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近代教育史の大家による、明治時代を中心とした学歴社会の形成史。概説というよりは専門的であり研究所というには平易で選書レベルなのかと思っていたらもとは選書。なにより、注があるのありがたく、教育史研究に臨む際の手引きとしてもすぐれている。やや古い感はあるが、日本の教育がなによりも実業などの必要に応じて(各省分立的に)急ピッチで形作られてきたこと、その再編成の起点として森有礼の「国家ノ須要」による統合が設定されることで一つの頂点がつくられ以降私学や地域の挑戦を受けつつも基本的には官尊民卑の風潮を色濃く持った教育空間が形成されてきたことを跡付ける。
特に自分の関心でいえば教員社会の章で、師範学校は普通教育の枠外であったこと(高等少学を卒業したあと数年間代用教員をする!)や、236p中等教員の学歴で学閥が存在したこと(帝大卒の下村の心境やいかに!)といった部分である。
とにかく、多くの名士の回顧録などがはくそうされており、読み物としても十分に面白い。一番は湛山回想で4回落第したという話が面白かった。(読んだはずだが覚えてないものだ・・・)