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上杉謙信は領土的野心を持たない義将だと言われてきましたが、
本書を読むと、新たな実像に迫れて面白いです。
度重なる関東への出兵には、冬の出稼ぎという実利があり、国人
達を束ねるためには上洛や関東管領になることにより家格の上昇を
図る必要がありました。
また、川中島の合戦に関しては、越後防衛という側面もあります。
一度本気で出家することを考えているので、地位に汲々としない人
であることはわかりますが、本書を読んで人間らしさを感じました。
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本書は謙信が生きた時代の史料のみを使って、本物の謙信像を提示した本であるという。 といってもガクトの本ではない。
上杉謙信と言うと領土的野心を持たない義将というイメージが強いが、実像をみると、その行動にはそれなりの理由があることがわかる。
例えば、たびたび関東に出兵しているが、そこには冬場の「出稼ぎ」という側面がある。
新潟県というと米どころのイメージがあるが、当時の越後の国は、灌漑が不十分であり、耕地は限られていた。
また、川中島の合戦には、越後の国の防衛戦という側面があった。
たびたび上洛したり関東管領職を継いでいるが、そこには領主連合の頭として国をまとめるため府中長尾家の家格の上昇を図るという側面があった。(本書ではこの点が丁寧に書かれており目からウロコでした。)
上杉謙信はそんなに好きではなかったのだが、本書を読むと、謙信の苦労が偲べて親しみが湧きました。
戦国野郎にはお勧めの本です。
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現代に伝わる上杉謙信伝説に依らず、その当時の史料を元にして上杉謙信の姿を明らかにしている書籍。上杉謙信が誕生する前から「上杉謙信」となるまでの、越後や実家の長尾家の事情や、今や伝説化している武田信玄との川中島合戦の真の姿、関東に出兵するに至った理由などが紹介されている。
まず、実家の長尾家は越後で一番の勢力、覇権を持っていた家では無かったこと、上杉謙信の代ですら、越後の各領主に書状を送らなければ兵を起こすことすら困難であったことが驚きだった。特に阿賀野川以北の勢力「揚北衆」が台頭しており、彼らには格別の取り計らいをしていた。
また、長尾家と一口に言っても親戚が様々におり、兄弟同士ですら争いがあったことも衝撃だった。
川中島合戦の話題は注目すべきものだと思う。当時の史料を照らし合わせながら、地理関係から本当の合戦の姿を露わにしていく。そうして、どうしてこんにち語られるような上杉謙信と武田信玄のドラマチックな一騎討ちが描かれてしまったのかが解明されていった。その様は実に興味深く、また楽しい。上杉謙信の活躍を抜きにしても、伝説がどのように伝説となっていくのかが分かる。
それらを説明しながら、後継者である景勝にどのように上杉家が繋がっていくのかが、段々理解が深まっていった。
伝説抜きにしても、上杉謙信がとても興味深い人物だということがはっきり分かる素晴らしい書籍だと思う。