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紙の本
リアルだったり、シュールだったり
2015/06/07 18:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:一匹狼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとなーくロシア文学が好きで読んでいるのですが、この本も面白かったです。でもその面白さを説明するのが難しくて辛いところ。
外套は悲しい話でした。アカーキイ・アカーキエヴィッチの人生は悲しく報われないものでしたが、ゴーゴリの文章にはどこか優しい視線が感じられ、不思議と温かみがあるように思えます。
鼻は、芥川龍之介も不思議な鼻の小説を書いていたなーと、鼻には万国共通の想像力を掻き立てる何かがあるのかもと思いを馳せながら読みました。かなり想像力を使って読む小説で、久々にのめり込むようにして楽しめました。
紙の本
ペテルブルクの街で、外套と鼻を求めて奔走する下級役人の悲喜劇
2004/05/15 03:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ゴーゴリの『外套』を初めて読んだのは小学生の頃、確か小学館の「少年少女世界の名作文学」シリーズの中でだったろうか。アカーキイ・アカーキエウィッチという冴えない人物が、ようやく手に入れた新しい外套を必死に探す姿と、闇の中に取り残されたようなラストが印象的だったような、そんな記憶が残っている。
今回久しぶりに読んでみて、よくもこれだけ冴えない登場人物たちしかいないものだと、妙なところに感心してしまった。かっこいい、あるいはこうありたいものだと思わせてくれる人間が、ひとりとして小説の中に出てこない。主人公のアカーキイ・アカーキエウィッチを筆頭に、すべての人間が灰色めいた陰気な印象を帯びている。寒さ厳しいペテルブルクの街がまた、どんよりした灰色の背景として塗り込められている。
そんな中で唯一、キラキラと光り輝いていたのが、アカーキイ・アカーキエウィッチの新調した外套だった。もちろんこれは、アカーキイ・アカーキエウィッチにとって光り輝いていたということであって、他人は彼の外套のことなどは、すぐに関心を失ってしまう訳なのだけれど。
警察官がどうしようもなく無能で役立たずだったというのも印象に残る。作者によって徹底的に虚仮にされているとしか思えない阿呆ぶり。当時のロシアの官憲から睨まれなかったものかね>ゴーゴリはと、ふと気になったくらい。「おまえら、フロスト警部の爪の垢でも煎じて飲め。仕事しろ。」と言いたくなった。
もうひとつの作品の「鼻」。そのコミカルで無鉄砲なおかしさといったら、理屈抜きに愉快だった。
八等官コワリョーフの鼻が、ある日突然、彼の顔から失踪する。そしてあろうことか、うろんな紳士の「鼻氏」として、鼻のなくなったコワリョーフの前に現れて、彼を鼻にも引っかけずに右往左往するというお話。実に奇妙奇天烈、人を食ったストーリーである。
この珍無類の話に初めて触れたのは、本作品を許にして台本が書かれたショスタコーヴィチのオペラだった。最初に聴いた時は、あまりのおかしさに思わずくすくす笑ってしまった。ショスタコーヴィチの歌劇「鼻」。面白いよー。おすすめ。
訳は、平井肇。戦前の翻訳だが、今読んでもさほど古さを感じない。読みやすい訳文だと思う。ただ、これは原文のせいなのか改行が少なく、一頁に文字がびっしり埋まっている。文字そのものも小さいなという印象。ちなみに私が読んだのは、2002年の第73刷発行版。岩波文庫を読み慣れた方であれば、たいして気にならないのだろうけれど、私は読み始めた最初、やや閉口した。たまたま書棚に、最近購入した幸田露伴『幻談・観画談』(岩波文庫 2003年7月 第15刷)があったので覗いてみたら、こちらは文字も大きく、行間も広くとってある。頁数は増えても、このくらいゆったりと活字を組んでもらえると読みやすいのにと思った。
紙の本
不思議なお話
2023/09/22 21:05
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投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
「外套」は一生懸命頑張ってコートを新調した役人のお話。
「鼻」は元の持ち主から離れて1人(?)で行動する鼻のお話。
父に送ったら、「よく分からないが面白いな」と申しておりました。読後母に内容を語ったらしいです。人に話したくなる短篇だと思います。
翻訳も素晴らしくて、なんとも言えないユーモアがあります。 改訳などせず、ずっとこのまま残して頂きたく思います。
紙の本
一個の零落者の息吹き
2004/01/15 15:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:j_taiyaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
『外套』の主人公のアカーキイ・アカーキエウィッチは九等官で、これはつまり取るに足りない木っ端役人に分類される役職だ。さらに彼は滑稽で愚かしく痛々しい、仕事以外になんの楽しみもない、哀愁漂う人柄である。が、同時に、つまらないその仕事に健気にひたむきに打ち込む、憎めない愛すべきキャラクターでもある。
こういう人物設定や、その人物が生身の身体をもって生活する、一個の生ける実存として鮮やかに描かれる様に、あらゆる人間に対するゴーゴリの暖かい眼差しが感じられる。そのために、まったく滑稽な主人公でひどく哀れな物語だが冷笑的な気分になぞ全くならず、また、独特の軽妙さとユーモアがあって、暗い感傷的な気分にもならない。さらに後半の復讐劇は現実離れで奇妙奇天烈ではあるが愉快であり、なんとも不思議な読後感である。
まあ要するに、アカーキイ・アカーキエウィッチと同じように、見事なまでに起伏なき平坦な生活を淡々と送る凡人、いや落伍者の私自身も、やっぱりこの世に位置を占めて一個の実存として私なりに生きているわけだ、それもまあ悪いことではあるまい?と感じさせてもらった次第だ。