紙の本
お得な感じの短編集ですが、彼女の作品ですから、、、(深読みし過ぎか?)
2006/02/16 00:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kokusuda - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年、77歳になるル=グゥイン女史は今だ健在で、
創作意欲にあふれ新しい作品を発表しつづけています。
彼女の作品では「ハイニッシュ・ユニヴァース」や
「アースシー」「空飛び猫」などのシリーズが有名ですが
連作短編をまとめた本書も新しいシリーズのようです。
友人のシータ・ドゥリープから簡単な次元間移動法を教わった「私」が
次元間旅行を楽しみます。
その方法とは空港の堅い椅子に座り、まずい食べ物で胃もたれを起こしながら遅れた飛行機を待って、
苦痛な待ち時間を我慢する、というもの。
次元間旅行者はどの次元にもいるようで、昔から次元間旅行局が管理している。
そこで「私」は他の様々な次元を旅行したり、知人から聞いたり、現地の図書館で調べたり、
学者の寄稿などで知った物語が綴られていきます。
私たちの世界とは異なる不思議な場所の不思議な人々。
そんな私たちと全く異なる言語、習慣、考え方をする、
謎めいて、どこか懐かしい感じがする人々との出会い。
彼らと普通の好奇心旺盛なオバサマ?の「私」が織り成す不思議なお話です。
少なからず作者自身が反映されているようですが、クールなフェミニストでコワイ女性というより、
どこにでもいそうなおっちょこちょいの女性のようです(笑
登場する異世界は色、形、大きさまで多様な人が住む「イズラック」、
沈黙する人々が住む「アソヌ」、見かけは私たちと同じなのに根本が異質な「アンサラック」
獣人たちの住む「ヴェクシ」などなど、、、。
時にはユーモラスに時にはシニカルに悲哀に満ちたり、
ロマンチックだったり多様な物語が描かれています。
読んでみて手塚治虫氏「鳥人大系」ステープルドン氏「最後にして最初の人類」などを連想しました。
本作が歴史という時間の積み重なりのように異世界が積み重なって物語になっているからでしょうか?
それぞれの異世界で長編が作れそうなほど豊かなイメージが
惜しげも無く登場するお得な?連作短編集です。
さて次は「ハイニッシュ」シリーズの“Gift”が翻訳される番でしょうけど
いつになるやら、、、。
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シータ・ドゥリープ式次元間移動法 (精神的苦痛と消化不良と退屈が要件) を身に付けた語り手による様々な次元の報告。こういう不思議なエピソードが惜しげもなく次々と出てくる本は好き。アラン・ライトマンの『アインシュタインの夢』とかイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』とか。
気になったのは、ル・グゥインの作品にしては、ジェンダーの概念がどの次元でも固定的に思えるところ (どの次元でも性は男性と女性だけのようだし) ですが、それも意図的なのかな?
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ある作家は「私たち人間は、想像力で鳥よりも高く飛べる」と言った。その言葉を改めて感じさせてくれる一冊。だから人間って好き。
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ル・グィンによる一種の「ガリバー旅行記」異なる次元の15の世界への旅が描かれている。どこの世界に住みたい?私はアンサラックに生まれたかった。
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●とっつきにくいかと思ったが、うん、いいおはなし集だ。おもしろいぞ。さすがル=グウィン御大だ。
●「シータ・ドゥリープ式次元間移動法」なる次元移動ワザがおはなしの基本。
なんと、空港でなかなか飛行機が飛ばなくて、待合室でスーパーだるだるできぼぢ悪くなってもう最悪ブリブリげろげろ状態に陥ったら、人は次元を移動できるらしいんですのよ奥様!?
