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“「アユミちゃん、でいい?」
「うん」
「じゃあ、決まり!自分の名前を思い出すまで、アユミちゃんだ」
少女、じゃない、アユミちゃんが顔をふせた。
「なんだか、自分のことを思い出すのがこわいような気がする。思い出しちゃいけないような気がする」
ぼくは言葉につまった。
でもヒロシが、ポンポン、とアユミちゃんの背中をたたいた。
「気にすんなよ!」”
展開のテンポの早いこと。
“いちばん先にトラの檻に近づいていったのはサンタだった。いつもは、ボーッ、としてるけど、動物のことになると元気になうr。ぼくたちのなかで、いちばん動物好きだ。クロもいちばんはじめになついた。
「すごいなあ、すごい、すごい……」
サンタは檻のすぐそばまで近寄っていく。目が、きらきら、とかがやいている。
「サンタ、だいじょうぶなのか?」とぼく。
「こわくねえのかよ」とヒロシ。
「かまれてもしらないぞ」とジロウ。
「近づかないほうがいいよ」とスエキチ。
アユミちゃんはだまって見つめている。
トラは、のそのそと歩く。サンタの目の前まで来て、ピタリ、と止まった。”