紙の本
この文章読本はすごい
2004/12/14 10:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:てのひら - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中に『文章読本』や「文章論」を説いた本は数々あれど、どれも読んでいてピンとこなかった。だが、この本を読んで自分の中でストンと落ちるものがあった。
著者は他に『火山はすごい』という本も出している。そのタイトルの単純明快さにひかれて読んだのだが、結局、頭の中で残ったことと言えば「火山はすごい」ということだった。
これって、ちょっとずるい。だってモノ書きたちはその「すごいこと」をいかに伝えるかに腐心しことばを連ねていくもの。しかしそういった理論をすべてすっとばしてとにかく「すごい」の一言で片付けてしまう。そこらへんのジョシコーセーが「チョーサイテー」と言っているのとあんまり変わりない。
『〜文章方程式』の文章中には工夫が凝らされている。ある本を取り上げて、著者が書評をするのは、すでにある「文章論」と同じ。しかし、この本では特に言いたいことは太字で表わされている。これは、TVのバラエティーでよく使われるテロップと同じ手法だ。これは読んでいて目障り。実際読み終わってみて、その太字のことばが印象に残っているようなことはない。ただ、「ああ、太字で書いてあったな」という程度。しかし、これが著者の意図だ。とにかく、「読んだ」という達成感は残る。
もちろん、そこで終わってしまってはいけない。本当は、読んだ後からが大事で、著者もこの本の中で「おもしろそうだと思った」ら「ぜひ原本も読んでみてほしい」と書いている。それにしても最後にご自身の『火山はすごい』をちゃっかり書評しているところが「すごい」。「うまくのせられた」という気もするけど、実際に文章を書くコツもさりげなく書かれてあって、まあのせられてもいいかな、という気もしてきた。「文章論」とは、つまりは自分の納得のいく文章にであえるかどうか、ということなのだ。
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[ 内容 ]
一見論理的、たたみかけ、価値逆転etc.
魔法の技!
意外に簡単!
小学生にも使える文章術!
「わかりやすい文章」を書くために、名人たちの文章を科学的に分析し、見つけた「方程式」。
[ 目次 ]
第1章 「恋」の名文方程式
第2章 「青春」の名文方程式
第3章 「食」の名文方程式
第4章 「笑い」の名文方程式
第5章 「元気」の名文方程式
第6章 「美」の名文方程式
第7章 「逃避」の名文方程式
第8章 「人生」の名文方程式
第9章 「知性」の名文方程式
第10章 「静寂」の名文方程式
第11章 「旅」の名文方程式
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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≪内容≫
火山学者の鎌田浩毅氏による名文解説。
≪感想≫
これまでの文章読本の問題点を指摘しつつその改善を試みると意気込んでいるものの、科学的手法やら方程式やら科学のメスの切れ味やらと大風呂敷を広げてあるわりにはどうも企画倒れというか、名前負けというか、はっきり言って失敗しているように思う。内容は科学的ではなく、すなわち客観的とは言い難く、個々の分析はたしかに詳細であると言えるかもしれないけれど、言い換えれば細部を捏ね繰り回しているだけでは・・・と感じてしまった。取り上げられている名文は様々なところから持ってきてあるので、読書案内としては良いかもしれない。ただ、その他の部分は眉に唾して読むべきだと感じた。
あとがきに「名文の技術とは作者が読者にかける催眠術」とあるが、それが正しいとすれば、この本の催眠効果はとても薄い。
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図書館より
科学者が見つけた文章方程式ということですが、別に脳科学的な観点から文章を読む、というわけでもなく(著者の専門は火山学)、分析も科学的というよりかは、言語の効果の分析+主観といった感じです。
分析自体は「なるほど」と思ったものもあれば、「それはちょっと主観混ざりすぎだろー」と思ったものもありますが、「なるほど」と思ったものはどれも面白かったです。
個人的に最も面白かったのは味に関する文章方程式の章。
例えば冷奴を文章で書くとき単に「白い豆腐に鰹節とネギをふりかけ、しょうゆをかける。これが旨いのだ」みたいに書くのではなく本から引用すると、
『冷奴には好みにもよるが絹ごしがよく、冷水をたたえたどんぶりに入れて氷塊を浮かせ、青ジソ、さらしネギ、おろししょうがなどを薬味に、できれば青ユズの香りを添えながらしょうゆに少量の酒を割って、これに削りたてのかつお節をまいたものなど、素朴にして美しく、まさに日本人の好みの食べ物といえるものである。』
という風に「冷や水をたたえたどんぶり」「青ユズの香り」だとかいった食材以外のことや、情緒的な文章を入れたり、
単に「ネギ」「かつお節」「しょうゆ」と書くのではなく、「さらしネギ」「削りたてのかつお節」「しょうゆに少量の酒を割って」と書いたり、
単に「美味しい」「旨い」という主観的な言葉を使わず、「素朴にして美しく」「まさに日本人の好みの食べ物」という書き方をしたり、
こうやって説明されると、自分も食レポの記事も書けそうな気がします(笑)。
他にも、抽象的な言葉で読者の想像や体験を促すといったものや、同じような表現を何度も使うことで、読者を”催眠状態”に導くなど、納得できる話も色々ありました。