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杜牧詩選 みんなのレビュー
- 杜 牧 (著), 松浦 友久 (編訳), 植木 久行 (編訳)
- 税込価格:1,100円(10pt)
- 出版社:岩波書店
- 発行年月:2004.11
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文庫
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紙の本
去年の暑い夏。あたなと語り合った。
2005/08/13 22:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏の漢詩といえば、私に思い浮かぶのは、夏目漱石。
漱石は大正五(1916)年12月に亡くなります。その年の8月21日に芥川龍之介・久米正雄へと宛てた手紙を書いております。
「・・僕はあいかわらず『明暗』を午前中書いてゐます。・・存外涼しいのが何より仕合せです。それでも毎日百回近くもあんな事を書いてゐると大いに俗了された心持になりますので三四日前から午後の日課として漢詩を作ります。・・(ここから大切な語りかけが続くのですが省略)・・今日からつくつく法師が鳴き出しました。もう秋が近づいて来たのでせう。・・日は長いのです。四方は蝉の声で埋つてゐます。」
さて、はじめて読んだ杜牧の詩には、雨が降っている漢詩が多いので馴染み深く感じられました。
ここでは、二篇の漢詩を引用します。
去夏 疎雨の余
同に朱欄に倚りて語る
当時 楼下の水
今日 何れの処にか到れる
恨みは 春草の如く多く
事は 孤鴻と与に去る
楚岸 柳何ぞ窮まらん
別愁 紛として絮の若し
去年の暑い夏、小雨が降りやむと、
楼上に登り、朱塗りの欄干にもたれながら、
あなたと語りあった。
その時、楼下を流れていた水は、
今は、どのあたりに流れ到っているのだろうネ。
無念の思いは、日ごと茂りゆく春の草のように深まり、
あなたとの楽しい語らいは、北へ飛び去った一羽の
鴻(おおとり)のように、もはや昔のこととなった。
ここ楚の地を流れゆく岸辺には、
柳の樹木が果てしもなくつづく。
別れの悲しみは、天空を舞う、おびただしい柳絮のようだ。
【註】りゅうじょ:柳絮(柳の実を包む白い絮(わた))
柳の実が熟すると、付着していた白い綿毛が枝を離れて
風にのって飛散した。「柳絮飛ぶ」光景は、晩春三月の風物
もう一篇。蝉が出てきます(こちらは訳だけ)。
揚州の禅智寺に書きつける
雨がやんで、一匹の蝉がやかましく鳴き始めた。
境内の松や桂の樹木は、サワサワとして秋の気配。
青い苔が、人の訪れない石段をおおっている、
白い鳥たちは、いつまでも飛び立たない。
青い夕もやが、木立の茂みにひろがり、
紅い夕日が、楼閣のかげに落ちゆく。
ここにいては気づくまい。竹林の西へ延びる路のむこう
歌声や笛の音が沸く地、にぎやかな揚州の城があることを。
たまたま引用した二篇の詩にも雨が出てきます。
その他にも、杜牧の詩には雨が降っております。
それでかどうか、身近に感じられてくる気がいたします。
いかがでしょう。夏を涼しくする一冊として。
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