紙の本
数字にすると見えてくるもの、数字にすると隠れてしまうもの
2009/09/01 12:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
政治や経済の世界では、しばしば、人間を数字として扱う。出生率に始まって、就学率、1人当たりGDP、失業率に平均寿命、戦争が始まれば損耗率なんて数字でも表される。これは政治や経済が、「なんとな~く、しあわせ」という感覚的なものではなく、「○○政策の方が+10だけ余分に幸せ」という様に、明確に比較・評価しなければならない性質のものだからだろう。
今から30年以上前に、『人命は地球より重い』と述べてハイジャック犯の要求に屈した政府があったが、これも、要求を撥ね付けた時のデメリットとのんだ時のデメリットを比較・検討した上で出した結論だったのだと思う。だから、必ずしも人間を数字として見ることが悪いことだとは思わない。
しかし、この様な考え方も、行き過ぎると何かおかしなことになってくる。「このまま戦争が続けばもっとたくさんの人が死ぬから」と言って原子爆弾を投下したり、「いま生きている人が安楽に暮らすために借金をして、将来の人にその返済を押し付ける」なんていう選択もその例だろう。前者は将来死ぬかもしれない人とその時確実に死ぬ人を比較しているし、後者はいまの幸せと将来の幸せを比較している。その時点では得が大きい方を選択しているのかも知れないが、原爆投下は後遺症と禍根を残したし、借金はあとで利子が膨らんで大変なことになるだろう。
だから、先の先まで考えると、どちらが得なのかはよく分からない。しかし、悩んでばかりで行動しないのも意味がないので、神ならざる人間の身なれば、可能な限り判断材料を集めて、自分が最善と思う道を選択するしかないのも事実だ。
イルは自分の方が多くの人間を救えるから、と言ってサクラをいじめる。しかし、サクラの考え方にだって一理ないわけではない。自ら選択してシティか何かのために命を賭けることと、シティ存続のためだけに生み出される殺されることの間には、選択の自由度という意味で雲泥の差がある。だから、その選択の余地を与えようとするサクラを責めることはできない。
第一、犠牲の羊として殺した魔法士を生かすことによって、将来もっと多くの人間が救われる可能性だってないわけじゃないんだからね。
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発売から半年、今更読み終わりました。
ネタバレ感想。
上巻を読んで、イルの情報制御はどう見ても量子力学だなあと思ってたら本当にそうでした。確かに、量子力学的に存在確率の数値を自由に改変できるような情報制御が可能なら、無敵に決まってる。この世界に存在していながら、存在しない。そんな反則的な能力、勝てるわけがないじゃないの。
でもそこをどうにかしようとしてどうにかしちゃうっていうのが熱いわけで。目には目を歯には歯をとはよく言いますが、やっぱりこの展開というか見せ方は好きだなあと思うのであります。「悪魔使い」の「創生」は、青魔導士のラーニングと似た浪漫を感じずには居られないです。このゾクゾクするような浪漫、格好良さ。王道ながら、この見せ方はやっぱり好きです。
あとやっぱサクラが好き。あのヘタレっぷりは、もうなんとも言えない極上の主人公。この話の二人の主人公のうちの一人という立場なのでしょうが、いやはや、実にいいキャラです。真昼やセラとの絡みはもちろんのこと、最後のイルとの戦闘後の清々しさは読んでるこちらにも微笑みを感じずには居られなかったわけで。うん、もう普通に大好きです。
そしてここから「ウィザーズブレイン」が始まるというわけですが……長いよ?! このスタートラインに立つまでに一体何年かかったのやら……ま、まあ自分はこの話大好きなのでいくらでも待ちますけどね。三枝さん頑張って下さい応援してます。
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ウィズ5下。
大きくはサクラとイルの熱血バトルが肝だと思うんですけど。
やっぱり、ディーとセラの事が気になってしまいます。
にしても、ディーも錬も、みんないつもボロボロだなぁ。
サクラの神の賽子を学習した時は錬と同じでテンションあがりました。
これでウィザーズブレインプロローグも終わり、とうとう本編へと突入です。
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分厚かった……。
シティ・モスクワ相手に苦戦し、サクラも決意を挫かれた前半部分は読んでいてイライラするくらいじれったいのですが、後半の起死回生からは圧巻でした。
サクラの能力「生成」がものすごく便利!
ただ、サクラが能力の生成によってイルと五分五分に張り合えるようになったのに対して、ディーはまともに戦えない状態からあの常識破りな剣の力で無理やり戦ったのが痛々しくて読んでいても辛かったです。ディーにも心身共に平和に暮らせる日々を与えてあげてください三枝さんっ!
今回の主人公はサクラですが、真っ向から敵対するイルにも譲れない信念があるところにぐっときます。
互いに決して間違ったことを言っているわけではないけど、互いに正しいがために衝突を避けられない。
でも、互いの信念が曲げられないものであることを二人とも理解しているところが素敵です。
「シティ」と「賢人会議」の対立が明確化し、お膳立てが整いました。
この巻で何よりも印象的だったのが、作者さんのあとがきの一言です。
『それでは、「ウィザーズ・ブレイン」を、始めましょう。』
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ウィザーズシリーズの中で一番泣いたかもな巻だから入れておく。
「だから この世界が私を認めないというのなら、私は喜んで世界の敵になろう」
もうこの台詞でぶわっときた。本当に。
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僕の正義が
信じているものが
ここのところ揺らいでいたのを感じた
昔、この本を読んでたときにはあったものが
今はない
それは僕が前進したから景色が変わったからなんだけど
志しはどこにいったのだろう
僕が信じるものはなんなのか
他の誰にもわかってもらえなくてもいいものは今の僕にあるのか
考えないと
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サクラとイルの対決はイルの勝利に終わった。その戦いのさなか、サクラは信愛する養父の命を喪い、自分自身をも見失うことになった。セラの母親が死ぬ原因の一旦となったのはサクラだという事実がセラに知れ、サクラ側の人間関係は悪化の一途を辿る。
天樹真昼の協力のもと、最後の反撃に打って出るサクラは果たして――という展開。
よくよく考えれば、この5巻は「サクラ、ディー、セラ、祐一、真昼、月夜 VS イル」という構図で、本来ならイル側がめちゃくちゃ不利のはずなのだが…。タレントの多さが戦力の差ではないのは実にこの物語らしい。ノイズメイカーをはじめ、イル側にも頼れる戦力は揃っていることだし(※ただしモブ)。
この5巻のラストでウィザーズブレインという物語が大きな局面を迎える。これで役者はそろった、ということか。