投稿元:
レビューを見る
アメリカについ最近まで存在した「異なる人種間の結婚を禁止する法律」をめぐり、アメリカの人種問題の歴史をみていく。世界史リブレットなのに妙にドラマチックで読み終えたときちょっと感動した。
投稿元:
レビューを見る
異人種混交禁止法が定められていた。それらは戦後も続いていた州もある。
奴隷制という文明化の制度から引き離された黒人には生来の野蛮で共謀であると白人の主義が南部には浸透していた。
アメリカには黒人以外にもインディアンたちも差別されていた。
黒人たちの歴史は悲惨な歴史だから、オバマが大統領になったのは改めて凄いことなのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
自分用キーワード
プランテーション シェアクロッパー 年季契約奉公人 ベイコンの反乱 チェロキー族の強制退去 黒人取締法 マディソン・グラント(白人至上主義者、ヒトラーの人種政策にも影響を与えた) ジャック・ジョンソン(ボクサー) ジム・クロウ ラヴィング判決 アラバマ州の黒人差別
投稿元:
レビューを見る
文章が論理的で、主語を疎かにしないしっかりとしたものなので、読みやすくそれだけで高得点。
いやー、それにしても人種差別の根深いこと!
2000年まで異人種間の婚姻禁止法がアメリカにあったんだねえ。しかも州民投票のとき、40%が廃止に反対したらしい。いやびっくり。
投稿元:
レビューを見る
“ 人種の問題にふれることなく、アメリカの歴史を語ることができるだろうか。”(本書1頁より引用)との書き出しから始まる通り、アメリカ合衆国(合衆国に限らず南北アメリカ諸国は例外なくそうなのだが、とりわけ米国はその度合いが強い)の歴史は、憲法にせよ南北戦争にせよ公民権運動にせよ、人種の問題を避けて記述することは恐らく不可能であろう。
本書は2006年の刊行時点で一般的になりつつあった、90年代のタイガー・ウッズの自己認識を例に、混血を礼賛する(著者は触れていないが、これ自体は1940年代のブラジルのナショナリズム構築のための国策を50年遅れでなぞった現象である)風潮の陰に、アメリカ合衆国には数百年に渡って混血を否定する人種主義の歴史があったことを描いている。
本書で対象とされている期間は、植民地時代の1662年のヴァージニアでの異人種間結婚により奴隷の母が生んだ子は奴隷になることを定めた法律の制定から、公民権運動最中の1967年に合州国最高裁がヴァージニアの法律を違憲だと判断するまでのおよそ300年間である。詳細については本書を通読いただきたいが、私が目を惹かれたのは、むしろ著者の白人観であった。
著者は1865年の南北戦争終結後、1869年のテネシー州をはじめに南部に民主党が復権し、北部から戦勝者として乗り込んできた共和党が合法化した異人種間結婚を再び非合法化していく過程で起きた、1877年のアラバマ州の「グリーン事件」についてのマニング判事の判決文を題材にこう述べている。
“……判事がここではからずも明らかにしたことは、解放された黒人と貧しい白人とが親密な関係から合体・連帯して裕福な白人に脅威を与えることになるのではないかという恐怖感であった。婚姻という「私的な結合」を非合法化することで、黒人と白人貧困層との「社会的結合」を阻止する目的が、異人種混交禁止制度根底にあったといえるだろう。
これと関連して、現実の混交を阻止すること以外に異人種婚禁止法がもった重要な機能についても、ふれておかねばならない。南北戦争後の南部には、地位や階層、あるいは宗教や文化の点で、多様な白人が存在した。これに加えて、奴隷制時代から、プランターによる奴隷女性への肉体関係の強要などによって、相当な数の混血者とその子孫が南部社会に存在していた。このような状況において、「白人優越」の信条を打ち立てて黒人を排除する隔離制度の確立を模索する人びとは、一枚岩の白人社会という共同体の幻想を生み出す基礎として、「純粋な白人の血」の存在を社会に認知させる必要があった。異人種婚禁止法は、混交から守られねばならない「純粋な白人の血」が現実に存在するかのようにみせかける装置にほかならなかった。”(本書44-45頁より引用)
