紙の本
中高生向けの一冊。藤原正彦『国家の品格』に共感した人にも薦めます。
2006/06/11 20:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
精神史を中心に、これまで日本に蓄積されて来た日本の心とその心が育まれてきた背景をうまくまとめてある。「日本の心」と言うと文化史のように思う人もいるかもしれないが、美術や文学ではなく、文明と社会のありかたに軸をおいており、各時代の支配形態や神観念の図はビジュアルで分かりやすい。
著者は究極的には人間は善であるという性善説に立っているようだが、近代科学には大いに疑問を感じているようだ。それは『科学者たちは無意識のうちに、自分が生きる社会の人びとにとって都合のよい、受け入れやすい理論をつくり、それを「科学」と言っていることになる。』(p.103)のような発言によく表れている。性善説に全面的には賛同しかねるが、現代において科学者もまた結果責任を負うべきという意見には賛成である。
『原爆を落とした責任は、それを命じた政治家が負うべきであろうか、原爆をつくった科学者が負うべきであろうか。筆者は両方が悪いと思う。しかし、政治家が「あれだけの惨禍を起こすとは知らなかった」と言い、科学者が「あんな恐ろしいものが本当に使われると思わなかった」と言ってしまうと、責任をとる者がいなくなる。』(p.126)は、『NHKアインシュタイン・ロマン 6』でミヒャエル・エンデが述べていることと重なる。
第五章「世界地図の中の日本」から、第七章の「世界史の中の日本」は、他の本ではあまりまとめて語られていないので、面白く読めた。そしてこれらの章と続く終章が著者の一番伝えたことだったのだろうなと感じられた。そして、その主張は藤原正彦の『この国のけじめ』にも似ていると思った。
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単に時間の経過を追うだけの歴史書ではなく、地理、思想、そして科学の発展段階を通して分析しているところが面白い。それを筆者は歴史哲学と呼ぶ。また、精霊崇拝→経験科学→近代科学と発展してきたが、「量子論」が出現してきたあたりから、その手法に疑問を感じる人が増えてきたのではないか、と指摘する。人類の普通の常識でわからないものを無理矢理信じなければならないというのはある意味、宗教と同じ立場になりつつあるのではないか。新たな科学思想が望まれている。2006.05.14-05.23
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わかりやすい本なんだけど、第七章なんてたんなる世界史だったようなきがした。
まあ、山川の教科書を一度読んだ人にはいいかもしれまへん。
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日本の文明と、その核になる科学技術は、精霊崇拝→経験科学→近代科学と
いう道すじを経て、現代へとつながってきた。それはまた、「世界のなかの日本」
という視点と切り離せない。「文明の段階」を軸に大きな流れをとらえる、日本史
学びなおしに最適の一冊。
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「他者から新たな文明・文化を吸収し、自己流に取り入れて発展させる」という視点で歴史を見る。
学生時代に歴史が恐ろしく駄目だったが、こういう視点があれば面白かったかもしれない。
いや、どっちにしても苦手は苦手か。。
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さらっと日本史を流して読めます。
個人的には、飛鳥時代や奈良時代の階級系の話、国司郡司とか、守護地頭とか、ってのが学生の時から得意でなかったので、すっ飛ばしてしまった。
日本史を思い出すのには良いと思いますよ。
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日本史で時代背景や大きな流れをつかむための核となるポイントをまとめたもの。本書で取り上げられている図式や構造を知っておくと、大和王権や寄進地系荘園、守護大名などの用語の意味や背景がクリアに分かってくるので良い。
また、世界史の中から見た日本の特性なども概説されているので、日本史の基本的な理解のためにまず詠んでおくと良い一冊。
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[ 内容 ]
歴史を学ぶ意味。
それは、過去の文明のありかたを知り、よりよき未来をつくる智恵を得ることにある。
日本の文明と、その核になる科学技術は、精霊崇拝→経験科学→近代科学という道すじを経て、現代へとつながってきた。
それはまた、「世界のなかの日本」という視点と切り離せない。
「文明の段階」を軸に大きな流れをとらえる、日本史学びなおしに最適の一冊。
[ 目次 ]
序章 歴史哲学によって文明の形を知る
第1章 原始・古代の日本
第2章 中世の日本
第3章 近世の日本
第4章 近代・現代の日本
第5章 世界地図のなかの日本
第6章 東アジア世界のなかの日本
第7章 世界史のなかの日本
終章 歴史哲学の今後の役割
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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名前からも分かる通り、日本史の簡単な概説書。他の日本史の概説書より、日本における神道(神社)の役割や神と人との関係に重きを置いているように思った。
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最近,歴史モノを比較的多く読むのですが,あまりわからなかったりするので一応概要をざっと勉強しようかと。
これを読んで,劇的になにか歴史の新事実が解ったとか,すごい感銘を受けた!とかいうのはなかったんですが,学校の歴史って本当に流れをかするようなことしか学習しないなあと改めて思いましたw
(もしくは私が不真面目な学生だったんでしょうか?w)
学生時代(特に高校生のとき,大学受験の勉強のため)に読んでおけばよかった・・・とちょっと後悔しました笑。
