紙の本
健気な物語ではなく、実は生きることをあきらめた女の物語として読んだ,
2009/01/01 10:23
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
荘介は職についても長続きしないダメ男。それでいて女にはもてるので、次から次へと女性をとっかえひっかえしながら、その日を暮らしている。そんな彼のもとへ道という女性がいきなり転がり込んでくる。両方の親がさして深くも考えずに取り決めた縁談だという。荘介は健気ではあるが地味な道がうっとうしく感じられ、夫婦の関係にはなろうとしない…。
失業中の夫との生活は経済的には極貧状態。その夫には常に女の影がちらつく。
それでも道は、アルバイトをしながら夫を懸命に支えて、笑顔を絶やさない。
なんとも出来た嫁です。その健気さにまず胸を打たれます。
しかし、やがて分かってくるのは、彼女が健気でも前向きでも、人生を手放しで肯定的に生きているわけでもないことです。
道がこんなダメ男のもとへやってきたのは、荘介が暮らす街に来たいと思うある理由があったから。
好きでもなければ会ったことすらない荘介と暮らし始めたのも、人生を悲観的に見つめる出来事が道のこれまでにあったから。
道は、肉体的には呼吸をしていても、彼女の心はどこかで硬く死んでしまっていたのかもしれません。
前に進むことをあきらめて、自分のシアワセを考えることすらやめてしまった彼女は、自分のそばにいるのはせいぜい荘介のような体たらくの男くらいだと諦観を抱いているようです。
ですから私にはこれは名もなき夫婦の心あたたまる物語ではなく、生きる希望をどこかで捨ててしまった女の痛ましい物語のような気がしてなりません。
そのことに気づかぬまま荘介が、わずかに道に心を寄せ始めたかにみえるエンディングには、小さな希望を見出さずにはいられません。しかし、果たして道は生きることに再び力を込めることがあるのか。
それはわかりませんが、少なくとも信じてみたいと私は思います。
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たまげた。一見ほのぼの夫婦マンガにも見えるが、一方で道の「恨みの世界」を端々に垣間見せて、それを日常的なしあわせのなかに昇華させてる点が絶妙だと思う。「夕凪の街・桜の国」でもこの人の「昇華」は、考えてみると現状肯定にも見えるんだが、ちゃんとした内省に裏打ちされているぶん力強い。自分の思い通りにならないこともあるけど、それでも人生を肯定しますよというほうが、ちんけな奇跡を起こすよりよっぽど嬉しい気がする。
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展開や構成が面白くてどんどん読めてしまう。で、じわっと心に染みる。スローライフってこういう事を言うのだなぁ。
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以前「こっこさん」で少しこの作者の魅力を知り、
とっても柔らかい雰囲気の作品なので
てっきりこれも癒し系だと思って読み始めたら
初めの4ページでそんな思い込みは脆くも崩れ去りました。
これはダメ男を奨励するダメ男好きのためのマンガです。
あまりにも不毛な恋をどうどうと描いていて
読んでていったい何がどう不毛なのかわからなくなってきて、
「人には人それぞれの人生があって、それはそれでいいじゃない」
って諭されてる気がしてすごく大人な関係なのか?って悩んみそうに。
不毛で不自然で不幸なはずなのに、
なぜか最後には「それはそれでいいんだろうな〜」
って二人の関係に妙な納得してしまい、
ダメな人間だろうと愛しいのだっていう心境を
ゆっくりとゆっくりと行間で伝えてくれる力がある漫画でした。
「こっこさん」にも登場している顔見知りキャラも
出てくるのも先に「こっこさん」を読むとより面白いですよ。
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こんなカップルいそうでいないし、恋愛のようで恋愛でないようで、じゃあ何だと言われると、…夫婦の話…?(笑)人と人の間の隙間ってこれぐらいがちょうどいいのでは、と私などは思ってしまう。熱すぎたり冷たすぎたりせずに。
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カイショなしの夫とのんびりマイペースな奥さんのなんでもない日常話。
読み終わったあとにじんわりしみてくるようなあったかい本です。
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夫 カイショなし。
妻 ノー天気。
そんな二人のあったかくておかしてく切なくて心にしみる54のプチ物語。......とあります。荘介は本当にろくでなしで女たらしだけど憎めないのは妙に清潔で繊細だからなのか。道はぼんやりしてるようで奥がしれない。でもだんだんふたりの間に流れているものが優しくなってくるのがいい。夕暮れの雰囲気がする漫画です。大好き。
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しっとり、ほんわか、それでいてギャグマンガ。現代を舞台にしているのに現実感が乏しい、御伽噺みたい。こういう雰囲気のマンガがあるんだと、はじめて知った。
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甲斐性無しの夫とのほほんとした妻の日常のお話。
所々に『ぴっぴら帳』『こっこさん』の登場人物が出てきます。
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こうの史代作品が読みたくなって購入。親に言われるままに結婚した女性と生活力ない男との偽結婚生活です。お互い本気で好きでもないのに二人で生活していったりとかダラダラなのです。読んでいて疲れませんが、心躍るようなこともなし。たこうの史代好き限定にはいいのかもしれない、、
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能天気な道は意外と奥深いし、甲斐性なしの荘介は意外と優しかったりして。道の言葉に温かさも切なさもこめられているよ。しんみりした雰囲気を打破するオチも好き。また数年後に読んだら別のところがツボにはまるんだろうな、と思う
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一躍有名になったこうのさんの作品〜
ほのぼのです。何か切なくなるわ・・・
ガロよかちょっと、正常な漫画
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「夕凪の街桜の国」の作者の漫画。だめ男&ど天然の夫婦の、どこかテンポのずれたストーリーに思わず笑っちゃいます。
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すべてが巧みだなぁと感じます。2人の心情とか、、でも重くなくどこか可笑しい、大笑いするような話ではないけどずっと大事にしたい本だなって思いました。
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最初はほのぼのとした漫画だとおもったのだけど、話が進む中で見えてくる隠れた生々しさや
セリフの繋がり方の巧みさや、穏和なポーカーフェイスの妻の道がたまに見せる強い表情にハッとさせられます。
形だけから始まった結婚生活からこそ、クライマックスにはとてもグッと来た。