投稿元:
レビューを見る
「アフリカ」ということばからどんなことをイメージするか。ピュリツァー賞受賞の「ハゲワシと少女」から始まるエピソードが、イメージの持つ怖さというか、それ次第で全ての事実が曲解されてしまうことへの警鐘を鳴らします。日本国内ではなかなかというかほとんど知ることの出来ないアフリカを知ることができる貴重な本だと思います。
学術研究者が知識を入れて分析するのとは異なり、記者である藤原氏はありのままに感じたことやインタビューをした相手や偶然出会った人々との話をそのまま書き上げてくれているところが、かえって新鮮です。今までアフリカというと専門家が「研究」した内容が多い本でしたが、この本は現実を見せ付けてきます。
個人的な感想ですが、アフリカ人という大枠でこの地域を論じている限り日本人である私にとっては本当のあの大陸の真実は見えてこないだろうなとおもったことです。これに気づくことができただけでも十分この本を読んだ価値はあったと思える。
ルワンダの大虐殺、植民地時代からの政治的ヒエラルキー構造への理解、旧宗主国に対する一般民衆の思い、仕事に対する姿勢、お金を稼ぐことへの考え方、民族や国民性の微細な多様性、貧富の格差、日常生活の隣にある犯罪、先進国からの援助に対する考え方。などなど、読み進めているうちに、53もの国が密集する大陸を一からげにしてアフリカ人と呼んでしまっている私たちの理解度の貧しさを厳しく問い詰めてきます。
著者自身の一つ一つの経験が章ごとにまとめられているので短編小説を読むような感覚で、この大陸の端々で起きたできごとを比較的すらりと読むことができるのも良いと思います。
最後になりますが、本の最終章で語られるルワンダの大虐殺に関して、「殺し合い。それは風のようにやってくる。雪のようには来ない」と語ったフツ族であるガブリエル老の言葉はルワンダで起きたあの惨劇を真に理解することの難しさを象徴しているようにも思えます。風が何をたとえ、雪が何をたとえているのか、その問いの深さを思うのです。
それだけツチ族とフツ族の違いがどのように生まれるのかは判明していないし根拠さえあやふやであることが、大虐殺を想起すると恐ろしく感じられるのです。そんな事例一つにしろ、読者に考えさせられる文体が多くの読者にアフリカ大陸のことを考える機会を増やしてくれていると願っています。
投稿元:
レビューを見る
なかなか面白かった。
ただ、筆者が自身について書いているように「山場」みたいなところがない。淡々としている。
いろいろ考えさせられる一冊。
投稿元:
レビューを見る
日本人が知ることのない、南部アフリカのノンフィクションである。
この本を読むまで、いや、読んだ後もアフリカについて理解出来ない自分がいる。
それほどまでにアフリカは理解出来ない。差別そのものを理解出来ない。
人間同士が互いに憎みあう世界。
多数の民族の集まりそこで暮らす人々。何が幸せで何が不幸せか。
カメラマンの自殺。賞を取った後で。麻薬に溺れていたとも。そこまで異常な国。
子供はストレートに感情をだす。何もわからないのではなく何かを感じつつストレートに表現する。
日本人なのに南アフリカにいる子供。皮膚の色の違う人達と暮らす中、自然と差別してしまう。
絵はがきにされた少年はイギリス人を恨むことなくむしろ誇りにしている。
宗主国と植民地の関係。自分には到底理解出来ないがひとつだけ分かることがある。
それはみんな生きているということ。どのような環境、境遇であろうとも人々は働き、生きている。仕事を誇りにしている。自分の境遇が悪いとか不満をもらしてはいない。
むしろ誇りに思っている。見習わなければならない。
今の自分には辛いがこれが現実。受け入れなければならない。
前向きに生きていこう。それがこの本を読んだ自分の義務な気がする。
投稿元:
