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日本は日露戦争に勝った後、戦史を編むのに都合の悪い部分は省いてしまったらしい。ところがロシアはかなり客観的にこの戦争を記述していた。このころ軍紀がよかったというのも、早くヨーロッパの先進国の仲間入りをしたかったようだ。しかし、それが本物でないゆえに、後の不幸を生むもとにもなった。いわゆる植民地戦争のあとに起こった世界規模の初めての戦争で、第一次大戦を予想させるものがたくさんあったという指摘も面白い。
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日露両国の視点に絞って書かれた簡潔な日露戦争史。
戦略、外交を巧みに用い、なんとか勝利にたどり着いた日本と、ほとんど何も戦略のなかったロシアというのがよく分かる。
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ロシア側の資料の中でも、ソビエト時代に書かれ、しかも日本の戦いぶりを評価したスヴェーチンの論に刺激を受けてかかれたという。とりあえず通史としての論点は押さえているとは思うけど、やっぱり「ニッポンよい国強い国」的な表記が目立つなぁ
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国際政治学にはセキュリティジレンマというのがある。
国際社会は常に戦争の危機を孕んでいるので、対立する2国の間では一方が自国の安全を増大させようとすると他方は不安を増大させ悪循環を生みやすい状況が生じる。
ロシアでは緒戦の失敗の責任者探しが始まった。ユダヤ人は愛国心が乏しく部隊に悪影響を与える存在だという認識が広く共有された。朝鮮人や中国人などの黄色人種も対象とされた。
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全9章、200ページ。
戦史として本書を読むと失望するだろう。
本書は外交史としてよくまとまっている。
巻頭に朝鮮の地図がある。精読にあたって何度も眺めることだろう。
初めに日露戦争前の国際情勢について、簡単な説明が30ページほど。
次に地図、鉄道、朝鮮半島など地政学的に無視できない地理の解説があり、主題として日露の利権及び外交交渉を扱っている。
戦争については、5~7章でサッと流している。奉天、遼陽、日本海海戦あたりだけはやや詳しく描かれている、といったところ。
終章にて講和とその後の日露両国の行方について触れている。
初版は2005年。
巻末の参考文献にも比較的新しいものが多いので、まだ生き残っているものが多いのではないかと思う。
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[ 内容 ]
日露戦争は、日本とロシアにとってはそれぞれにきわめて影響の大きい戦争であったが、客観的になかなか評価が確定していない。
戦後一〇〇年にあたり、その地球規模での意味に言及する試みがなされているが、本書は、ロシア近現代史の視点も含めて、戦争の背景・経過・影響を通覧しようとするものである。
双方の認識に極端な差があったことが、戦争の帰趨にどのように影響を及ぼしたかを明瞭に伝える。
[ 目次 ]
序章 世紀転換期の世界
第1章 世紀転換期の日本とロシア
第2章 戦争の地理学
第3章 政事と軍事
第4章 戦争への道程
第5章 開戦
第6章 陸と海の絆
第7章 終局
終章 近い未来と遠い未来
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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日露戦争における日露両国の国家戦略を概説。火遊びのつもりのロシアと生き残りをかけて必死だった日本。このギャップが戦争の帰趨を決めたと言っても過言ではありません。
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日露戦争に至る国内外の情勢から戦争過程とその影響と歴史的意義を国内、世界の両面から分析。多くの資料から要点が簡潔にまとめられていて読みやすく、現在にまで尾を引く日露関係、その上流からの流れが良く分かる。
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佐藤優氏の推薦本のひとつ。
外務省官僚である著者がロシア駐在時代にまとめた資料による著書。
新書らしく、さっぱりとまとめられている。
本書の特長として、ロシア閣内の不一致が時系列で簡潔に描かれている点を挙げておく。
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―第0次世界大戦は如何にして起きたか
