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以下引用
◎活
一枚の葉っぱを
私は追いかける
谷川の流れは急だ
やっとすくいあげた菜葉から
滴り落ちるもの
◎朝
竹藪が風を呼んでいる
竹藪が金箔をちらしている
ほんみようが遊んでいる
ゆるやかな坂道
昨夜は暗く閉されていた
今朝はさわやかに開かれている
◎動
筵の上にあぐらをかいて
兄妹は夜なべに縄をなっていた
お月さんがやさしく見守っている
幼い掌が
拝みあげるようになっていた
うしろからたぐりだす
お月さんのしっぽ
欅のてっぺんで梟が鳴いていた
◎浅春の歌
風が産毛のように吹いている
ー金色の産毛のように
あなたは何処にでもいる
見開いた木の間に
散歩のパイプの中に
◎花粉
僕の癖のままに
歪んでいる自転車でした
くるった僕の自電車に
平気で乗るひとよ
鶏やコウシが遊んでいる
狭い村道を
走りながら
カネエションのやうに手をあげるひとよ
◎秋の雲
洗い場の浅い流れに
つけてある皿
その皿をかぞえながらゆく秋の雲でした
★◎だまっている牛
牛はせまい牛小屋で
ながい冬を越した
神様のように反芻しながら
大きなぬれた目に
小さな僕がうつっている
少年の頃はずい分広いとおもった門川だが
ひとまたぎでとびこせる
清い流れは昔とかわらない
藻草の間からは
茶碗のかけらが宝石のように光っている
目高が蓄音機の針のように泳いでいる
ひとまたひでとびこせる門川だが
踏み絵のように恐ろしい
◎僕の人生
洋傘のまわりは土砂ぶりの雨でした
はげしい雨をくりぬいて
孤独な僕の人生でした
◎孤独について
石ころ
指のようにほぐれない
晴天の日はほのかに温かい
◎風景
そも小さな遊園地には
一本の木もなかった
まして噴水なそ
木柵によりかかって
スリップだけの娼婦が
たばこをふかしていた
魚のようなけむりが
よあけの空を泳いでいた
◎
この簡素な板屋根の栖で私は寝転んでいる
よいあんばいに天窓もあいている
十文に二文たらない親和感
六織なんか素通りしているのも愉快だな
ひとり笑えてくるのだが誰にも気兼ねもいりはしない
天窓の空はすばらしく青い