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紙の本
戦後日本の三大思想家の一人(と、私は思う)。
2006/02/12 00:39
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後日本の三大思想家をあげるとすれば、第一に丸山真男、次に手塚治虫、そしてこの源氏鶏太を私はあげたい。大いに異論があるところだろうが、聞いていただきたい。
丸山は言わずもがなの戦後知識人の「アイドル」である。肯定しようが、批判しようが、彼を取り上げることが知識人の証となってきた。また、手塚は、今や世界を席巻しつつある日本の漫画、いやオタク文化の「始祖」である。彼が漫画に注ぎ込んだエネルギーこそが、現代のオタク文化を花開かせたのである。現在では、当事者たちが意識しないところが始祖のゆえんである。そして、源氏という大衆作家は、戦後日本のサイレントマジョリティーたる「サラリーマン」の代弁者であった。この3人をきちんと取り上げられれば、戦後日本の多くの説明がつくのではないかと思う。
この3人の中で、ほぼ忘れ去られようとしているのも源氏である。小説家として高額所得番付に名を連ねた一大流行作家でありながらも、現在彼の作品で新刊で入手可能なものはない。純文学至上主義の発想からすれば、当然のことかもしれないが、流行作家の面目躍如と評価したい。彼の作品で現代人の鑑賞に足りるものはないかもしれないし、彼の描いたサラリーマン像は今や否定されるべきものかもしれない。しかし、彼の膨大な作品が同時代の多くの人に読まれたと言う事実は変わらない。今も昔もサラリーマンは、批判や揶揄の対象になりやすいが、サラリーマン出身の作家が、働くサラリーマンたちに寄り添うように、ペーソスとユーモアをもって彼らを肯定する物語を紡いでいったのである。
彼の思考の浅さや、時代的な限界を指摘することはたやすい。彼のこのエッセー集を手にしても啓発されることは少ないかもしれない。しかし、貧しい家に生まれ、中卒のサラリーマンとして戦前戦後を過ごした彼の個人史に触れたとき、「ごく平凡な幸せこそを願う」という、戦後の時代精神の一つが浮かび上がってくるのである。
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