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下巻
そろそろモービィ・ディックを追いかけないと最終巻だよ!…などという読者の思いはどこへ吹く風、相変わらずの鯨語り(笑)。
上中巻でさんざん鯨語りしたから下巻では物語が進むかと思ったら、まだまだ作者は語り足りなかったらしいく、もっと語るぞ!という決意表明?までしている。
「わたしは鯨に関する研究に労を惜しまない人間だ。わたしは鯨のもっと深い所を読者にお目に掛けよう。ところでイシュメールよ、一介のボート漕ぎにすぎないお前がそんなことができるのかね?」などと自問自答しているし、「鯨の血液内の細胞さえ見逃さないぞ!」「壮大な本を書くためには壮大な主題を選ばねばならない、それが鯨だ!」「鯨を考古学化石学地学的に考えるんだ!その思想が及ぶあまりの広範囲無限性に気が遠くなりそうだ」などと目標が大きすぎるんだかやり過ぎなんだかよく分からなくなってきている(笑)
多様される比喩隠喩などは後書の解説を頼りながら読み進める。この解説がかなり詳しい。本文でメルヴィルが鯨をあらゆる角度から鯨を調べて読者に語ろうとしているように、解説者は「白鯨」という作品自体を分析して読者に示そうとしている。
この解説によると、「白鯨」はメルヴィルが書いては出版社に送り、すぐ印刷に掛け、売り出さらた、ということ。
ということはあの鯨語りはほぼ推敲無しの書き下ろしか、すごいな。たまに辻褄が合わなかったり、結末がはっきりしないことがあるも、推敲無しならしょうがあるまい。
ピークォド号は日本近海にも来たらしい。「閉ざされた国日本」となんだそうだ。このころ日本は鎖国中なんだからしょーがないじゃん。アメリカはこの後油を取るための捕鯨船の補給場所として日本に開国を迫るわけですね。
なお、日本列島のことが「ニホン・マツマイ・シコケ」と記載されていた。解説だと「本州・北海道・四国」のことだそうだ。ということは「マツマイ」って松前藩か!そして九州は地図に無いのか?!
ピークオッド号は相変わらず白鯨モービィ・ディックに執念を燃やすエイハブ船長とそれに従わざるを得ない船員達。
第一航海士で良識派のスターバックはたまりかねてエイハブ船長殺害を目論んだりする。しかしスターバックは引き金を弾けない。
スターバックにはエイハブに「私にではなく、あなた自身に気を付けなさい」などと警告を送る。
エイハブはその言葉を噛み締め、自分には白鯨を追う以外の人生もあるのかと迷ったりもする。そんなエイハブをさらに人間の情で説得しようとするスターバック。
しかしエイハブをエイハブたらしめているのはやはりモービィ・ディックへの執念であった。
ピークオッド号と行き会う船として、他の船の話も出てくる。
ユングフラフ号は、鯨が取れずに自船の灯油さえ全くなくなり、ピークオッド号に無心に来る。この船の船長は俗物として書かれている。
サミュエル・エンダビー号の船長は、白鯨のせいで腕を失くし、鯨の骨で義手を作っている。義足のエイハブとは、義手と義足で握手を交わした。ただしエイハブ船長とは違い、白鯨モビー・ディック個体への復讐心は全くない。
レイチェル号との出逢いは印象的。エイハブが「白鯨を見たか?」と問うと「見た。そちらは漂流中の捕鯨ボートを見たか?」と問い返してくる。モービィ・ディックを拿捕しようとして行方不明となったその救命ボートには船長の息子が乗っているという。協力を求めるレイチェル号に対してエイハブは冷たく言い放つ。「わたしはモービィ・ディックを追うことが目的だ。今こうしていることすら時間を無駄にしている」
ついにピークオッド号は白鯨モービィ・ディックに追いつき、3日間に渡る死闘が行われる。
エイハブ船長は、最後まで自分を説得しようとするスターバックの心の気高さを認めて「自分と心中することはない」とピークオッド号に残し、自分はボートに乗りこむ。エイハブが持つのは、3人の異国人銛打ち達の血を浸したという特別作りの銛。
年老いて人間たちに銛を打たれ続けてさすがに衰えを見せるモービィ・ディックは、鯨でありながらもピークオッド号に攻撃の意思をもって迫ってくる。
引き裂かれるボート、折られる船の柱、打ち破られる船首。
銛に付けられた紐がエイハブ船長を海へと引きずり込み、スターバックたちの乗るピークオッド号本船も…
…原作はあんがいあっさりしている。昔見たグレゴリー・ペックの映画では、白鯨から船員たちを死に向かい手招きするエイハブ船長の姿、主要人物の最期の描写などかなり劇的だったんだけどな。
劇は終わりぬ。では何故にここに登場する者がいるのか?-ただひとり難を逃れて生還せし者がいたが故なり。
ピークオッド号と白鯨モービィ・ディックの闘いの一部始終を見て、それが終わった後にこうして語っているイシュメールが助かったのは、かつて熱病を発した”心の友、高貴なる野蛮人”クイークエグが死期を悟って作らせた棺桶をボート代わりにして海を漂い、二日後に漂流者として助けられたからであった。
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ようやく読み終わりました。いやー、長かった…
…というか、これ、名作なんですかね??正直よく分かりません。もちろん、背景には宗教的な含意があったり、また、白鯨はまさに「白人」の集合的象徴であり、船の乗組員たちは「アメリカ合衆国」の縮図的象徴である等、色々な解釈があり得、深読みができるようですが、体裁的にはまさに大作の「奇書」。何なんでしょうね、これは…
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ついにモービィ・ディックと対決!となるのだが意外とあっけなく終わった。ピークオッド号は、海上でいろんな船に出会っているけど、解説でその内容を振り返っていて、面白かった。