こうして南北戦争終結後にも「純粋な白人」を成立させるために、むしろ強化された異人種間結婚禁止法令は合衆国諸州に広まり、”白人から非白人への財産の相続をはばむ役割もはたした”(本書54頁より引用)。また、その法律を履行するための法制外の装置として、黒人に対するリンチが発達した(61-62頁)。といっても、勿論白人と黒人の夫婦や、その子供は存在するので、そうした人々が地道に訴訟を重ね、ついに1967年の異人種間結婚禁止措置に対する違憲を宣言した「ラヴィング判決」が下されたとのことである。本書では触れられていないが、このラヴィング判決を得るために尽力した弁護士のコーエン氏は、名前からしてユダヤ人であろう。自らもキリスト教社会の反ユダヤ主義に苦しんでいたユダヤ人の弁護士をはじめ、人種隔離社会を変えるために尽力した人々の在り方に敬意を表すると共に、本書から次の部分の引用でこの書評を締めたい。
“ 法廷での数多の争いのなかで、異人種混交禁止の体制に挑戦しつづけた異人種カップルや混血者たちの姿が浮かび上がる。禁止法が効力を失いかけた南北戦争直後の共和党再建期の短い間隙をぬって、奴隷制時代から夫婦であったことを主張した異人種カップル、白人である夫や父親の財産の相続を求めて、結婚の正当性を主張する黒人の妻や、正規の嫡出子であることを主張する混血児たち。本書では取り上げることができなかったが、財産の相続権を主張するために、法律が定める人種規定の曖昧さを逆手にとって、自分が黒人でないことをさまざまな手段で証明しようとした人びとも数多くいた。彼らは、黒人の血が四分の一や八分の一未満であることを示すために、数十年も前に亡くなった祖父母や曾祖父母の肌の色や髪の毛の縮れ具合について、記憶も定かでなくなった年老いた知人や親戚に法廷で証言させた。そのことは、人種を確定させるという行為が、じつは普遍的な根拠のない、かぎりなく虚妄に近い愚行であることを、暗黙のうちに社会に伝えてきた。”(本書86-87頁より引用)
投稿元:
レビューを見る
入植期から公民権運動までのアメリカにおける人種について取り上げており、特に「異人種間の婚姻(の禁止を巡る制度史)」という観点からアメリカの人種差別史を描いた点。
山川の世界史リブレットだが、読み始めると止まらなくなり、端的に言って、面白かった。
本書では「異人種婚禁止法」という言葉が度々登場する。
この法制度の制定から、法曹での解釈、撤廃を巡る一連の出来事を、判例を中心に描いたのが中盤以降の大筋となる。
その中で、異人種間の結婚等を否定することは自由を定めた憲法に違反するのかについて、州裁判所の判決を連邦裁判所が覆したり、時の政権や社会情勢によっては覆さなかったりと、アメリカという国の制度についても理解を深める事ができた。
また、リンカーン共和党政権下では南北戦争終結もあって束の間の公平が見えたものの、民主党が勢力を盛り返すと途端に効力を強めていくという経緯は思わず唸る。
1つの出来事から、一本道で人種差別制度の撤廃がなし得たのではなく、何度も対立と訴えを通して、紆余曲折を経た上での実現だという事が、わずか100ページ未満の本書から伝わってくる。
自身としてはこれまで公民権運動、白人ナショナリズム、移民史、という3つの観点からアメリカの人種史を学んできたが、また新しい視座を得る事ができた。
一方で、新たな関心の芽生も。
本書の主題は上述の通り、異人種間の婚姻について如何にして法的な保証を得るに至ったか、だが、読後には同様に「同性愛者」の婚姻制度が、この人種間の婚姻をめぐる反省の歴史を踏まえた上でどのように議論され、あるいは依然として乗り越えられない課題を生んでいるのか、について知りたくなった。
投稿元:
レビューを見る
短いながらも内容の濃い良書でした♪南部アメリカ人の人種差別に対してただただビックリしましたが、そういう負の歴史を知っておく事は非常に重要だと思います☆
この本を読んで思いましたが、今の自分にとって当たり前の事も、100年後の人類にとっては当たり前では無くとっても野蛮な事なのかもしれません。とにかく常に相手の立場になって物事を考えないとダメだなと考えさせられる1冊でした。