紙の本
出版社からのコメント
2005/11/10 13:18
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投稿者:ノッキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
【著者紹介】
「ニューイングランド医学雑誌」前編集長。
現・ハーバード医学校社会医学科上級講師。
医療政策・医療倫理の高名な権威であり、医療システムに関する歯に衣着せぬ批評でも知られる。タイム誌は氏をアメリカの最も影響力のある25名の中の1人に選んだ。
ボストン大学卒、内科と病理学を修め、認定病理医。2000年までニューイングランド医学雑誌編集長。肩書きは、医師(MD)、米国内科専門医会フェロ(FACP)、ハーバード医学校社会医学科上級講師、米国内科医協会会員、米国科学アカデミー医学研究所(NASIOM)メンバー、アルファ・オメガ・アルファ全米名誉医師会会員、米国内科専門医会マスター(MACP)。
【目 次】
はじめに 薬は他のものとは違う 1
第一章 二千億ドルの巨像 13
第二章 新薬の創造 35
第三章 製薬業界は研究開発費に「本当は」どのくらいか
けているのか? 53
第四章 どのくらい製薬業界は画期的新薬を作ってきたの
か? 71
第五章 ものまね薬づくり—製薬業界の実態 98
第六章 新薬ってどのくらい効くんだろう? 123
第七章 押し売り—餌に、賄賂に、リベート 149
第八章 教育を名目としたマーケティングの偽装 174
第九章 研究を名目としたマーケティングの偽装 198
第十章 パテント・ゲーム—独占権の引き伸ばし 218
第十一章 支配力を買う—製薬業界はやりたい放題 243
第十二章 宴のあと 271
第十三章 製薬業界を救え—活きた金を使おう 296
著者あとがき 320
謝 辞 324
監訳者あとがき
レッツ・ビギン!
改革は真実を見極める眼と語る言葉から始まる 326
索引 335
【監訳者あとがき】 より抜粋
本書「ビッグ・ファーマ——製薬会社の真実」の著者マー
シャ・エンジェル氏は、ネイチャー、サイエンス、ランセッ
トと並び世界の医学界でも最も権威ある雑誌のひとつ、ニュ
ーイングランド医学雑誌(NEJM)の前編集長である。そ
の人がいわば、「医学研究はどれもこれもウソっぱち。医学
者は製薬会社のいいなり」「今の新薬はどれもこれも“効か
ない”“高い”“工夫がない”」と、本書の最初から最後ま
でフルスロットルで口を極めて糾弾し続けているのだ。世界
の医学・新薬開発研究の最高峰である、アメリカを目指せ!
と日本の研究者も製薬会社も口を揃えているというのに。有
名医学雑誌の編集長という仕事は、厳選された質の高い医学
研究を世界中に向けて発信し、医学界をリードする医学の守
護神のはずだ。その医学の守護神が、こんな奴らは信用なり
ませんよと、医学界、製薬業界、臨床医たちを激しく追及す
る。これは驚くべき、危機的状況だ。(中略)
監訳者らがエンジェル氏の言論に最初に注目したのは、1
990年代半ばにアメリカ・フランスなど先進国が計画して、
アフリカ・アジアなどの開発途上国で行われたエイズ感染予
防の医学研究を「非倫理的な人体実験」であると糾弾した氏
の論説であった。薬を与えるグループと与えないグループに
分けて薬の効果を比較する、という試験だったからである。
現在、製薬会社の特許が世界のエイズ治療を阻んでいる状況
の改革を目指す活動家らによるメーリングリストを通して本
書の刊行を知り、瞬間的に翻訳出版を決意した。その後も本
書は世界の各所で話題に昇り、刊行から1年ですでに古典と
しての地位を獲得している。(あと略)
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ブリストルマイヤーズスクイブ
タキソール 実はNCIが開発 製薬会社はほとんど研究開発費を投じていない
エポジン シカゴ大学 ゴールドワッサーが発見 アムジェン社が大量合成法つくる
グリベック CMLの治療薬 ノバルティス
ALLHAT心臓発作の予防に関する高圧および脂血低下療法試験 ca antagonist(ノルバスク、ファイザー)、alpha blocker(カーデュラ、ファイザー)、ACE inhibitor (ゼストリル、アストラゼネカ、ブリニビール、メルク)、利尿薬で効果が高かったのは歴史の長い利尿薬
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製薬業界に属している、あるいは属そうとしている人は一読の価値があると思う。製薬産業の最大の市場であるアメリカでの製薬企業の実態を描いています。日本にも当てはまるケースが多々あり、関心しきり。
お勧め
