紙の本
痛快時代小説、勘定吟味役が主人公
2010/06/20 21:13
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは「奥右筆秘帳」よりも前から始まっている、やはり江戸時代の時代小説である。勘定吟味役という職を持つ主人公水城聡四郎と、側用人として名を馳せた柳沢吉保、勘定奉行、豪商紀伊国屋文左衛門などが敵役として登場する。
水城聡四郎は時の将軍、徳川家斉の懐刀である学者の新井白石に目を付けられ、勘定吟味役といういわゆる監察役として活躍する。水城は自ら剣術の腕に覚えがある。この辺りは「奥右筆秘帳」とは異なるが、身を守るために自分自身で身を守るか、用心棒を雇うかの違いである。
水城には味方がいる。元側用人や勘定奉行を相手にするには、指示だけを出す新井白石がいても実務には役には立たない。新井白石は家斉には信頼されているが、幕閣には信頼がないし、勘定方には人望もない。
実質的な味方は、人入れ稼業の大手である相模屋であった。これらの敵味方を配し、物語は進められる。勘定吟味役ではあるが、実権はそれほどない。しかし、主人公は不正を見つけ、それを正していく。新井白石の指示に従って、幕府の金勘定にメスをいれていくわけである。いわば民主党が行っている仕分け作業と、その実施を任されたようなものだ。
「奥右筆秘帳」と同様、幕政の裏で蓄財する敵役に対して、剣術の腕を見せながらこれらの敵役を次々に倒していく主人公のストーリー展開が見事である。このシリーズは現在、八巻までが発表されているが、一気に読み進めるような気がする。
以前の出来事や勘定吟味役の職務等を説明するために、繰り返しが多くなる点に難があるのだが、そこは目をつぶろう。途中で栞を挟むのがもどかしいほど、痛快で一度読みだすとやめられない種類の文庫本である。
それにしても、江戸時代の江戸市中は物騒であることに気が付く。武士が日本刀をぶら下げて、町中を闊歩している訳である。外れで人が殺されようが、日本刀を抜いて切られても文句が言えない時代である。治安以前の秩序や身分制度によって、暗殺や殺人が起こり得る街であった。わずか300年前の東京である。
電子書籍
主人公に魅力あり
2017/12/13 06:20
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投稿者:のほほん - この投稿者のレビュー一覧を見る
続きの御広敷用人シリーズを手に取った事がきっかけでした。
主人公と周りの登場人物が魅力的で、良い気分で読みすすめる事が出来ます。
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今を時めく(……のかしら)上田秀人氏が書く、勘定吟味役水城総四郎の物語。相変わらず大舞台です。ヒロインがあんまり可愛くないけど、主人公がとても器のでかい人なので、ちょうどいい感じ。剣の腕は一人前ですが、人生はまだまだ途上。
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徳川6代将軍の時代から始まる物語。私にとっては初めての上田秀人作品。1度シリーズ全巻を読んだのだが、主人公水城聡四郎が活躍する新シリーズが発刊されると聞き、また読み始めた。巻を重ねるごとにおもしろくなるこのシリーズ。第1巻はまだまだ序章。
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最近お気に入りの上田秀人先生のシンシリーズ
勘定吟味役異聞です
主人公はその剣の腕を見込まれて新井白石が登用した
なまじ剣のみの人生だったため世間知らずが幸いし
幕府の公金を私する巨魁たちを探索し成敗する
1巻で大したもんだ・・・次の敵役が見劣りしないように
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シリーズ第一弾
後の巻を読んでいるが、やはり少し知っていることが鼻につく、仕方ないか
六代将軍家宣のとき、勘定奉行を追い落とすことを新井白石に託された水城聡四郎の物語、男勝りの紅も登場
今後の展開を期待させる物語
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全八巻。
チャンバラだけやってきた算学できない旗本が、
ひょんなことからマルサみたいな職に抜擢され
政治の闇に巻き込まれる話。
どっちが先に書かれたのか分からんけど、
先に読んだ「奥右筆秘帳シリーズ」と似たような感じ。
誰が敵で味方か曖昧なニヒルな政治の世界。
時代はこっちの方が五世代くらい前。
「奥右筆秘帳シリーズ」と同じく
歴史ミステリーな側面があるんだけど、
あっちよりすっきりして矛盾が無い気がした。
全体的にあっさりしてるのかも。
で、
やっぱり最終巻は駆け足なのね。
「奥右筆秘帳シリーズ」ほどひどくないけど。
後半は少し物足りない。
せっかくいい味出してるキャラクタが一杯なんだから、
もう少しキャラを掘り下げて、
あと2、3巻くらい続けてほしかった。
おしい。
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初読み作家図書館本。勘定吟味役異聞シリーズ1巻、江戸中期第5代将軍綱吉の時代に行われた勘定奉行・荻原重秀の慶長金・慶長銀を改鋳して金銀の含有率を減らす通貨政策を正すため、六代将軍家宣の側近新井白石の進言により、勘定吟味役を復活旗本の水城聡四郎が抜擢され、改鋳に絡む不正を探るように命ずる、聡四郎は勘定方に関わる一切を監査する役に戸惑いながらも、改鋳に絡む利権・不正を糺す。敵役に有名人が並ぶが、師匠の入江無手斎に免許皆伝・一放流を許された聡四郎が痛快な剣さばきで切り抜けテンポよく進む。
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シリーズ第1作。
剣一筋に生きてきたのに勘定吟味役に抜擢されてしまった水城聡四郎。勘定方のことは素人だが、周囲の助けを得て勘定奉行と紀伊国屋文左衛門という大物の不正に迫ってゆく。
江戸時代の仕組みを知らなくても説明がわかりやすいので理解できるし読みやすい。しかしストーリーやキャラに突出したところがないので、いまいち魅力が感じられず。シリーズ最初だからプロローグ的な位置づけなのだろうか。紀伊国屋はなかなかよかったけど。あと斬り合いのたびに腕が飛ぶのはどうなの。
というわけで、次作を読むかは迷うところ。
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上田秀人らしく、主人公がもはや”武”ではなく”文”で立たなくてはいけなくなった徳川時代ながら、”武”の力を併せ持つことで幕府内の陰謀確執の中で翻弄されながらも義を貫く姿が描かれる。
今までの他シリーズと同じく、江戸の時代が濃厚に描かれていて、悪く言えば同じ説明や描写が多々あるが、初読の方には当時の時代風俗が分かりやすくて良いだろう。
この聡四郎シリーズはタイトルを変えながら3シリーズ位になっているので、代表作なのかな?