日露戦争の歴史的意義や当時の国際政治の背景について述べた本。特に戦争に至る経緯についてはかなり詳細に筆を割いている。日本側はともかく、ロシア側はかなり重臣間の見解の不一致が深刻だったことがわかった。
さて、当書を通じて参考になったポイントを4点に絞って述べてみよう。
1.三国干渉
ロシアが三国干渉を行った背景としては、蔵相・ウィッテの影響が大きい。彼は皇帝専制下での国力増強を図り、シベリア鉄道建設を推進していたが、日清戦争での日本の予期せぬ勝利から、日本の膨脹を警戒し始めた。そこでドイツやフランスを巻き込んで日本を圧迫、遼東半島を清に返還させ、その見返りとして旅順・大連など関東州の租借権を獲得。東清鉄道や旅順軍港の建設といった政策に着手する。
一方で満洲ではロシア人の増加に反発した清人が破壊活動を始める。これに対してロシアは軍を奉天省に進出、駐留させたが、日本やイギリスの不安を増大させる結果となった。
2.日英同盟
19世紀においてイギリスは孤立主義(いわゆる「栄光ある孤立」)を掲げていたが、日英同盟の締結はなぜ円滑に進んだか。それについては、日本とイギリスがロシアの南下を警戒するという見解で一致したため、というのが通説である。が、著者はこれに加えて2つの要因を挙げる。
1つ目は満蒙交換論を持説とする対露協調派の重鎮である伊藤博文が国外にあったのに対し、ロシアとの戦争は免れ得ないとする山縣有朋が条約を支持した点。
2つ目は内容の限定性。即ち、両国の一方がロシアと交戦したことで、第三国がロシア側について攻撃された場合のみ直接軍を派遣するという内容である。当時イギリスは露仏同盟を控えていたため、日本につくかロシアにつくかで揺れていたが、この限定的な内容のために、日本につくことを決めたという。さすが三枚舌外交でパレスチナ問題の火種を作った国なだけはある。
3.開戦
その後、日露両国は朝鮮半島や満洲の権益を巡って交渉を重ねるが、互いに譲らなかったため、日本には戦争のみが有効な打開策となっていた。開戦すると、日本は陸軍の黒木為楨大将らや海軍の東郷平八郎大将らが朝鮮半島と制海権の確保により先制、ロシアは鉄道の輸送能力の不足と総司令官アレクセーエフと満洲軍司令官クロパトキンの不和により混乱していた。
その後は旅順攻囲戦や奉天会戦などの消耗戦が続き、1905年9月、アメリカの仲介によりポーツマス講和条約を結ぶことになった。戦争の経過について、本書ではさらに詳細な内容に触れているが、ここでは省略。
4.日露戦争とは
ここでは本書の内容を概観している著者の見解を引用する。
以上に見てきたように、日露戦争はその規模においても、また用兵のレベルでも、利用された兵器のレベルからしても、さらには長期戦を支える前線と銃後の密接な関係からしても、この時期に頻繁に起こった植民地戦争とはまったく異なるものであった。ひとことでいえば、戦争は普仏戦争以来三〇年以上も存在しなかった大国と大国の戦争だったのである。ここには、塹壕戦と機関銃の組み合わせ、情報と宣伝の利用能力、制海権の確保に関わる陸軍と海軍の連携など、ヨーロッパ諸国が第一次大戦で学ぶ戦争技術のほとんどが、明瞭に、もしくは萌芽の形で現れていた。ロシアは、日本を基本的に植民地レベルの国家とみなしていたために、厳しい試練を味わったのである。(同書194頁)
この他、後世への影響としては、日本での日比谷焼打ち事件や藩閥政治批判による政党政治を志向する世論の形成、ロシアでの国会開設(地主の1票が労働者の45票に相当するなど、極めて不平等な選挙によるものだが)などが挙げられる。もちろん、第一次大戦の陣営が日露戦争の時点でほぼ決定的になったことも忘れてはならない。そういう意味で日露戦争は「第0次世界大戦」と呼ぶこともできる。
全体として。あまり一つの戦争に注目して本を読んだことはなかったので、骨は折れたが勉強にはなった。あと、賛否両論はあるけど司馬遼太郎『坂の上の雲』も読んでおきたいところ。
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日露戦争は、日本とロシアにとってそれぞれにきわめて影響の大きい戦争であったが、客観的になかなか評価が確定していない。戦後一〇〇年にあたり、その地球規模での意味に言及する試みがなされているが、本書は、ロシア近現代史の視点も含めて、戦争の背景・経過・影響を通覧しようとするものである。双方の認識に極端な差があったことが、戦争の帰趨にどのように影響を及ぼしたかを明瞭に伝える。
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二十世紀における最初の大国間戦争であり、日本とロシアが対決した日露戦争について解説した本。日ロ双方の戦史・外交史を用いながら、戦争の背景・経過・影響を概説する。
