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日本人の戦争観がについて、欧米との比較によって読み解いた作品。
日本人は戦争と死を結びつけて考えているが、欧米では必ずしもそうではない。
ヨーロッパの歴史は戦争の連続であり、戦争状態こそノーマルであった。
クラウゼビッツの戦争論にもあるように、戦争は国際政治の延長上にあるもので、相手を殲滅するために行うものではなかった。
戦争状態にあるからといって、四六時中本気で戦闘するわけでもなかった。
ヨーロッパでは戦闘で死ぬよりは捕虜になる方が良いと考えられた。
ヨーロッパでは戦争状態が当たり前なので、平和は積極的に勝ち取らねば手に入らないものだった。
またヨーロッパの国王は軍司令官であり、軍事的な素養がなければ国王の仕事は務まらなかった。
これに比べると日本は戦争が少なく、戦争がないのがレギュラーな状態であった。
中世以降、天皇は軍事権を持たなかったし、歴代将軍は血統によって選ばれ、軍司令官としての素質や能力は後継選びの際には考慮されることはほとんどなかった。
江戸時代は、世界的に見ても稀な、内乱や戦争と無縁の平和な時代が長く続いた。
支配階級であった武士は、身分の象徴となる刀を保有する特権を持った。
軍人と非軍人との境界が明確に引かれていた。
明治時代以降、西洋の軍制を導入した日本軍であったが、軍人にたいして一般人は「地方人」と呼ばれるなど、軍隊は非日常的な組織である・空間であった。
徴兵によって入隊することは日常から切り離されることであり、戦争=死(=非日常)とされた。
このような観念は、大東亜戦争(太平洋戦争)終結後も日本人の心の中に根付いたままであり、欧米人と日本人の戦争観はいまだに大きく乖離している。