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イギリスではなぜ散歩が楽しいのか? 人にやさしい社会の叡智 みんなのレビュー
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紙の本
見習いたい、その魂
2006/09/04 05:04
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
安易な一般論としての「日本という国は・・・」とか「日本人はなぜこうも・・・」といった、十把ひとからげの論理には辟易する。
同様に、ひと時多く聞かれた、「イギリスはすばらしい」「イギリスの国民性に見習うべき」といった全面礼賛的な空洞理論には与したくない。
しかし、しかしである。日本は、なぜこうも暮らしにくい国なのか。日本はいつのまに、3万人という小さな自治体ひとつ分の人数が一年の間に自殺してしまうような国になってしまったのか。それに比べて諸外国は・・・といった羨望を想わざるを得ない。
この本の著者は、経済アナリストとしてイギリスに長期滞在する経験を基に、日本とイギリスの様々な違いを詳細に示してくれる。
本のタイトルは、「散歩が楽しい」。この単純な「散歩が楽しい」という言葉の裏に、イギリスという国が積み重ね育んできた多くの優れた社会制度が潜んでいる。
都市計画・福祉・教育・労働形態・・・。紹介される様々な社会制度どれを見ても、日本では得られない“優しさ”を含んでいるのだ。
ものすごく単純な事実をあらためて発見した。個人を尊重し、社会制度が国民の暮らしやすさを向上させるために発展してきたのがイギリス。日本の社会制度は、そもそも、その目指す方向が全く逆なのだ。
ごく一部の“勝ち組”“統治者”の優位性をますます強調・強化するために、そしてその他多くの国民を従順に飼いならすために形作られてきたのが、日本の社会制度なのだ。そう考えると、すべてすっきりする。
そして現在の日本は、さらにさらに悪い方向へと向かおうとしている。国民を外側から支配するのみならず、国民の心の中まで支配しようとする勢力が力を増してきている。「美しい国」といった抽象的で精神的な言葉でしか国を語れない政治家がトップに立とうとしている。そして、その人の持つ“美しさ”の先には、その他もろもろの多くの国民の心の中にまで、自分の独善的な“美しさ”を強制しようとする全体主義的な監視社会が待っている。
イギリス社会がなにもかもすぐれていると言うつもりはない。しかし、日本社会と比べて、根本的なところで民主的な魂を堅持している社会であることはまちがいない。
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