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紙の本

原題がただの「ル・プチ・プランス」で、「星の」がどこにもない。

2006/08/09 16:07

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る

これは、サン=テグジュペリの「星の王子さま」の訳者としてつとに有名な内藤濯の生涯を描いたものです。著者は濯氏の子息内藤初穂氏。全430㌻。
ところで、話題をかえますが、宮田昇著「戦後『翻訳』風雲録」(本の雑誌社)は、戦後現代詩人と呼ばれる鮎川信夫・田村隆一などが登場してはじまっておりました。その本の書き出しはこうです。
「小説の翻訳のほとんどが、研究者や大学教員の『内職』であった戦前と違い、戦後、プロの翻訳者の手に移ったのは、翻訳の対象がフランス物から、アメリカ物に次第に移っていったせいもある」
その戦前のフランス物の翻訳をしていた大学教員が内藤濯氏でした。
本文の第2章はこうはじまります。
「その文学的生涯を『星の王子さま』の訳業へと収斂させた父は、明治16(1883)年7月7日、医師内藤泰吉の四男として熊本城下に生れた。・・濯(あろう)という名は、漢籍好みの祖父泰吉が『滄浪(そうろう)の、水澄まば、以て我がエイ(冠のひも)を濯(あら)うべし、滄浪の水濁らば、以て我が足を濯うべし』という孟子の一句にちなんだものという。」
こうして「柳川の伝習館中学で一緒だった北原隆吉(白秋)」がいたり、第一高等学校でのさまざまな顔ぶれを紹介しながら、内藤濯の生涯がたどられております。私には岸田国士や伊藤整などの縁が印象に残ります。
フランス留学での家族への配慮と、一日でも早く帰国したいと思っていたところが関東大震災の報を受けてのフランスに居た日本人の様子やらが大変に印象深く、貴重なエピソードを読むことができます。
「フランスに留学して、初めてコメディ・フランセーズを観た瞬間、『あ、いままで訳したのは何だったのか』と思ったといっていました」(p378)とあります。
それに関してはp253に田辺貞之助氏の解説が引用してあります。
「われわれ蛮カラどもは、大震災の惨状がいまだなまなましいなかで、いきなりフランス王朝時代の絢爛ぶりを流麗な訳で眼前に繰りひろげられたので、唖然としてしまった。だが、講義における先生の熱意、コメディー・フランセーズの舞台装置や背景、あるいは観客の雰囲気の説明、男優女優のせりふの実況放送的描写!先生もあんなに情熱を傾けて講義をなさったことは、後にも先にもなかったのではあるまいか。・・私には先生の『ブリタニキュス』はまさにフランス文学へのまぶしいばかりの開眼であった」
そして田辺氏の同級生に、小林秀雄・波多野完治などがいて、 学生の大半が『ブリタニキュス』の初めの数行をそらんじてしまうほどだったとあります。
そうそう、
「星の王子さま」に触れなければ片手落ちになりますね。第18章は翻訳作法ということで鼎談が、そのままに載せられております。
「父は『星の王子さま』を『声の文学』といっていました。」
「まず父が一節をフランス語で読み、それを日本語にしたのをかみさん(初穂氏の奥さん)が書きとり、読みあげる。・・かみさんが一節ずつ読み終わると、父はもう一度フランス語の原文を読んで、気に入らないところに赤を入れさせる。かみさんを帰したあとも推敲をかさねた。あのころは書痙がすすんでいたにもかかわらず、次に行ったときには、ふるえる字で真っ赤になっていたそうです。それをまた、かみさんが筆記しなおして、ふたたび読んでと・・・。」(P379)
「父は生前つねに『翻訳とは原文のリズムを移す日本文学である』といっていまして」
「(翻訳は)子ども向きというよりも、細部にこだわらない自由さがある」
星の王子さまを期待して読むと、軽く肩すかしをくらいます(笑)。
けれども、それにも増してさまざまな人物が登場する豊饒な人生を読める喜び。

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