紙の本
のめりこむロシア旅行記
2006/02/26 08:06
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「つれて行ってやるんだからな。
日記をつけるのだぞ」
夫のロシア旅行に同行した妻は、こう言われた。
そして妻は、旅行中に走り書きをしたため、
それを元にこの本を仕上げた。
この妻とは、『富士日記』でも読む人をうならせ、魅了した武田百合子さんだ。
武田夫妻、そして友人の竹内さんが
「六九年白夜祭とシルクロードの旅」というツアーに参加する。
旅行会社の人も含めて10人のツアーで、
横浜港からハバロフスク号に乗った。
旅行のために家を出発するところから、
実にこと細かく記されている。
何時に起きた、誰が見送りに来た、どんな船だった…。
その日に食べたものも実に細かく箇条書きに記されている。
淡々と事実のみが記されているにも係わらず、
私はこの本を読みながら何度も爆笑した。
そして読み終わるのがなんとも惜しくて、
少しづつ読んだ。
例えば、こんな具合である。
「二人の少女はうなずき、二つある便所の片方を指して、
先へ入れとゆずってくれる。
しかし、この扉が、やっぱりまたかたくて、いくらひっぱっても開かないのだ。
二人の少女と三人がかりでひっぱると、扉は勢いよく開いて、
三人は重なり合って壁にぶちあたった。
用を足して出ようとすると、やっぱりまた開かないのだ。
ドンドン叩いたら急に開いた。
勢いよくとびでた私は、待ちうけていてひっぱってくれた
二人の少女もろとも、また壁にぶちあたった。
手を洗う私を、二人の少女は左右にきて、よくよく観察している。
私もよくよく観察させてあげる。
美人だなあ、と思っているのかもしれない。
そうだと、いい気持ちだ」。
ほんのすこし気難しい夫、頼りになる友人の竹内さん、
関西から参加している老人、ガイドの山口さんなどなど…。
旅行先で出会った人はもちろん、ツアーの面々への観察眼には圧倒される。
四六時中、一緒にいるのだ。いろんな面が見えてくる。
それが百合子さんの筆にかかると、実にいきいきと
そして魅力的に描き出される。
百合子さんは旅行中で起こる出来事に対して、
なんでもおもしろがって、ひとりで嬉しがったりする。
そんなところが、少し私に似ているかなぁと思い、
余計にこの旅行記にのめりこんだ。
当時のロシアの様子も興味深く読んだ。
読み終えた時は、私もすっかりこの旅行に同行した気分になっていたので、
少し淋しい気持ちになった。
そして、こんな旅行記が書けるといいなと思った。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
夫、竹内好、百合子の3人によるロシア旅行の記録。
観光地を次々に回るツアーの中、武田百合子が目を引いたもののみを綴ってある。ロシアの観光地のことはほとんどわかりませんが、当時のロシア人たちの暮らしが手にとるように分かってしまいます。ロシアに行こうがどうしようが、自分の基準で「おもしろい」「おもしろくない」をはっきりと言い、現地の人とでたらめな言葉で堂々とコミュニケーションをとる武田百合子って国際人だなぁ、と思いました。そこらへんに落ちてるかけらやら標識やらをお土産にしようと手提げに入れたりするところ、笑えました。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
武田百合子さんは私の目標とする日記を書く人。目標としてる割には武田さんのようにはかけないけれど。ロシアの旅行日記なのに、あまりロシアの観光について書いてない。でも、ゆりこさんの感じたことが面白くて、興味深い。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
とにかく好きな一冊。
夫である武田泰淳とその友人竹内好とのロシア旅行の日記。
旅行記というより日記という感じ。
かわいらしいエピソードが満載
よく食べて、よく考え、よく動く人だ。
まるで好奇心が歩いてるよう。
楽しい旅をともにした気分で読んだあとがきの
最後の一文に涙ぐむ。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
旅行記だけど観光についての記述は僅か。なのに読むとロシアに行ってみたくてたまらなくなりました。旅の間に見た面白いもの、人、できごとが素直にかわいらしい表現で綴られている素敵な本。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
独自の視点が楽しい旅行記。読み終えて「あのね、銭高老人がレストランでね・・・」と本の内容を語る私に「あなたも旅してきたみたいな話しぶりね」と母。だって本当にそんな気分だった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
昭和40年代のロシア旅行記。同行した人間の描写が楽しい。市内の様子や、現地の人との交流、さらには毎日の食事や、かかった費用など細かく記載されているので、当時の様子がよくわかります。いつも冷静にそして、温かく、独特のセンスで綴られた旅日記は、最後まで飽きさせません。何度でも読み返したくなる1冊です。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ロシア旅行記。
読めばきっと「わしゃよう知っとった」の銭高おじいさんが好きになってしまうでしょう。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
夫武田泰淳とその友人竹内好とのロシア旅行記です。かれらの頃は、ロシアというよりソ連ですが。
わたしはソ連はもちろんロシアも行ったことはありません。しかし、ぎりぎり社会主義の残滓を漂わせていた頃の中華人民共和国に留学していたので、百合子さんたちが旅したソ連の雰囲気がなんとなくはわかり、あたかも自分が旅しているかのような錯覚に度々とらわれます。
同じ武田百合子による『富士日記』同様、素朴にして美しい文章にうっとりしてしまいますし、武田夫妻のあまりに理想的な夫婦のありかたに愛についても考えさせられます。
また、武田泰淳の小説や竹内好の評論にはまった者にとっては、かれらの等身大の人間の姿がありのままに描かれていることも興味深い。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
きれいな文章に、涙がでそうになる。
この本をきっかけに、こんなふうな夫婦になりたいと思った。
こんな女性になりたいとも思った。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
淡白な旅行記です、主観的でもなく、背伸びするわけでもなく、無知も認めて著者が等身大で見たものを描写する。いけしゃあしゃあと悪態をつくところが、鈍いパンチが効いています。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
実はまだ読破してないんですが。昭和のロシア旅行記です。俺は食べることが大好きなので、武田百合子がいちいちその日食べたものに詳細な記録を残していることに非常な感銘を受けました。大げさに描写していないのに、彼女がおいしくその土地その土地のものをいただいているのがよくわかる。俺もそんな風に食事を楽しみながら旅できる人間になりたいと思いました。
食べることメインの本ではないみたいですよ!E
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
冷静で、ユニークな視点。かわいらしいエピソード。意地悪なコメント。すべてが素晴らしい。
すごく昔のソ連(!)旅行記。とても新鮮。行ってみたかったなー。
限りなく5に近い星4つということで。図書館で借りのだけど、やっぱり購入するつもり。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
著者のロシア旅行記。
著者の文章も、遺跡や名所を見る態度も、飄々としている。食べたものが一々書いてあるが、それもどこか観察日記のように素っ気なくて、これまた良い感じ。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
油断すると兄が持っている本ばかり買っている。
おいしいご飯をむしゃむしゃと食べるがごとく読了。
読んでいるあいだ、嬉しくて、終始にやにやしてしまった。