
ウルトラセブン幻の12話が気になっていたので、読んでみたけど正直封印しなきゃいけない理由がよく解らない。
リアルタイムで放送を見てたはずだけど(歳バレるな)、怪獣もストーリーも、一切記憶無し。
子供の何気ない疑問が、たまたま原爆被害者の会の活動をしていた父親を怒らせてしまった、という。
なんだかね。
もちろん、差別や人権無視は断絶すべきだけどね。
当の本人から声高に言われると、逆差別になりかねないよね。
と、疑問を呈しておきます。
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たぶん、一連の「封印○○」本ブームのきっかけとなった本だと思います。著者渾身の取材と執筆内容は、とりあげられている作品のファンのみならず、サブカル好きの人、クリエイティブな仕事に就いている人必読のものとなっているのではないでしょうか。唐突ではありますが、この本にはロックを感じます。
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『ウルトラセブン』12話や『ブラック・ジャック』41話など、人気作品でありばがら現在はその一部が見れない・読めなくなっている作品の封印に至る経緯などを記した本。巻末にプチ封印作品リストつき。なかなか興味深い内容です。
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封印作品とは何か「テレビや雑誌などで一度は世に出たんだけども、再放送や再録、DVDや単行本などへの収録がなく、事実上封印されてしまっている作品」のことである。
作品自体にそこまでの非はなく、クレーマーの走りなのかなと思って読み始めたんだけど、想像とは少し違うようである。
簡単に言えば「その表現を使うことにより、誰かしらが傷つく可能性のあることを、表現者が誤ってうかつに使った」から封印されているものが大多数である。大多数っていうか、取り上げられている作品すべてがこのパターンと言っても過言ではない。
たしかに、時代の流れだったり、攻撃しやすい対象であったりするが故に、必要以上に厳しい意見はあったと思うんだけど。
作品を真摯に考え「どういわれてもこれを伝えたい」というのであれば封印されなかったと思う。
「突っ込まれたら痛いところを突っ込まれたから、戦わず引きました」というのが印象。
流れ事態はなかなか興味深いんだけど、5作品すべて同じパターンだと後半読み疲れる。
(意図したんじゃなくて、取材したうちにそうなってしまったんだろうけどね)
あと「違法なファイル交換ソフト使って作品を見た」と書くのは正直どうかと。
封印されているから見れないのであって、ファイル交換ソフト使えば封印作品も簡単に見れますという提示でもあり、あまりよろしくない。
ファイル交換ソフトで簡単に見れるんなら(あまり苦労をしていないなら)「ツテで見た」と書けばいいのに。
ある意味、メジャーになったとたんに封印されそうな作品である。
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「ブラック・ジャック」など有名な作品は多くありますが、その有名な作品にも様々な事情により封印された物語があります。
その物語の一部を紹介した一冊です。
【熊本学園大学:P.N.和菓子】
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かの有名なウルトラセブン第12話など、何らかの差別表現などの理由から抗議を受け、それ以来封印された放送出版物の経緯を探るルポルタージュ。覗き見的な下世話な視点からではなく、真摯に表現の自由を考え、作品の真の意図を理解しようと努めている。もと新聞記者の作者によるデビュー作で、出版は8年前。続編も数冊執筆されているようなので、機会があれば読んでみたい。
むかしは作る側も受け取る側もまだ大らかだったと感じる。最近は何をしても爆発的速度で世論が拡散し高揚するから、メディアも萎縮気味だ。