最初にこれを体験し、友人たちに伝えたのはシータ・ドゥリープさん。
かくして、いつのまにか次元間を移動する人たちはどんどん増加し、あちこちの次元で待ち時間をバカンス☆ することが出来るようになったのです。
“私”もまた、シータさんから次元移動方法を教えてもらった中の一人。
彼女が観察するのは、ありとあらゆる遺伝子をめたくたに混ぜ込んだ人たちの次元(『玉蜀黍の髪の女』)、ありとあらゆる祝日ごとにテーマパーク化された島々の次元(『グレート・ジョイ』)、誰もが王室の一員である次元(『海星のような言語』)などなど。
ま、つまり、架空の次元の文化人類学的紀行文集と言うわけです。
それくらい軽い気持ちでとりかかるのがよろしいでしょう。うむり。
●なお私は、集団で南から北へと移動し繁殖する人たちの次元のお話(『渡りをする人々』)が好き。
魂と肉体についての『その人たちもここにいる』や、“海星のような言語”を操る人々を介して、言葉に対する考察を行う『海星のような言語』も、興味深いです。よかよか。
やっぱりル=グウィンはえらかったと言うお話。
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いやもう、なんというかすごい。なんたる想像力!密かに重いテーマが取り上げられてるのに、さらりと読めるところがまたよし。ただまぁ、他の次元の話だからって、そのうち笑ってもいられなくなりそうな・・。私は『渡りをする人々』がよかったな。彼らになりたいー。
2008/2/18
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「空港は旅行への序曲ではない。空港は通過点ではなく、停止点だ。妨害物である。糞詰まりである。空港とはあなたがほかのどこにも行けない場所。そこでは時間が経たず、いかなる意味あるあり方も望めない。場所ならざる場所。ターミナル、つまり終点だ。空港が人に与えるものはただひとつ、プレーンとプレーンのはざまへのアクセスだけである。」
ヒドイ言いようである。
個人的には、自分がどこにも属していないように感じるし、ただ飛行機に乗るためだけなのに、ご飯も食べれるし買い物もできるし、最高の暇つぶしの場所である空港なんだけど。
空港から異次元旅行をする、不思議なSF小説。
「玉蜀黍の髪の女」で訪れた次元では、植物や動物と人間を配合させた生き物がうようよいる、超未来型都市のお話。もちろん、問題だらけ。外見は人間だけど、1%魚だったり、1%犬だったりするわけだから、子供を産んでみたら1%の魚が出てきて海でしか暮らせない子だったりするなんて、恐ろしい。
「アソヌの沈黙」に出てくるアソヌの人々は、年をとるにつれてことばを話さなくなる。私たちの次元にすむ人間は、しばしば、ただ聞いて欲しいがために、アソヌの次元を訪れる。
なかでも、「ヴェクシの怒り」は良かった。
口論、非難、罵り合い、つかみあい、怒りの爆発、不機嫌の発作、大立ち回り、確執、衝動的な復讐。ヴェクシの人は、いつもこれ。常に眉間にしわを寄せている。大切なひとが死んだとき、その感情は悲しみとしてではなく、怒りや非難としてあふれだす。それでも涙は出る。怒りにふるえながら。
「渡りをする人々」は、渡り鳥に似た、これまたとある次元に住む不思議な生き物。彼らの一年は地球の二四年に相当する。四季のそれぞれが地球の六年。生まれてから六年間、真夏日だったら萎えるな。
近所の人と夢を共有せざるを得ない「夜を通る道」。この次元にだけは行きたくない。
眠ることは文明化されたこの社会では不要なものであり、知能の高い人間に睡眠はふさわしくないとする「眠らない島」。眠らない子を実験で作り上げ、島に隔離する。恐ろしいけど、どこかで実際にやっていそうで怖い。
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別次元へ旅するよ!という気楽さ?で読みやすい長さの短編集
「風の十二方位」みたいに硬軟ある訳ではなく、とっつきやすく読みやすい。言語体系だとか、面白かった。通貨はどうしてるんだろうか。
表紙と挿絵が全然違ったのに、少し違和感をかんじたけども。
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原題のchanging planesというタイトルどおり、毎日の生活の谷間にあいたふっとした時間に、ちょっと別世界に移動するのにちょうど良い短編集かもしれない。だけどすごく面白いというわけでもない。
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SFの女王ル=グウィンによる短編集。
さまざまな異次元を旅行者の視点から描きます。
繰り広げられるのはIFの世界。
いろんなテイストに溢れているのが魅力的!
あなた好みの話も見つかるかもしれません。
ここからSF、はじめてみませんか?