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アメリカの製薬業界の経営についてかなり批判している。というのも、製薬業界は研究開発に莫大な投資をしているというが、本質はマーケティングであり、見せかけであるから、とのことである。
また、自社製品の特許期間を伸ばすためなら何でもやる、と。
この著者は終始一貫して製薬業界を否定しているが、その代案は最後の数ページにしか書かれていない。しかもひどく表面的なように思える。
たしかに製薬会社は、とくにアメリカ市場では儲けすぎ、また、手段があからさまであると思うが、国営企業でないのだから、競争は避けられないことを少しは勘案すべきでは?と感じることも多かった。
ただ、アメリカの製薬業界を知る上で、本書は大変参考になるものであったことは認めざるを得ない。また、内容とは関係ないが、「教育とは教える側と教わる側の双方向のコミュニケーションで成り立つ」という一節にはひどく感心させられた。
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2008/11/3
p.298にこの本の主張が非常に端的に記述されている。
「製薬会社が作り出しているのはゾロ新薬ばかりで,画期的新薬は少ししかないこと」
「米国食品医薬品局(FDA)が本来は規制する対象であるはずの製薬業界に隷属してしまっていること」
「製薬会社が自社の製品が関係する臨床研究に干渉しすぎること」
「特許や排他的販売権の期間が不必要に長く,いかようにも延長できること」
「製薬会社が自社の製品について,医師の教育に干渉しすぎること」
「研究開発,広告宣伝,薬価算定に関する情報が公開されないこと」
「薬価が高すぎること,不安定なこと」
製薬企業が画期的新薬を生み出せなくなってきている点や,違法ではないにせよ法の網目をつくような方法で利益を積み上げている点を見る限り,製薬業界の未来はあまり明るくはないのかなと感じてしまう。
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最初から最後まで一貫して批判的な文章を読むというのはあまり気持ちいいことではない。
アメリカの製薬会社の裏話がてんこ盛り。
以下はささやかな反論
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( ゚Д゚)_σ異議あり!!
大学の役割は基礎研究で、製薬会社の役割はその基礎研究をどう薬の開発につなげるかである。役割混同はよくない。会社は研究費を自社の利益から回さなければならないが大学は政府の援助が期待できるのである。
資本主義体型の元での製薬会社の社長なら、研究開発費をできるだけ低く抑え、医者を接待して自社の薬を売り込ませることや薬の元となりそうな分子の特許はベンチャーから購入したりするマーケティングに力をいれて実質的な売上を伸ばすほうが安定なのでそちらを行うだろう。ある分子の役割に関するすべての基礎研究から全合成まで製薬会社がしなければいけないなどの倫理的観点を取っているのはおかしい。製薬会社は利益を上げなければならないし、資本主義において富の蓄積というのは追及されるべき目的である。
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いずれにせよ、資本主義だねー。
MRはカス by木村教授
製薬会社に入ってマーケティングやってみるのも面白いかも。
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2009年10月22日読了
ニューイングランド医学雑誌前編集長が製薬会社の行状について、告発した本。全編にわたって、製薬会社の批判がぎっしり。
これまで、薬価が高いのは、製薬会社が新薬を開発するために多額のR&Dが必要であるからだという説明で理解をしていたが、実際にはマーケティング費用の支出が一番多いことがわかった。また、研究などに名を変えたマーケティング費用を計算に入れると多額に費用が使われている。
アメリカが特殊な部分もあるが、こういった現実を頭に入れておくことは重要であろう。
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薬価基準が設けられている日本に生まれてよかった。薬代だけで破産しそうなアメリカ、それだから健康志向が強いのか。
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製薬企業の悪い面をメインに展開。それはそれで正しいのだろうけど、革新的な薬を生み出して来たのも確か。人類にとってはベネフィットの方が大きいでしょうか。
