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紙の本
『ルパンの消息』もだけれど、正直、男子高校生の不良ってのが厭なんです。
2005/07/22 19:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
期待の作家、ヒキタクニオです。ま、期待、というと私のバヤイ、かなりの数の人がいるわけで、だから何だ!ということはないのだけれど。で、この本のタイトルを見たとき、???と思いました。書店で実物を見たときも、正直、三人のいかにも窪塚を思わせるツルツル頭が嫌で、ひきました。
その桃色が何だか怪しい装幀アートディレクションは飯田信一(GAGA)、装画イラストレーションは木村タカヒロ。
ちなみに、製本所は株式会社石毛製本。ここでちょっと脱線、というとJRの事故のせいではありません。実は社長さんを存じ上げているのです。いや、それどころか常務さんや、お友だちの建築家、工場で働いておられる方から出入の業者の方々まで知っています。製本所というものが印刷会社とは別に単独に存在し、しかも仕事ではお得意さんがあって、たとえば集英社だと石毛さんだとかナショナル、若林さんといった会社が主に製本をしているとか。で、やはりこの世界も競争が厳しいとか。うーん、結構ディープなんです。奥付には経済情報が詰まっている、ナンチャッテ。閑話休題。
桜小僧は、荻窪に住む三人の私立男子高校生が言い始めた言葉です。言葉と言っても辞書に載っているわけではなく、童貞のガキが自分達をそう呼んでいるにすぎないのですが。
チェリー・ボーイというアメリカの古臭い隠語を聞きかじった一人が、「チェリー・ボーイってことは、日本語にしたら、桜小僧ってことじゃあねえの」とレベルの低い和訳を考えたのが始まりだった。
というのが、本文の「桜小僧」の章、冒頭の文章で、その三人の私立男子高校生というのが、16歳の佑太、康世、義信ということになります。話は、ひょんなことからこの三人のガキ連の内、佑太を除く二人が渋谷で知り合った26歳の広告代理店に勤務する美女・薫子さんにに筆おろしをしてもらい、それに佑太が地団駄を踏んで、俺にもやらせろ!と騒ぎまわるところから始まるのです。
ま、話は軽いノリでしかも急展開をしながら動いていくので、読んでもらうのが一番ということにして、この三人を個別に紹介しておきましょう。
一応主人公といっていいのだろう佑太は、父親と妹で中学生の咲との三人暮らし。母親は亭主に愛想をつかしてとっくに家を出ている。親父、というのが単純な鉄拳オヤジでともかくキレやすい。簡単に子供を殴る。で職業が団体職員。なんと、日本で黒人解放運動系の団体の幹部をしている。生活が苦しいかどうかは不明だけれど裕福ではないことは確かで、父親の好物は納豆。
体格がしっかりしているのが康世は、小さな時に両親を無くし祖父母の手で育てられた。そのお爺さんというのが趣味でやっているのが豆の店で、特別な煎り方をしているらしく「豆自慢」のあだ名に恥じない仕事をしている。悪ガキだったせいか、相当に浮名を流し今でもファンのばあさんたちがたくさんいる。孫たちと焼肉を食べて張り合ったりと、かなり元気がいい。
長身の義信の父親というのが変わり者で大学の助教授か講師かをやっているが、「シーズンスポーツ愛好会」という名前は穏健、中身は遠泳、ロッククライミング、居合抜きというかなり硬派な団体を主宰している。ただし、そのことは話にあまり出てこなくて、ガラス張りの家に住んでいることが重要。マジでガラス張りの家で入浴と排便時以外のプライバシーは、ない。建築家のお遊びにクライアントが乗せられるという、世によくあるケースではある。勿論、丸見えなのは内部でのことだけではなくて外からもズッポンポン。
それに女子高にいる辺(ほとり)と由加という凸凹コンビがいます。佑太の視点で行くよな、と思っていると、これがあにはからんや動いていくので一瞬、戸惑いますが、分ってしまえば流れに乗るのが一番。ちょっと甘めの部分、とくに辺とのことはデレデレだけれど、面白いから許します。
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