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【白鯨】
後学のためになんとなく読んでしまう、教養読書シリーズ。
エイハブ船長が私怨を晴らすため、モービィ・ディックを捕らえるための航海に出る。捕鯨船乗組員たちは興味ないが、だんだんと船長の狂気に巻き込まれていくことに。
古い本て行動や心情の変化を(現代の視点で見ると?)無駄に細かく描写するとこあると思ってて、この本も例に漏れず同じ書き方。しかも捕鯨や鯨に関するミニ知識の章がかなりの頻度で現れては、物語の加速感をブッツリ。断ち切るんだけど、物語よりそちらの方が面白かったりして何読んでるか分かんなくなる読書だった。
#読書 #小説 #世界の十大小説 #岩波文庫
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鯨のことを知ることはできた。
その他には人種や宗教に関する尊重というのか受け入れというのか。
しかし全体としてこの小説と言えばいいのか語りと言うのかをどう捉えたらいいものか分かりかねている。
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岩波文庫中巻、登場人物紹介の欄におもいっきり結末のネタバレ書いてあってワロタ。
週間少年「」のインタビューで藤子不二雄Aさんが絶賛していたので、あの人を作った本だと思うと感慨深かった。
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1851年
岩波文庫 上・中・下巻
訳 八木敏雄 挿絵 ロックウェル・ ケント
NOTE記録
https://note.com/nabechoo/n/ndc9d73c3a6d9
ちょっと期待値高めだったせいか、結局のとこ、思ったより面白いものではなかった。あとがきに、「知的ごった煮」「つぎはぎの構成」といった表現の言葉があった。それはそれで興味深いのだけれど、実際読んでると、個人的には興味を持てない、そういう部分が多く、微妙な感じ。こっちとしては、単純に海洋冒険、白鯨との戦いなんかに期待していたので残念。すごい知識量だと思うし、ユニークな文章や素敵な言葉もあったけど、そんなに良い作品だと感じなかった。
【下巻】(約400ページ)王には頭、女王には尾、仏・バラのつぼみ号、竜涎香、見捨てられそうピップ、ダブロン金貨、英・サミュエル・エンダビー号の片腕船長の白鯨の話、鯨のあれこれ、エイハブと大工、エイハブとスターバック、クイークェグ熱病からの復活、太平洋へ、鍛冶屋、日本沖漁場、バチェラー(独身)号、台風・嵐・雷鳴・稲妻、スターバック天使と悪魔、船員落ちて沈む、レイチェル号、白鯨情報、デライト(歓喜)号、追跡—第一日→ついに白鯨発見!エイハブ、モービィ・ディック登場!完敗、追跡—第二日→白鯨再発見、再戦!完敗、追跡—三日→三度目の正直!完敗・船沈没、モービィ・ディック去る、エピローグ、イシュメール生還、終。(始めに戻る?)
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長い活字の海を越え、鯨にも詳しくなり、いよいよ迎えた白鯨との決戦。エイハブ船長の狂気、醸し出される不穏な空気にハラハラさせられるが、最後は思いの外あっさりしているのがこれまた面白い。
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ここまでついてきた読者へのご褒美のような面白さ。恐怖も興奮も無常感も全部載せ。そして相も変わらず怒涛のボリュームでお送りされる鯨の知識知識!読者がエピローグを読み終える度に新たな鯨博士が誕生するのだ。夏休みにおすすめ!爽やかさとは程遠い閉塞感のある海の旅を楽しめる。「閉塞感」と表現してしまったが、『87章、無敵艦隊』のような心温まる章もあるよ!!
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モービイ・デックが哀れだ。
何故こんなに漁師達の目の敵にされて、追いかけ回され銛を投げ付けられなければならないのか。
読み終えて、底なしの虚無感に襲われる。
激闘が終わって船長エイハブは死に、白鯨モービイ・デックは多くの銛や絡まる綱を引き摺りながら全身に傷を受け、満身創痍で広い大洋のなかを彷徨う。
怒るモーデイ・ビックの反撃で、エイハブは帰りを待つ若い妻と娘を残してボートと共に海の藻屑と消える。すべてを見届けて語り部となるイシュメール以外、乗組員は皆因縁の死闘に巻き込まれて、それぞれの人生を強制的に遮断される。
ピークオッド号はナンターケットから半年かけて大西洋やインド洋を通り日本沖で漁を重ね、大量の鯨油を積んで赤道直下の決戦場に到着する。
鍛冶屋は銛を研ぎ、エイハブの義足を作り直し、大工は水葬用の棺桶修理もして決戦に備える。途中同じナンターケットのレイチェル号が寄ってきて、船長から白鯨との戦いで行方不明になった息子二人の共同捜索を必死に懇願されるが、エイハブは断り、モーデイ・ビックの追撃を続ける。先を暗示する現象や乗組員の不気味な行動が続くうち、とうとう「仇敵を大洋の囲いに追い込む」。
下巻は95章から135章まで、細切れの短い章建てでキレよく書き連ね、前半の悠長な解説と細部にわたる分析を経て、後半は動的な緊迫感で読者を巻き込み、ともに闘う高揚感を盛り上げる。
最後には荒波のなか白鯨モーデイ・ビックが怒りの形相で読者をも水浸しにする勢いで、真っ逆様に迫って来る。海の総力戦は二人の決闘で天井を打つ。白鯨だけが生き残り、棺桶を浮輪にしたイシュメールを残して船員は皆滅び、船の残骸がどこまでも続く静かな海にたゆたう。
読者を引き込む凄まじい表現力だ。
すべての叙述がリアルで、この死闘に収束すべく構成されている。
マッコウ鯨漁の壮大な叙事詩であり
名作古典の名に恥じない圧倒的な長編大作である。