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筆者のマーシャ・エンジェルは先代か先々代の「New England Journal of Medicine」の編集長です。NEJMの編集をしながら得た経験なんかを元にして、製薬会社の仕組みと、どのように医学というシステムに製薬会社が食い込んできたかを非常に明確に語ります。
医療にかかわる人なら必読の一冊。
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アメリカの製薬業界
第1章
【バイ・ドール法】
助成金を得て行った研究で得られた成果に特許を取れるようになり、製薬会社に対して排他的なライセンスを与えられるようになった。それ以前は、税金で行われた研究の成果は公共の財産であり、使用したいと思う会社は自由に使うことができた(p.17)
【ハッチ・ワックスマン法】
ブランド薬の独占販売権の期間が延長されるようになった(p.19)
【マネージド・ケア】
処方薬に対する保険によるカバーの方法を三段階にしたもので、ジェネリック薬は完全に保険でカバー、有用なブランド薬は部分的にカバー、安い薬よりも付加的な価値のない高い薬は保険でカバーしない(p.25)
第2章
製薬会社や開発業務委託期間は、研究・治験参加者を得るために医師に日常的に巨額の報奨金を与えており、ときには治験・研究参加者の登録が早く進んだ場合には、ボーナスを出すことさえある(p.45)
第3章
アメリカの製薬会社上位10社の全世界での売上額の合計は2,170億ドルで、そのうちたったの14%(310億ドル)強しか研究開発に使われておらず、一方、利益率は17%(360億ドル)にもなる。つまり、利益は十分に研究開発費を超えているのである。さらに驚くべきは、売上の31%(670億ドル)という途方もない金額が、マーケティング・運営管理費として使われている(p.65)
第4章
・臨床医学の分野での特許申請に引用された科学論文のうち、学術機関によるものが54%、政府によるものが13%、残りがさまざまな公的な非営利組織によるものであるのに対し、製薬会社の研究によるものは約15%に過ぎなかった。この数字が最終的に臨床上重要であると判断されたものでなく、あらゆる新薬や医学的考案での特許申請での数字であるため、重要なブレイクスル―薬に絞って計算すれば、間違いなく製薬業界の役割はさらに小さくなる(p.84)
・公的資金の助成を受けた研究者がアイデアを出したり早期の段階の開発を行ったりして、製薬会社が実用化を図る。製薬会社は臨床試験のスポンサーとなって、薬を安全で投与しやすい形に変え、最終産物を製造して流通させる。まれには、製薬会社が自ら、画期的新薬を発見してもいる(p.92)
例:タキソール(p.78)、エポジン(p.79)、グリべック(p.82)
第5章
・自社のスタチン系薬剤を使って、心臓発作の既往のある患者を対象に再発作の予防がどう程度可能なのかを試験し、心臓発作の既往のある患者の再発作予防の効能で承認された唯一のスタチン系薬剤として宣伝するなどといったことである。しかし実際には、他のスタチン系薬剤でも同じ患者群を対象に試験すればお暗示結果が得られるに違いない(p.106)
例:ネキシウム(p.100)、クラリチン(p.103)、スタチン(p.105)、SSRI(p.107)
・薬に合わせて病気を創り出している(p.111)
例:逆流性食道炎、GERD、月経前不快気分障害、社会不安障害
・ゾロ新薬を正当化する理由は、競争することで値段がどんどん安くなる、ある薬では治らなかった人がいても二番目の薬で治せるかもれいsないから(p.115)
第6-9章
臨床上の問題に対して、偽の研究で偽の結論を出す。その情報を偽の教育で医師の間に流布さ��、医師たちが偽の情報に基づいてたくさんの処方を書くように仕向けるのだ。賄賂やリベートが事を円滑に進める(p.212)
第10章
第一に、ハッチ・ワックスマン法に従って独占権が三年間延長できるように、売上トップの製品に変更を加える。第二に、数ヵ月から数年間にわたって時間をずらして多くの特許を申請し、いずれかの保護期間が続くようにしておき、これを口実として、特許侵害訴訟を起こすことにより30ヵ月間の特許期間の延長をはかる。第三に、ほとんどすべての大ヒット薬で六ヵ月間の独占権を得るためにその薬が小児に使われる可能性があるかないかに関わらず、小児で臨床試験を行う。第四に、ブランド薬を製造する会社とジェネリック薬を販売する会社とが共謀して、ジェネリック薬の市場への参入を遅らせたり、価格が下がらないようにしたりする。そして、第五に、第ヒット薬にささいな変更を加えた薬を作って特許を取ったりFDAから承認を得たりして、それを改良された製品だといって販売促進活動を行うのである(p.228)
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1980年以降、バイ・ドール法によっていかに製薬業界の新薬開発がゆがめられてきたか、という話。 Marcia Angel M.D. 著
