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紙の本
怖くて、美しくて、うっとりと愛しくて
2012/03/10 07:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:お月見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「光車よ、まわれ」などの独特の世界をもった幻想児童文学を書かれている天沢退二郎さんの短編集です。あとがきでは、発刊当初、一般書の体裁で刊行し、初版一刷で絶版となっていたものの復刻版とあります。確かに、天沢さんの本は児童書コーナーでばかりチェックしていて、ほかにも詩集や宮沢賢治の研修著書なども出されていたのですが、大人本コーナーはノーチェックでしたので、復刻版で初めて読みました。
マリ林さんの塗画と挿画も原本のままとか。確かにこの怖くて、美しいお話たちにぴったりです。どの挿絵も、小さなカットすらも、物語りも世界と溶け合ってイメージが広がり、じっくりと見ほれてしまいました。
短編集とはいえ、最後におさめられた「グーンの黒い地図」は、中篇といっていいぐらいのボリュームで、「光車よ、まわれ「や「オレンジ党シリーズ」にも通じる、日常の中に紛れ込む異界への恐怖と異界のものたちとの戦い(戦い、というよりは、もっと近しいものとのあいまいな葛藤のような感じですが)が描かれます。冒頭の、小学校時代の記憶が呼び起こされる掃除や校内放送の音楽のさわりが懐かしい。そこから一転、主人公を呼び出すアナウンスが妖しい世界への扉を開きます。
天沢さんの、独特の曇り空のような文章が、じわじわと怪異の怖さをかきたてます。例えるなら、雨の日に憂鬱な気持ちで学校に行き、濡れた体がじっとりと重くて、プールで泳いだ後みたいに眠くてぼんやりしているような。だけどそのぼんやりが、どこか心地よくもあって、そのままずうんと教室の床の下までもぐってしまいたいような。
他にも、夜中に汽車を見に行く少年の幻想譚、「夜の道」(読んでいて「三枚のお札」とか、「マクベス」をイメージしました)や、マリ林さんの人形少年少女の挿絵が、ほんとに怖い、「人形川」など、美しくて妖しい魅力にあふれた物語が堪能できて、ぜいたくな短編集でした。
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