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紙の本

5篇の幻想怪奇譚。幻想怪奇というほどにおどろおどろしく沼の奥底っぽくなく、チープでパルプなノリもあり、しかしそれも行き過ぎることなく。

2006/10/20 18:45

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 380ページほどの手ごろな厚さの文庫本に、「蛇の女神」「眠れる人の島」「神々の黄昏」「邪眼の家」「生命の湖」という5作品が所収され、最後の作品だけやや長く、全体の5分の2ほどを占める。中短篇集ということになる。
 最初の2篇「蛇の女神」「眠れる人の島」を読んだところで、幻想怪奇世界からの戻って来方が思いのほか癖のないものであると感じた。「女神」や「眠れる人」の描き方はとても良い感じである。また、最近日本の海外小説市場で1つの潮流を成している「奇想」、それへの期待にきちんと応えてくれ、夢幻の世界で十分に遊んで帰ってこれる内容ではあるのだが、まとまりとしてはこういう線なのかと思わないでもなかった。落胆というわけではない。幻想小説としてありがちな着地に既知感があり、それはそれで読後の安定につながるため、消化不良を起こさずとも良いので悪くないのだ。ただ、「あっけ!」という飛んだところがないのが一抹の物足りなさとして残った。
 しかし…。残り3篇で尻上がりに面白くなっていく作品集であった。飛び抜けて行く部分やら、漠としてつかみようのない部分やらも出てきてくれ、ああだこうだと勝手に夢想を重ねて行きたい読者としては、途中からなかなか素敵なターボのかかり方となった。
 「邪眼の家」——これは、いまだに読み通せていないテッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫)中の問題作(結末をいかに解釈すべきかという意味において)「理解」の戦闘シーンを思い出させる。ということは、テッド・チャンが影響を受けたのかもしれないとも考えられる。
 身も蓋もないたとえをすると「一騎打ち」の話に展開していくのだが、それがいかにもアメリカン・クラシック風だ。つまり悪玉に善玉が正面から戦いを挑んで行く西部劇の1シーンのようであり、はたまた聖職者が悪魔に戦いを挑んで行くホラー映画の1シーンのようであり…。だが、そこに至るまでの「邪眼」という奇想、これは現実に起こることを考えるとぞくっとするホラーの要素である。実際に私鉄の車内でそういう種類の恐い人に出くわしたことがある。個人的経験を根拠にしても紹介のための足しにはならないのでやめておくが、そういう要素がコミュニティを崩壊させていく様子は、スティーブン・キングあたりへも通じていく気がしないでもない。ハミルトンを通り過ぎてさかのぼって行くならば、ヘンリー・ジェイムズの幽霊譚の曖昧さあたりへつながって行くと考えてもおかしくない。「邪眼」とは結局何であったのだろうか。
 「生命の湖」も、同じように結末がいつまでも後を引く。こちらは小説としては粋な結びが用意されているのだ。それこそ西部劇のラストシーンの如くに…。しかし、生命の湖、それがある場所は一体どういう空間だったのかを考えると、単なる空想世界に設けられた秘境だったのではないのではないかという問いも湧いてくる。いや、小説的現実なのであるから空想には違いないのだが、これがどういう場所として作家の頭に描かれていたのかが気になってくる。
 SF作家として知られるハミルトンの幻想怪奇小説家としての側面を紹介する、しかも『フェッセンデンの宇宙』(河出書房新社)で、傾向の重複や長さの面から所収を見送らざるを得なかった秀作中短篇を集めた企画だということである。ハミルトンの本来の作家性を知らぬ存ぜぬの身としては、大人向けファンタジーとして上等な見つけ物をした気分。

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2010/08/20 12:51

投稿元:ブクログ

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