1998年から2002年までの5年間で、415個の新薬がFDAに承認されたが、そのうち133個(32%)が新しい化合物を含むものであり、残りは化合物は同じで味付けを変えた既存薬のゾロ新薬(Me-too Drug)だった。
また133個の新薬のうち、優先審査対象となった画期的新薬は年平均12個程度であり、全体の14%にすぎない。更に、そのうち、大手製薬会社によって開発されたものは数えるほどしかなく、殆どは大学やNIHなどの非営利や政府機関によって開発されたものだった。つまり、大手製薬会社は、リスクの高い新薬開発よりも、リスクが低くて儲かるゾロ新薬の開発に勢力を傾けてしまっている。しかも、ゾロ新薬は用法や色、味付けは違っても、主な化合物は同じであるから、は既存薬よりも効果が優れたものとは言えない場合が多い。高血圧の治療には、新薬よりも古い利尿薬のほうが効き目があるという報告がある。
たとえば、HIVの治療薬として初めて市販されたAZT(レトロビル)は
1981年にAIDSという病名が論文発表されてから2年足らずでNIHとパスツール研が原因ウィルスを突き止め、1960年代から抗がん剤としてミシガンの研究所で合成されていたAZTがウィルス感染に効果があることを発見したバローズ社は、AZTを70年代に入手していた。1985年、NIHがHIVウィルスに対してAZTに効果があることを突き止め、わずか2年後の1987年、医薬としてFDA承認を受けた。
病気発見からわずか6年で画期的新薬が市販されたのは、政府や大学など多くの多くの情報によって可能となったが、バローズ社(後にグラクソが買収)が特許を独占し、年1万ドルという法外な薬価をつけた。
腎不全の画期的新薬エポジェンも、大学の研究者が発見したが、バイドール法が成立した直後にコロンビア大が特許をとって、アムジェン社がライセンスを受けて商業化できるほど大量の合成方法を開発した。
白血病の画期的新薬グリベックを発見したのもNIHの研究者。ノバルティスが特許を持っていた分sいが白血病の進展を食い止めることを発見したNIHの研究者は、ノバルティスに臨床試験を説得したが、潜在的な市場が小さかったため、ノ社は消極的だったとされる。
製薬業界が新薬を市場に出すのにどのくらいの費用がかかっているのか?
製薬業界が研究開発費の総額で300億ドル(3兆円)使い、66個しか新薬をださなければ、新薬1つあたり、税引き後で3億ドルの研究開発費がかかるとされているが、しかし、この研究開発費用には巨額のマーケティング費や新薬承認後の第IV相臨床試験のコストが含まれている。
ビッグファーマは、大ヒット薬の特許が切れそうになると、特許期間の引き延ばし策としてヒット薬と実質的に同じゾロ新薬を作り、医師をその新薬に乗り換えさせようとする。ブランド薬がジェネリック薬を特許侵害で提訴した場合、独占権が30ヶ月延長される。だから周辺特許をとって、提訴し続けることが重要になる。また小児薬の臨床試験をすれば更に6ヶ月特許期間が延長されるから、胸焼けの薬でも小児用として臨床試験が行われる。これらの法律は、製薬業界から議員へ多額の献金がされた結果だとする。
2000年に入り、多くの大ヒット薬の特許期間が切れ、製薬業界は危機的な状況にある。それは画期的新薬よりゾロ新薬の開発に力を入れてきたからだとされる。
さて、ほんとうのことでしょうか。
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製薬のビジネスのスキームはこれにも詳しく、まさに開発と同等にマーケティングや営業に死ぬほどコストがかかるなど、コスト構造が解説されてる。米国ロビイングの事案も。
割と有名な本かも知れない。
ドキュメンタリーですね。
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だいぶ読み進めてきたけど、途中の感想として、製薬業界の側面を黒く黒く描いているので、著者の悪感情が透けて見えるような気がした。
でも書いてあることは多分ほんとなんだろうけど、そこに必要以上に感情的になってる、そんな感じ。
所感としては、どっかの大学の先生が言ってたように、日本では健康志向は儲からないけど、アメリカなら儲かりそうってことかな。
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製薬会社がいかに設けているかを有名医学誌NEJMの編集長だった著者が忌憚なく書いている。製薬会社がどれほどマーケッティングに金をつかい、それが薬価に上乗せされている真実を医師は直視しないといけない。新薬がでたというってもゾロ新薬が多く、本当に画期的な新薬はほとんどないのが現状だ。製薬会社が主催する講演会は、しょせん薬の宣伝会であることを認識しておく必要がある。