本書の最大の特徴は、日露戦争を日本とロシア双方の視点から論じている点である。特に多くのページが割かれている日露戦争の背景(前史)においては両国の外交の内部事情が詳細に記されており、中・高の日本史では取り上げられなかった戦争の裏事情が語られている。個人的に驚きであったのは、戦争の要因の一つとされる「ロシアの南下政策」が一貫したものではなく、寧ろ日本とロシアの相互認識のズレが戦争の要因であったという指摘だった。
既に他のレビューでも述べられているように本書は戦史と言うよりかは外交史に比重が置かれているが、日露戦争を概観するのにおすすめの書と言える。
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司馬遼太郎「坂の上の雲」で注目されるようになった日露戦争。しかし、その評価は戦争そのものよりも、秋山好古や東郷平八郎、乃木希典などの日本人物史の背景としての要素が強い。それでは、世界戦争史の中で日露戦争とはどう位置づけられるのか。
日露戦争をきっかけに塹壕戦や機関銃が登場し、陸軍と海軍の綿密な連携などが戦争技術の主流となった。その結果、戦争は大規模化し、国家は勝利のために経済のほとんどをつぎ込むようになった。また、日露それぞれはイギリスとフランスと同盟を結んでいたので、日露戦争が世界大戦に発展する可能性もあった。
こうして考えると、日露戦争は10年後の第一次世界大戦につながるプレ世界大戦だった。20世紀初めの欧州中心の時代では、極東の局地戦争に過ぎないのかもしれないが、実は世界史レベルでもっと注目されるべき出来事なのかもしれない。
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日露戦争に至った時代背景、開戦、そして終戦までの流れをまとめた本。七章だが、戦術的な点は五章、六章と少な目。それよりも時代背景やこの戦争がどういった位置づけだったのかなどが纏められている。少し残念なのはこの戦争が終わった後、両国がどうなったのかについての記載まとめが最後少ない点だろうか。バランスとしては非常によくまとまっていたというのが正直な感想
●メモ
・植民地戦争
いわゆる白人が非白人の国を植民地化する戦争。アメリカ兵は母国の家族にフィリピン人の「知的文化的後進制」を繰り返し言及したほど。
・イギリスとの同盟
基本的に日本はアジアの小国であり侵略対象だが、ヨーロッパの微妙なパワーバランスによってイギリスと同盟が組めた。だが、この同盟条件は極めて限定的で、第三国が参加してきた場合のみ支援する、というものだった。
・シベリア鉄道
1891年から建設開始。これによりロシアが遠距離への出兵が容易になる点を日本は早期から懸念していた。戦争を早々に開始した、一つの要因ともいえる
・朝鮮半島の重要性
この本を読むと朝鮮戦略が単なる領土拡大ではないことが良く分かる。ここを拠点としなければロシアとの戦争に勝つことはできなかっただろう。国を守るために、他国を侵略するという矛盾。
・交渉決裂
日本は交渉と考えたが、ロシアは日本からの要請として考えたのではないか。これはロシアが圧倒的国力を保持しているため、日本は妥協するしかないと考えていた思いこみだった。だが、ここで妥協しては侵略されるのみしかないと考えていた日本は、交渉を続けながらも平行して戦争の準備を進める
・開戦
印象的なのは日本の奇襲だ。交渉断絶の通知をしたとはいえ、卑怯ではないかというロシアの意見は実に最もだが、当時の国際法では違法ではなかったそうだ。この発想がペルシャ湾に繋がるのか、とも考えてみたり。。
・終戦
豪胆な子供が挑んだ巨人への戦いは、巨人のダメージのほうが大きく、それが結果的にロシア国内での不満増加など国内の混乱も呼んでいく。最終的に制海権を奪えなかったロシアは日本を降伏させる手段を失い、アメリカのルーズベルト大統領の斡旋により講和。だが圧倒雨滴国力のロシアは「講和条件次第では戦争継続」という姿勢。
日本は、満州南部の鉄道及び領地の租借権、大韓帝国に対する排他的指導権などを獲得したものの、軍事費として投じてきた国家予算4年分にあたる20億円を埋め合わせるための戦争賠償金の獲得ができなかった。そのため、条約締結直後には、戦時中の増税による耐乏生活を強いられてきた国民によって日比谷焼打事件などの暴動が起こった。
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日露戦争の勃発した背景や戦争の展開、また日本が勝利した結果によって、日露双方にとってどの様な展開が待ち受けていたのかを分析した一冊です。ロシアのバルチック艦隊が敗れたことは知っていましたが、なぜ大国のロシアがアジアの小国の日本に敗れたのかはまったく知らなかったので本書の分析は為になりました。