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紙の本
やる気になる本
2005/12/21 21:48
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は、県庁に勤める野村聡、31歳。一年間、民間研修という名目で彼がスーパーに出向させられる物語だ。派遣された当初は、あまりにもいい加減なスーパーの現状に憤りを覚えていた聡が次第に考え方を改め、周りをも自分をも変えていく展開は意外でも何でもないが、実によく読ませる。聡の教育係の二宮泰子というパート主婦がこの物語のもう一人の主人公なのだが、女手一つで息子を育て上げた彼女が、聡のひたむきさに心を動かされ少しずつ鎧を脱いでいく、その気持ちの移り変わりもとてもよく伝わってくる。
圧倒的なリーダビリティは、お役所と民間の違いがしっかりと描きこまれているからであり、商売の醍醐味にも迫っているからだ。惣菜売り場に移された聡が真価を発揮していくきっかけとなったのも、「客が見えてない」という一言。サービス業の奥深さを味わわせてくれる。
登場人物の造型がいいことも挙げたい。主人公の二人の造型が見事なのはもちろん、自分のことしか見えていなかった聡が「人ってそれぞれの事情を抱えている」と分かるにつれて彼の周りの脇役たちのキャラが立ってくるところなど実にうまい。
最後には、結局大事なのは、やる気やひたむきさである、と実感させてくれて爽やかな読後感に浸れる。
元気な気分になりたい方には、読んで損のない一冊だ。
紙の本
阪神タイガースが引っ張る
2008/05/31 08:02
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
県庁の星 桂望実(かつらのぞみ) 小学館
映画化される前に読みました。民間会社に派遣された県庁職員の主人公はさっそく根をあげる。世の中は法令だけで回っているわけではないのです。研修教育環境も整っていないことが多く、それが当たり前のことになっています。自分で積極的に探求していくしかないのです。
本はよく聞き取り調査された内容になっています。著者は男性と思いこんでいたのですが女性でした。
阪神タイガース、この本にも出てきます。先日読んだ「博士が愛した数式」にも登場してかつ物語を引っ張る横軸となっていました。どうしてジャイアンツやドラゴンズ、ヤクルトではいけないのだろうか。そこが阪神タイガースの個性と魅力です。
読み終えました。さわやかな感想です。読者の心理誘導という上手な構成でした。ラストシーンで、県庁さんが県庁を退職して店長になるという終わり方のほうが私は好きです。
紙の本
県職員批判ばかりではない「世間全般」に亘る風刺小説
2005/09/20 21:36
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちょーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるエリート県職員が小さなスーパーへ派遣研修に出されたことを題材にした小説フィクションです。
主な登場人物
○野村 聡
Y県の上級試験を合格したエリート職員。31歳、独
身。抜擢されて民間企業へ1年間派遣されることになる
「県庁さん」と愛称される。典型的なお役所タイプ。
○二宮 康子
スーパーのパート職員であるにも拘わらず、有能な才能
を持ち、実質的な経営権を持っている。離婚し、介護を
している息子と同居。親子の関係は最悪。食事は自分で
作らずスーパーの残り物をトレーのまま出す。
○あいちゃん
聡とは合コンで会った胸の大きな23歳の女性。聡のア
パートで手料理を作るが、滅茶苦茶な取り合わせ、レシ
ピで食べられず。聡にお強請りして高級品を買ってもら
う。結局、聡は騙される。
○本橋 宏一
スーパーの副店長。浮気相手に刺されて入院した店長
の代理を務めるが、経営能力に疑問で、本社からのリス
トラ候補のリストアップを康子に押し付ける。
他にもいろいろな人物が登場して、さまざまな人間模様を描いています。単に県職員の「お役所しごと」を批判するだけでなく、スーパーの実態(本部の締め付け、売り上げを伸ばすための不正行為など)や正職員・パートの心情、離婚・教育、若者の考え方などを取り上げ、社会的な課題を浮き上がらせています。
お役人気質もよく描写されており、如何に民間企業との隔絶された常識がまかり通っているかがよく理解されます。ストーリーの展開は、「県庁さん」が自信たっぷりに売り上げをあげることができると豪語して、既存のチームとの熾烈な競争を行うことになります。そこで、はじめて机上の理論ではなく、現場(お客さん)の消費行動・心理を見抜くことが大切で、それを基にパートも含めて従業員みんなと商品を開発しなければいけないことに気づきます。
一例をあげてみましょう。
「慣例、前例って言うんでしょ。能力がないからじゃないの?
人を見る力がないから書類の数字を引っかき回してる
んゃないの?責任取りたくないから、前回と同じことばっ
かりやりたがるんでしょ。責任取ったらいいじゃない。誰
の顔も窺わずに、自分の思い通りのことをしてきっちり責
任取るって格好いいじゃない。今やってることに疑問もち
なさい。まずはそこから」
最後はハッピーエンドになっていますが、本当に公務員の常識は世間の非常識といわれていることが如実にされています。
紙の本
公務員がスーパーに派遣。何とも皮肉なストーリーだが、現実はそう甘くない
2007/04/30 10:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よし - この投稿者のレビュー一覧を見る
県庁職員の野村聡は、1年間の民間企業への研修を命じられる。派遣先は先行き不安なスーパー。パートながら、スーパーを牛耳っている二宮泰子に触発されて、徐々に野村もスーパー自体も変わっていく。
ストーリー自体は悪くないです。第2部からはスピード感も増し、どうしようもないスーパーが徐々に変わって行くところあたりから、引き込まれてしまいます。
だがしかし、第1部からの展開に少々無理があるのでは?第1部では県庁のキャリアから、スーパーに研修に来た野村の県庁で仕事を通して身に着いたものが皮肉たっぷりに書かれています。それはそれで可笑しいのですが、ちょっと違うぞ…てな感じに思ってしまいました。
今、そんなに公務員も甘いものではないんですよね。だから返って不快感すら感じてしまいました。
赤字続きのスーパーが一人の研修員の身も粉にする働き方から、変わっていきます。信頼が生まれてくるのですね。県庁職員の経験を生かした、食品Gメンや消防署の対応などから。そしてニ宮泰子からも、様々なノウハウを教わりながら野村自身も変わっていきます。
二宮泰子も自分の子どもとの間がギクシャクしているし、スーパーでは全てを任され、さらには次のリストラする職員の名簿まで作らされる始末。それがスーパーの売り上げを3割増しにすることによって、先延ばしにしていく。つまり、野村のアイデアと従業員のアイデアがマッチして、競争意識も相乗効果となり全員で売り上げを伸ばそうということになるのですね。
それはそれで気持ちのいい話です。本当に民間の競争力と公務員の発想がマッチした今後のあり方すら、作者は教えてくれているのかもしれません。
しかし、これは夢物語で非日常の世界としか思えませんでした。実際はもっと厳しい世界ですから。だとしたら非日常の物語として読んだ方がいいのかもしれません。