紙の本
ハウツー本の対極にありながら、プレゼンに関する奥義がここに
2006/08/01 21:03
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書にプレゼンテーションの具体的な技法を求めてはいけない。プレゼンに関するハウツー本は世の中にすでに多数ある。そのほとんどが、「パワーポイント」の効果的な使い方に関するものだ。本書の著者は、そのようなハウツー本を否定する。小手先のテクニックに走り、心のこもっていないプレゼンは評価に値しないと言う。
著者が言わんとするところは、実に単純明快で、何も特別なことではない。プレゼンしたいものに対する自分の熱い思いを率直に語ること、聞き手に対して誠実な態度を取ること、すべての聞き手にほめられると期待してはいけないこと、平凡なテンプレートには手を出さないこと、山場とひと息つく場面のメリハリをつけること、などなど。
プレゼンテーションに限らず、何事も極めれば、たどり着くところはシンプルで、余分なものが削ぎ落とされた世界なのだろう。それは、禅がたどり着く境地にも似ている。禅では言葉による問答も重視されるが、最後には言葉を捨て、ひたすら黙して座禅を組むというところへ行き着く。
著者は、数々のプレゼンを自ら実践し、相当にいろいろなことを試してきた人である。また、グッドデザイン賞の審査員として、長期にわたり多くのプレゼンを見てきた人でもある。そういった経験に裏打ちされているからこそ、著者の語る言葉は説得力を持つ。プレゼンテーションのプロとも言える著者であるだけに、悪いプレゼンテーションには厳しい批判の言葉を飛ばす。あまりに厳しいその言葉は、人によっては反感を買うおそれもあるほどだ。しかし、不思議と反感を覚えないのは、著者がこれまでに膨大な経験を積み、今も日々の実践に手抜かりがないからだろう。
著者の具体的なプレゼンの例は、意外なほど明らかにされない。しかし、物足りなさを感じないのは、主としてプレゼンテーションに臨む心構えをしっかり説いてあり、それが相当に真実を突いていると感じさせるからだ。ただし、著者のプレゼンは、2台の大型スクリーンを用い、音響効果にも凝るなど、機材的には素人の領域を超えている。
さて、著者の説く心構えをそのまま実践してうまくいくだろうか。私はやや懐疑的である。著者の言っていることが間違っているわけではもちろんない。あまりにも真実を突きすぎて、凡人が真似ようとしても、表面的なものに終わってしまう感じがするからだ。たくさんのプレゼンをこなしても、どうも相手にうまく伝わらないので工夫に工夫を重ね、自己反省も怠らないような人が、著者の言うことをよく消化し、同じ境地にたどり着いて、成功を収めるのではないかと思う。
安直にマニュアル的に図解せず、プレゼンテーションの核心を平易な言葉で説く本書は、正真正銘のプロによって書かれた本だ。読みやすく、かつ、これほど示唆に富んだ本に最近出会っていなかった。最初の10ページほどを読んでみて「これはいい本だ」と感じた人は、購入しても損はしないだろう。最後まで、一気に読みとおしてしまうこと確実である。他人に対する以上に自分に対して厳しくあろうとする著者が、力を込めて書いた快作と言ってもよいだろう。
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デザイナーで医学博士の川崎和男先生。心臓に疾患を抱え、「川崎和男はあんな不恰好な物を体内に入れているのか」と言われるのが嫌で自ら人工心臓をデザインしてしまったというトンデモナイお方。曰、プレゼンテーションとは「自己の中で生まれた(思いついた)わがままを、誠実さをもって相手に伝え説得するという、発想・表現・伝達の過程である」こと。そして、3つの過程を同等に扱い「我が侭(=自分そのままの形)」を「良い加減(=調度いい具合)」に自分を「魅せる(=魅力溢れる存在として表現する)」ことであり、それは決してPowerPointというツールを使いこなし「一見良くできたプレゼンテーション原稿」を用意することではない、と。(←日本語は漢字という伝達手段によって、同じ音でもまったく意味の違う事柄を伝達できる素晴らしい言語だ)一度だけ先生の講演を拝見した事があるが、「あぁ、この人は自分の仕事に無尽蔵の自信と情熱を傾けられる人だ」と思わせる、とても我が侭に話されていたのが印象的だった。指南書というよりはグッドデザイン賞の審査委員長として数々のプレゼンテーションを聞き、また自身もデザイナー/学者として数々の発表を行ってきた身として、見た目を重視する風潮に警鐘を鳴らしているかのような一冊。
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仕事柄、講演やプレゼンの機会が多いがこの本は非常に役に立った。
よくあるノウハウ本や小手先の技巧を解説したものではない。
プレゼンの本質とは何か、「わがまま」なプレゼンとは何か、それが10の極意に凝縮されている。
この本は初心者が読む本ではない。
プレゼンにある程度慣れた、そしてもう一皮剥けたい人には文句無くお勧めできる。
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パワポ全盛のプレゼンの中、本当に必要なこと、心構え、といったことに関して、初心にかえらせてくれるというか、そんな感じ。
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プレゼンテーションの意味というものを考えさせられる一冊。
いつか自分も自分の案を自信をもってプレゼンできるようになりたいと思わされる一冊。
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デザイナー川崎和男の著作だ。例によって歯切れがよい。一気に読める。
一見、ビジネスハウツー本だが、この著者のこと、ちょっと違った切り口である。
不遜に見えて、実は、誠実・真面目なプロフェッショナル。
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中央図書館 361.4/K22
タイトルから想像するハウツー本とは少し違います。
レポート作成と直接関係はないけれど、他人に自分の考えを伝える、という意味で一読してみては?