歴史は好きなのに,どうしても暗記が苦手で,なかなか点数が取れないこともあったんですが・・・・こういう流れを理解できる本に出会っていたらまた違っていたかもしれません。
ちょくちょく,宗教とかも出てくるんですが,確かに宗教ってその文化を読み解くうえで大切なキーワードですよね。
あまり学生時代とか,重要視してこなかったのが悔やまれますw
個人的には,近代史をもうちょっと詳しく書いてくれたら嬉しかったんですが・・・・まあ知っているからいいかw
感心したのは,日本は植民地化されなかったという話。
確かに開国を迫られ,幕政が崩壊し,国内では箱館戦争や西南戦争など混乱が起きていたにも関わらず,日本は植民地化されませんでした。欧米諸国から見たら,アジアの未開な文明を持った一国だったはずなのに・・・・。
さすが日本人だなあ,と思うのは,「親バカ」ならぬ「日本バカ」だからでしょうか。笑
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日本史に興味をもって、あれこれと本を読んではいても、なかなか頭に入らないところはあるもの。
著者は歴史哲学という観点から歴史をとらえており、通説とは違った斬新な見方で史上の事柄を紹介している点が魅力的です。
例えば、1333年に後醍醐天皇が建武の新政を起こしたものの、天皇が並外れたぜいたくをした上に公家を優遇したため、武士の反感が高まり天皇に反旗を翻して、室町幕府の樹立につながった、というエピソードなど、歴史が流れていった根拠を、理由と共に説明しているために、のみこみやすいのです。
西南戦争では、西郷軍には命を捨てる覚悟の武士たちが集まったものの、わけもわからず上官命令に従って戦場に生かされた政府軍の方が数で勝ったために勝利したという不条理など。
必ずしも人々の思うように歴史は動いてこないということを感じます。
倒幕派と佐幕派が争った混乱期に、イギリスやフランスに植民地化されずにすんだ理由は、日本の教育水準が高かったためだということも知りました。
日本では、寺子屋の教育により書物を読み考えた上で「自分たちは天皇の国の一因だ」という信念を持っていたため、教育面でも宗教面でも圧倒することができなかったからだそうです。
また、ノーベル賞受賞者数からもわかるように、日本でよい科学者がなかなか生まれない理由として、日本の財界が目先の金儲けを重んじ、長い目で見た化学、技術の育成を怠ったことからくるものだと論じており、そういう理由だったのかと納得がいきました。
この本一冊で日本史すべてを理解することはできませんが、これまでとは違うとっかかりをつかむことができる、ユニークなアプローチがなされた内容となっています。
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科学技術って生活を豊かにするために進歩してきたんだなあって改めて思う。とするならば、今の日本は生活が十分豊かになっていくにつれ、進歩のスピードは鈍化することは明らか。技術屋として目を向けるべきはまだまだ不便な暮らしをしている田舎の人とか、途上国の人たちとか?かな。
歴史を振り返ると、自分ってなんてちっぽけなんだって思う。
そして無力。
驚いたのは、第二次世界大戦の人的被害。日本197万人。ソ連1800万人。
この数字って本当に不可解だと思う。僕の今までの認識では総動員がかかるってことは日本の16~50くらいまでの男はその時ほぼ全員戦争に関わっていて(亡くなったか日本に戻れない状況とか)、プラス本土への攻撃で亡くなった方がいて、ってことは日本人口の1/3くらいはダメージを受けたって思っていた。でも敗戦国よりも連合国の死亡者数が圧倒的に多いなんて。
あとは、4大文明は乾燥地で生まれたってこととか、西側は一神教でアルファベットとかの表音文字を扱い、東側は多神教で漢字とかの表意文字を扱うってこととか。この辺はなるほど勉強になりました。
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図解が多いのがわかりやすそうだったので読んでみたもの。日本史の流れは前半の100ページくらいでしか語られないが、社会の支配体制の移り変わりがまとめられている。事件や戦いを中心とした記述より歴史の流れがわかりやすい。
北九州西部では、古墳が広まったのは4世紀初めであることから、卑弥呼の時代の2世紀末から3世紀半ばには大和政権とは別の政権があったと推測される。
庶民は弥生時代以来、100〜200人の血縁者からなる集落で農地を経営していた。集落には郡司(地方豪族)のまつる神社の神がまつられ、国司・郡司から供え物が分け与えられるなどの形で共同体を構成していた。奈良時代の頃から進んだ農業技術が地方に広がり、10世紀頃から有力な者が家を組織するようになって、血縁集団の集落が崩壊すると、独立して農業経営ができない家をまとめて指導する家長が現れて武士となった。武士たちは、中央の文化を得るために貴族や社寺と結びつき、土地を荘園として登録して(寄進地系荘園)、貴族などがまつる神の分社がおかれた。村落の支配が弱まった国司は、国衙軍などの騎馬軍隊を設けて圧力をかけたが、地方の小領主がそれに対抗して中世の姿の武士が現れた。同時期に、桓武平氏、清和源氏など、中央での出世をあきらめた中・下流の貴族が、国司や地方の武士と結びついて地方に融けこんでいき、源平合戦に至る。
鎌倉幕府は国ごとに守護をおき、承久の乱に勝利すると御家人の支配が強くなった。室町幕府は国ごとの守護大名の連合政権のようなもので、地方に本拠をおく国人と呼ばれる武士たちが勢力を拡大し、後の戦国大名となった例もあった。
信長は荘園支配を否定し、座による公家・社寺の商工民支配を禁じて楽市楽座を行った。秀吉は、領国の土地・民衆に対する支配を認めさせることによって大名の権力を認めた。
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歴史学者の役割
文明の形を知る。
いろいろな分野で「あるべき未来」を正確に知っている者が、よりよい仕事ができると思われる。
文明が社会のありかたを決める。
時代によって物を購入する方法は変わってくる。
科学技術と科学思想
「誰でも共有できる、科学的思考から作られた技術」を指す。
一部分しか読めていないが、日本史とは暗記して覚えるのではなく、時代の流れをつかみながら読むことがとても大事だとわかった。