レビューを見る
人種差別。それが実際に行われているアフリカの地では、受け取り方が違うのかもしれない。また、争いの中の差別には外から見たときに、どう違うのかがわからない場合がある。
アフリカに住む人たちの深い言葉には考えさせられる部分がたくさんある。
投稿元:
レビューを見る
ハゲワシの前にいる飢えた子どもの写真は記憶にある。子供ながらに恐怖を感じた。
人種の差別をうける魂の痛み。南アフリカでは10秒に一人がレイプされている。
ツチとフツの違い?そりゃ、神様だけが知っている。
投稿元:
レビューを見る
最初のほうをちょっとだけ読んだ。
これはひどい。
扱われる題材が気になるだけに見方のひどさが腹立たしい。
たとえば「ハゲワシと少女」でピュリッツァー賞を受賞後に非難をあびて自殺したカメラマンのドラマチックな人生の、ドラマチックな消費のされかたに疑問を持って取材する・・・にしてはあまりにドラマを作りすぎてる。
自分の好きなドラマに読み替えているだけだ。
自殺したカメラマンの友人で自身も南アフリカのカメラマンである白人(アフリカーナー)の語りはまるっきりディアスポラ(著者の息子も同じような感覚を得るかもしれない)なのに、「白人」「黒人」で「アフリカ人」という軸でしか見ようとしない。
自分の息子のシーンは文学青年崩れのごとき文章も気色悪いけど、距離感がなお気持ち悪い。
自分はまるで傍観者みたいだ。「子供」がその環境に「おかれた」んじゃなくて、お前が連れまわしてるんだろうが。
自分探し系のオナニーが気色悪いのは、他人をネタに使うからだ。
「じゃーなりすと」ってこういう人多いよな。
投稿元:
レビューを見る
自分の持っているイメージと現実との齟齬、助けることと助けられること、色々考えさせられた。
淡々と書かれているけれど、著者の熱い気持ちが伝わってくる。
投稿元:
レビューを見る
良いと感じる文章を読むと、文章を書きたくなります。この本を読むと、私が出会ってきた人たちの話を、自分でも綴りたくなります。
「アフリカ」に住む人々が直面する危険・貧しさ・植民地支配・人生の節目・人種問題・外国人の目線——そういったものの等身大を、ひとに寄り添い、自身に葛藤しながら伝える作品。
印象的な文章を抜き書きしておきます。
「先進国の首脳会議などの会場を取り囲み、「貧困解消、貧富の格差の是正」を叫ぶ若者たちがいる、こうしたエネルギーを見ていると、一年でいいからアフリカに行って自分の暮らしを打ち立ててみたらいいと思う。一人のアフリカ人でもいい。自分が親しくなったたった一人でいい。貧しさから人を救い出す、人を向上させるというのがどれほどのことで、どれほど自分自身を傷つけることなのか、きっとわかるはずだ。……一般論を語るのはその後でいい。いや、経験してみれば、きっと、多くを語らなくなる。」
J.M.クッツェーもセットで読みたい。
投稿元:
レビューを見る
http://www.jwave.co.jp/original/worldaircurrent/lounge/back/051203/index.html
投稿元:
レビューを見る
アフリカ特派員だった新聞記者によるアフリカ・レポート。ちょっと、ナイーブなところが好感がもてるが、特派員っていっても、お客さんであることがよくわかる本でもある。
投稿元:
レビューを見る
アフリカーナ。初めて知る。◆アフリカだから貧困とかいう脊髄反射とか、真の貧困対策とは、考えさせられる。◆◆子供は自分より汚いものを嫌うとか。
投稿元:
レビューを見る
ハゲタカと少女の写真をとったカメラマンのノンフィクションだと思ったら全然違った。
「お前は自分のことしか考えてない」と
ニャウォ氏とガブリエル老、ダ・シルベラ老の話に惹かれた。
ダ・シルベラ老と商魂逞しいオランド氏の顔つきの違いがいいな。