紙の本
さらに力一杯学問
2006/10/21 10:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こちゃまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
イグ・ノーベル賞本の続弾。『もっと!』がついたこと、表紙のコピーが変わったこと、ページ数が前作より減ったことで背表紙にあるIG NOBEL PRIZESの説明文が短くなったこと、色が黄緑になったこと、それとカバーを外した時の文字が『ブハハハハハハ』『ガハハハハハハ』であること等、外形的な変化が若干あるものの受ける印象は前作と変わることなくどうにも今ひとつである。
あるものの感想を誰かが語る際、主観が外された形で語られることがあっても主観がない形で語られることはまずありえないことで、紹介という感想に含まれる行為にあってもそれは同様のことであるだろう。感想ならば主体である紹介する側が客体である紹介される側を無視して自己完結しようとも感想は感想として成り立つが、紹介は客体がどう捉えるかで紹介という行為が成り立たなくなる場合がある。客体が紹介だと気付かない場合だと、客体の認識力もさることながら主体が紹介になっているかどうか意識の程度が低いことも原因になるだろう。著者マーク・エイブラハムズはイグ・ノーベル賞にとって主体であって主体でない立場にあり、ステージに上がりこんだ観客のような印象を与えてしまう。賞という権威への方向性は自由に決定されるものではなく権威を認めるか認めないかの二択しかないだろう。キリスト教圏における排中律概念の支配は根深いものがあるようで、イグ・ノーベル賞設立者である著者が現存秩序への対抗として理念を掲げてはいるものの混沌を目指すのではなく反秩序の方向性を有していると感じてしまう。著者は目指すところが混乱と述べているが、秩序内に身を置けば混乱だとは感じるだろう。ただこれは汎性ある考え方ではなく、秩序を認めるものにしか作用はしない。
イグ・ノーベル賞の対象となる業績の多くは馬鹿という単語で表される類のものに思われる。「あいつ馬鹿だ」という日本語があって、その馬鹿に対応する英単語もsilly,stupid,absurd,foolishとあるだろうし、「あいつ馬鹿だ」という日本語もどのような状況下で使われたかによって意味を変えるだろう。愛すべき馬鹿も憎むべき馬鹿も馬鹿といえば馬鹿で、同じもので表されることを認識できても同じだと言われることには納得できないこともあるのではなかろうか。均一な馬鹿はやはりデコボコしていて馬鹿の内面を穿とうかと気の迷いが生じてしまう。例えば本書で紹介される物理学賞の『シャワーカーテンはなぜ内側に膨らむのか』。研究者のシュミッツ教授が「この実験は私の、私による、私のための実験です」と述べるように興味を持った本人以外には力の限りどうでもいい研究でしかない。しかしボール球へのフルスイングにおいてそのスイングに感動することがあるようにどうでもいい研究がどうでもいいと映るかどうかは別である。何の直接的な成果を生まない研究が知的に行われることからは馬鹿なことは馬鹿にはできないということを再認識させられる。実に格好よく感動的だ。2006年イグ・ノーベル物理学賞は『なぜ乾燥パスタを折るとしばしば二つよりも多くの部分になるのか』である。ピエール・エ・マリーキュリー大という世界レベルの最高学府で何をやっているのかと深い溜息と共にサイトにアクセス。動画、説明、まとめられた論文、どれも極めて美しくわかりやすい。最高学府の徒はやはり最高の頭脳を備えている。物理学の本を読んでみたくなるじゃないか。
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[BOOKデータベースより]
第1章 本人が考える以上のインパクトを世間に与えた業績;
第2章 些細なことにこだわった研究とその業績;
第3章 想像力によって莫大な金銭的価値を生み出した業績;
第4章 性的嗜好と生殖活動の研究に新しい光を投げかけた業績;
第5章 人体の神秘の解明に寄与した医学的業績;
第6章 世界の平和と個人の安らぎに貢献した業績;
第7章 見向きもされなかった事柄について新発見をなしとげた業績;
第8章 悪臭と芳香にまつわる一風変わった業績;
第9章 食物の摂取と排泄をテーマとした研究とその業績;
第10章 優れた頭脳が能力を発揮する条件について新しい知見を見出した業績;
第11章 より高次元の世界へと人びとを誘った業績
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タイトルどおりイグ・ノーベル賞の受賞者を紹介した本であるが、訳文のせいなのか、どうもいまいち面白味に欠けるものであった。
もちろん各受賞内容は素敵で、それを選んだユーモラスな視線も素敵だと思うんだけど。
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イグ・ノーベル賞を紹介した本の第2弾。
前作では紹介されていなかった賞を紹介。
ざーっと読んで、あまり印象に残ったものはなかったかなと。
やっぱり英訳の直訳感は変わらず、ステレオタイプ的紹介でおもしろさがないんだよな・・・。
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あいかわらず楽しいです。
前の本より少し薄くなって残念?