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カンブリア宮殿を見て、川崎和男氏を初めて知った。
その時、このデザイナーがどのような哲学を持った人だろうと興味を抱いた。
内容はプレゼンにおける心構え、考え方について。
プレゼンの根幹に当たる部分を川崎流に紐解いている。
自らの経験談も豊富で、とても読みやすく、印象深い。
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・プレゼンは、自己実現の手法である。
・3要素・・・発想、表現、伝達 → 恋愛とまったく同じ
・+2要素・・・わがままを口に出す、誠実さ
・人間は、自己のギャップに異常なほどのストレスを感じてしまう動物だ。
・権利を行使する為には、その背後で果たさなければならない義務がある。
・自分のアイデアを死ぬほど愛することが重要。原点。
・プレゼンにおいて、評価や評判を決して望んではいけない。
・シナリオは忘れて、心の縛りを無くせば、楽しくなる。 その場の雰囲気でスライドを飛ばしてもかまわない。
・スライドの文字は、発表者も目で追って読んでいく。←聴衆の速度に合わせるため。
・プレゼンに秘策・・・3枚のカード
「ABC 説得はかけて・説いて、納得は、その心は」 並べ替えOK
・敵のできないものに、真の味方は生まれない。
・プレゼンをできる機会に感謝する。
・文章は、1行の文節、5行の文章。
・効果的な運び方・・・話を聞かせながら、文字でのプロット、ストーリーを補足すること。この1点に尽きる。
・濃紺地に白文字、または黒地に黄色時がgood。
・ミラノのサラリーマンは着こなしがカッコイイ。
・印象に残るプレゼン:好安記・・・好奇心を刺激、安心感、記憶に残る。
・英語の質疑応答対策
①週刊誌Newsweekの最後のページ「The Last World」をできるだけ覚える。
②インタビュー番組「アクターズスタジオインタビュ-」を視る。
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「はじめに」を読んだ瞬間から、
この本を理解するのは難しいと感じた。
非論理的で、
技術系プレゼンテーション向けではないです。
参考までに。
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年末のプレゼンに向けて図書館で借りて読んでみた。
テクニックと言うより精神論的な話だから一気に読んで2日。
プレゼンに対してプレッシャーが軽くなった。
・けなされることを恐れるな
・シナリオは忘れること
自分のこだわり、わがままを相手に伝えきること。と考えれば今までよりずっとプレゼンを楽しもうと思うし、そんな機会を与えてくれることをありがたく思えるようになると思う。
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プレゼンの心構えを考えさせられる一冊。自分自身のこだわりがどこまであるか。想いがどれだけあるか。本当に気持ちを込めているか。出来ていない事を嘆くのではなく、改める事を発起させる非常に良い内容でした。
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デザイナーの方が書かれているだけあってやはり伝えるという事について熱く書かれている。
ハウツー本ではなくプレゼンに対する考え方が主に書かれている。
中々ここまで勝負に出るのは難しいが、インフォーマルな研究会などで一度は試してみたいと思えるような内容だった。
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プレゼンテーションとは未来への夢として「発想」、「表現」、「伝達」を欠かせない基本要素として、「わがまま」を「誠実に」貫き通せと説く。そして「形式ではなく内容で」とし、好奇心を刺激し、安心感を与え、記憶に残るようにせよと締めるとても気合いの入る一冊です。
先日某所でプレゼンをする機会があったので、積読本であった本書を引っ張り出して気合いを入れました。そこでは本書に習いソフトウェアのプレゼンにありがちな機能の説明などは最低限にして、自分のソーシャルメディアでの体験などを主軸に「わがまま」な構成としました、その時はベストな構成と思いましたが、後で反省しきりです^^;また、本書で書かれている聴衆との「呼吸感」などには遠く及ばない状況、修行ですね。
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川崎和男ファンとしては、また川崎節にやられる一冊でした。 パワポバッシングをキホンにして、オレ様の目にかなうプレゼンはそうそう無いぜ、だけどあのプレゼンはなかなかだったなぁ…的な語り口。 メロメロです。 グッドデザイン賞の審査委員、委員長の経験を元に、語り方、立ち居振る舞い方、服装、心構えのポイントなど、彼なりの理論をぶつけられる。 半死の状態の病床で書きつづったモノとは思えない、というかだから読みやすいできになってます。
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自分のアイディアを具現化するために、なんとか相手の理解を得ようと説得しようとすることがプレゼンテーションだと、いう。
基本要素は、発想・表現・伝達の三つ。
自分の作ったモノや発想に対し、心から愛着を持っていることが大原則である。
よって、愛着なしに表現のテクニックを磨く事は、無駄な行為だと言い切る。
発想・表現・伝達をする上で必要な要素は、わがままと誠実さだという。
自分の想像力と創造力を問い直し、必ず現れる何割かの批判的な聴衆に心折られることのない凛とした"オシ"を作ること。
それは発言者の生き方から滲み出てくるものだという。
10のポイントから今汲み取れる事は、
日々の生活での徹したこだわりと生活圏をはみ出したアンテナの張り方の大切さ。
表現者として、プレゼンテーションをコミュニケーションツールとして駆使し、
社会へどれだけ関わっていけるか?
そのための苦悩や手間、重圧を引き受けられるか?を問われる書であった。