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紀行文調SF。想像力に溢れた異世界コミュニティーの総体的描写、ネイティブな文化と先進文明との軋轢等が描かれている。遺伝子弄り系のちとえぐい話が読後の印象に残る。昨今の時勢柄、大変面白く読めた。
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飛行機(plain)と次元(plain)をひっかけて、飛行機の乗り継ぎ待ちの間に次元を乗りかえる旅行法が発見された……というちょっと強引な言葉遊び的な洒落から始まる本なのだけれど、その肝心の次元間旅行によってゆける異次元の人々と、その社会と歴史、生活と風土については、非常に深く考えを巡らせて描かれている。軽快で読みやすく、それでいて非常に読みごたえのある一冊。ル=グウィン女史の本には、しばしば少々小難しくてとっつきにくい場合もあるのだけれど、その中で本作は格別に読みやすかったように思う。
短編集の形式をとっていて、一本ごとに異なる次元のいっぷう変わった異次元人たちを追いかけている。鳥のような羽毛を持つ人々の中に稀に突然変異として生まれてくる、翼を持って空を飛ぶことのできる人々。言葉を持っているにも関わらず「話す」ということをほとんどしない人たち。遺伝子改良によって作られた「眠らない」人々のゆくすえ。直線的時系列的ではなく、放射状の複雑な構造を持つ言語をあやつる人々。「不死」に感染してしまった気の毒な人たちの姿……
それぞれの設定が設定に終わらず、彼らの暮らしと歴史、進行、風土と密接に絡まりあっている。人間というもの、生きるということについて、知らず考えさせられる。そうそう、わたしはこういうものが読みたくてSFが好きなんだよ! と読みながら何度も叫びたくなった。(余談になるけれど、ル=グウィン「西のはての年代記」シリーズを読んだときにもやはり、わたしはこういう異世界ファンタジーこそが読みたかったのだと強烈に感じたことを思いだした)
思弁的SF、異文化交流もの、センス・オブ・ワンダーを感じさせる作品、そういうSFが好きな方にはぜひとも強く勧めておきたい一冊。
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[ 内容 ]
翼人間、不死の人、眠らない子ども…不思議な場所の不思議な人たち、私たちと全く違っているようで似ている人々は謎めいているけれど、どこかなつかしい。
SF/ファンタジー界の女王が放つ深い思索とユーモアに満ちた新ガリバー旅行記。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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アーシュラ・K・ル=グウィン『なつかしく謎めいて』(河出書房新社、2005)
ル=グウィンらしいフワフワした読後感、ファンタジー要素入りSF
空港での乗り換えの待ち時間に退屈した主人公シータは、退屈な時間と悪質な食べ物に当てられて気を失い、目覚めると異次元へ。
再現条件を特定し、「シータ・ドゥリープ式次元間移動法」を確立。
(科学的根拠の理屈付けはなく、あくまでファンタジー要素)
以下、シータと友人たちが見聞きした異次元の旅行記となっている。
不死の人の国、眠らない人の島、翼がある人の国などなど。ガリバー旅行記を彷彿させる希望と悪趣味の世界。
両親が学者で、文化人類学のサラブレッドと称される人文系ソフトSF作家、
著者の皮肉もにじみます。
【本文より】
◯空港の本屋に本はない。あるのはベストセラーだけだ。
◯私はマハグルに滞在するときには、帝国図書館で大半の時間を過ごす。よその次元にきて(あるいはどこの場所ででも)図書館で過ごすなんて、退屈きわまりないと思う人も多いだろう。しかし私は、ボルヘス同様、天国とは図書館によく似た場所だろうと思う。
◯オーリチ思想家たちの言うことにも一理あるかもしれない。確かに、意識には高いコストがかかる。意識の代価は、私たちの人生の三分の一。目が見えず、耳が聞こえず、口が聞けず、無力で思考力のない状態 ー つまり、眠って過ごす時間だ。
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空港。
硬い椅子、いつ果てるともない待機、がさがさしたアナウンスの声、疲労。
著しく不快なその環境に囲まれることによって、異次元移動は可能になった…という
なかなかイカれた導入部から、別次元への旅が語られていきます。
※余談ですが、基本的に国内では短距離移動だし、
あんまり乗り換えないし、
食事等、それなりのサービスを享受できる日本人には出てこない発想かも
短編方式で、いくつもの次元の話が語られます。
とことん空想話なのだけれど、ル=グィンの空想話なので抜群に面白い。
えぐい話、淡々としている話、美しい話、多種多様な世界をのぞきこめる。