けったいで楽しい人びとに賞を。
この文は2006年01月22日に書いたものです。
ゆえに以下はちょっと現在とズレがあるでしょう。
■次のイグ・ノーベル賞は?
どうやら捏造であるということになったES細胞の黄教授になるかもしれませんね?経済学賞にはそういうタイプの受賞が多いけれど科学賞ではあまりなかったようなのですが、今回のはちょっとおおごとになってきました。
■マーフィーは実在した?
「失敗する可能性のあることは必ず失敗する」のマーフィーの法則(同名の他の法則もあるそうですが)を初めて知ったのはパソコン雑誌「ASCII」誌上で紹介されだしてからで、本も2冊ほど買ったりしていますが、その「マーフィー」さんが実在の人物でありイグ・ノーベル賞を受賞していたということを前記の『もっとイグ・ノーベル賞』という本で初めて知りました。架空の人物だと思っていたのでちょっと驚きです(当時その起源の話も読んだのだとは思いますが忘れてしまってます)。
■政治家は単純
人の性格は次にあげる5つの因子だけで記述できるとしたフィリップ・ジンバルドの研究は面白い。
外向性・活力
協調性・友好性
勤勉性・良心性
情緒安定性
知性・開放性
人を評価するときスポーツマンその他に対しては5つの因子それぞれに分かれているのだが、政治家だけは外向性・活力と勤勉性・良心性の2つに集中しており、一般の人は政治家をごく単純な性格として評価しているとか。
■ささいなことの調査
極めてささいな日常のできごとをただ調査したジョン・W・トリンカウス教授の研究は楽しい。
たとえば、ビルから出るときに開いてるドアでなくわざわざ閉じているドアから出る人の割合、野球帽を後ろ向きにかぶっている者の割合、白いスポーツ・シューズをはいている者の割合、芽キャベツが嫌いな若者の割合…等等。
個人的に何とかの何とかに対する率とかいう数字になぜか興味をひかれる性質でもあり、ほとんど論評も加えず調査した数字だけを提示し続けている教授の態度はとても好きです。
■検尿の器の種類
人びとが検尿の際にどのような容器で持ってくるかを克明に調査した医師アービッド・バトールの言った「自分でも理由はよくわからないのですが、私は役に立たない事柄によく興味を持ってしまうのです」というセリフに共感。p.222
■たまごっち?
「たまごっち」ってイグ・ノーベル賞取ってたんですね。知らなかった。多くの人間の時間を無駄に奪った功績によるらしく、受賞者は授賞式に出なかったそうです。出ればよかったのに。
(2006年01月22日読了)
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非常に面白い
ユーモアたっぷりに研究や活動を評価しているのがイグノーベル賞の様だ。
ダイアネティックス始め、L・ロン・ハバード氏の本を読んでみたい。
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[ 内容 ]
荒唐無稽と大発見は紙一重。
名誉か?不名誉か?
常人の理解を超えたアナーキーな研究、唯一無二の刺激的な業績が、まだまだあった!
[ 目次 ]
第1章 本人が考える以上のインパクトを世間に与えた業績
第2章 些細なことにこだわった研究とその業績
第3章 想像力によって莫大な金銭的価値を生み出した業績
第4章 性的嗜好と生殖活動の研究に新しい光を投げかけた業績
第5章 人体の神秘の解明に寄与した医学的業績
第6章 世界の平和と個人の安らぎに貢献した業績
第7章 見向きもされなかった事柄について新発見をなしとげた業績
第8章 悪臭と芳香にまつわる一風変わった業績
第9章 食物の摂取と排泄をテーマとした研究とその業績
第10章 優れた頭脳が能力を発揮する条件について新しい知見を見出した業績
第11章 より高次元の世界へと人びとを誘った業績
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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IG NOBEL PRIZES(イグ・ノーベル賞=裏・ノーベル賞)
1991年設立。世間を①いかに笑わせ、②いかに考えさせたか、を基準にその「業績」に対して贈られる賞。選考委員には多くの科学者、専門家、たまたま通りかかった人の他に本物のノーベル賞受賞者も名を連ねている。授賞式は毎年、ハーバード大学講堂で行われる。
かなりアホな物あるんだなと思うが、中には考えさせられるものもある。インドの死人協会などなど。
結構日本人も受賞しているだね(笑)